第15話

 部屋で何時間も寝た。寝られる時は寝ておく。バターの夢に出会うためと。悪夢でも嫌なコトをとにかくシャットアウトして神経をぶち切るため。

 午後の、7時ごろ、お母さんが夕食は?とドア越しに聞いてくる。

 声を、出す気になれない。

「いい加減にしろよ。おばさんが心配してるだろ。夕食は?」

 お兄ちゃん!

「……食べる気になれ、ない」

「わかった。」

ドア越しでもお母さんが驚いているのがわかる。

お兄ちゃんが謝っているのも。すみません、きょう、たくさん話したんで、返事してもらえるかと思って。乱暴でした。すみません。

 そんなようなことを言っている。

 だれしも、

 初恋の人には、

 丁寧に、

 接しられたら……


 わたしは、よく寝たのに、またまどろんだ。薬の副作用の眠気かもしれない。でも、それでいい。

 翌朝は母は早朝5時から仕事だ。

 なんだってそんなはやく、と思うけれど。知り合いのお花屋さんを助けにいくらしい。お母さんかっこいい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る