その運び屋《ポーター》万能だった。

Sinomori

第1話 運び屋はこうやって捨てられてた

始まりはこんな言葉だった。


「貴方はもう要らない、パーティーから去って」


彼女の眼は酷く冷たく、僕を見ていなかった。

 硝子玉の様でいて、『彼』だけを映していた。


僕は周りを見渡す、かつての仲間達は当然な顔を複雑な顔、悲痛な顔。


目の前の彼女輝く聖剣シンシアはパーティーリーダーでありメインアタッカーの聖光使いだ。


右斜めの窓際で僕を嫌悪した眼差しで見ている、魔導ダンタリオンはパーティーの火力兼知恵者の魔道士。


更に右を見るとテーブルで料理を食べ無関心を貫く二人、不動の壁又は《ローズピアサー》のリョウ•タチバリは優雅に料理を食し、もう片方の大男粉砕ガチネコラは丁寧にカトラリーを使い、食す。


そして左を見ると、申し訳なさそうに顔を伏せる。 《神聖聖母》クレーリア•フォン•アルカンシェルは回復魔法、付加魔法と神聖魔法をマスターした神官職の訳ありシスターのパーティー内の苦労人である。

 そして《マスター レンジ》ミリム•リディア=音無とテイマーのヨモテル達だ。

 ミリムは僕の作る道具を甚く気に入り、僕に道具作成依頼や素材を取ってきてくれる近距離から遠距離を担当できるオールレンジマスター だ。

 本人は目に入れば距離関係なく攻撃出来る為、周りからはマスター レンジと呼ばれている。

 そして最後に突然パーティーに現れてパーティー入りを果たしたヨモテルである。

 彼は黒髪黒目でミリムと似ているのだが、ミリムは黒髪の中に濡れて煌めく紫色が薄らと星屑の様に暗闇でも輝く、だが彼はそれが無い。

 

 彼、ヨモテルは数匹の獣型魔獣を操れる程度のテイマーで、本人の能力も歴戦の研ぎ澄まされたソレもなければ、ゴブリン三匹程度に囲まれて負ける位の強さしか無い。

 だが、一年と半月という電光石火の速さでパーティー入りを果たした、パーティーリーダーの彼女が入れると逸材だと紹介して無理矢理捻じ込んだのだ。


 街の噂では色々な女性と関係を持っているとの噂が多く聞くほどで、パーティー内の女性陣にも時折話しかけては嫌悪されている、シンシアを除くが。


 そして、一年半にシンシアは妊娠し、その一年後には子供を産んでいる。

 

 僕は考えたく無かったが、女性陣がシンシアとヨモテルを嫌悪し始めたのはその時、女性陣達は知っていたのだ。


 だから、こんな事になるのは時間の問題で僕の負傷がその火種だったのだろう。


 複雑な気持ちである、パーティーを維持しようとしていたのがバカらしくなる程に


 僕は何の為に頑張っていたのだろう


心の中と頭の中が『それ』が広がり埋め尽くされる。


仲間だと思っていた者達に突き放された感覚と空虚さを覚える、役立つ道具を作りや色々な雑事まで・・・


「マイスター鉄人、そのなんだ拙者の御国へ行くか?」


思考が沈下している時にミリムが不安気に話しかけて来た。


 今の僕はそんなに惨めなんだろう


気落ちしながらも表情を取り繕い笑う


「大丈夫だよ、ミリムさん 僕は故郷に帰るし、もう‥‥この足じゃ荷車も引けないしね」


「それなら拙者、マイスター鉄人の護衛として故郷まで雇って下さらぬか?」


そこで、まじまじとミリムを見る


赤い襤褸を何枚も継ぎ接ぎし重ねた外套に北東の片刃剣を使えば最強国の諸国の特殊装束を着ており、彼女の腰には僕が作った収納ポーチが三つと背嚢を背負い、背中と背嚢の間には柄に特殊な紋様の片刃の剣を背負い完全装備である。

 まるで、今日こうなる事を察知していたようである。


 「待ちなさい、それは許さないわ音無」


 シンシアがそうはいかないとミリムを止める、が


ミリムは敵にしか向けない全くの無の視線を向ける、まるでお前など認識しないと言う様に。


 「なんだ、拙者より弱い『パーティーリーダー』殿 貴殿に行動の決定権を渡すのはダンジョン内だけだと宣告した筈だが?」


 完全に喧嘩腰で首を傾げるミリムはとても珍しい


 シンシアはたじろぎ、僕に視線を向けた後、『荷物』を持って出て行ってとだけ行って部屋にパーティーホームの部屋に戻って行った。


 ミリムはフンスと鼻から息を吐いて周りに背中の剣を鞘から出す素振りを見せ威嚇した。


 僕は虚無感に囚われながら『元』部屋に入る。


 入るとシンシアの生後一年の幼児の女の子が指を咥えて僕を見ていた。


 



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