第4話 説教
通行人を左右に押し分けてズンズン歩いてきたのは、大柄な親父であった。
太い腕の持ち主で、顔の半分を隠すくらい立派なヒゲをたくわえており、熊とかゴリラとかいうような野獣じみたパワフルさを、これでもかと押し出している。ただ、ヒゲの上に乗っている二つの目だけは冷たく静かで、大人びた知性を感じさせた。
「まったく、いつまで経っても来ないと思っていたら、こんなところで何をしているんだ?」
日本語だ。彼の言葉はマコトにも理解できる。
親父とは知り合いなのか、シーリャは朗らかに片手を挙げた。
「よう、ハッサ。ちょうどよかった。アンタに相談があってさ」
「ほう? 俺はてっきり、仕事のことを忘れていたのかと思っていたぞ?」
「……あ」
「おい、まさか冗談だろう?」
「ま、待ってくれハッサ。違うんだよ。砂原までは行ったんだけど、そこでちょっとトラブルを拾ってさ。それどころじゃなくなっちまったんだよ」
シーリャはとなりのマコトを指して弁解する。親父は困惑するマコトの顔を見つめると、「ふーむ」とうなってヒゲをなでた。
「トラブル、な。いいだろう、話くらいは聞いてやる」
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