開かれた選択(一)
どこかで野宿を経験してみるのもいいかもしれない、なんて思ったこともあったけれど、道中のいい位置に温泉地を見つけ、安い温泉旅館に一泊することにした。素泊まり三千円と少しだ。
たぶん、もう振り込まれているはず――と、ここに来るまでの間に銀行に寄り、一一万円口座に増えていたお金を一万円ほど下ろしておいていた。旅館に着いた頃にはもう夕方も過ぎ、銀行も開いているか不安な時間だったので早めに下ろして正解だった。
夕食はハムパンひとつに紅茶にドライフルーツを少し。早起きするために早めに寝るので、これだけでも充分。
少しだけテレビを見て、九時を過ぎるくらいにはもう、歯を磨いて和室に敷かれた布団に横になった。明日には何があるんだろうな……目覚めればそれももうすぐ。
そんなことを考えているうちに眠り、一夜が過ぎる。
朝食はハムパンに缶詰の鶏肉を少し追加し、あとはペットボトルに残っていたコーヒー牛乳とドライフルーツ、そして梅干しをひとつ。ハチミツ入りの梅干は酸味に加えて甘みも結構あって、これもデザートになり得るかもしれない、と思う。
八時にならないうちに早々に旅館を出て、周囲の並びにある店を物色。一応、飲み物と食料も買っておきたい。
せっかくカップも買ったのだしと、ドラッグストアでカップスープ、それにカップラーメンと生ハム四枚入り、プロセスチーズ四つ入りを購入。四六〇円なり。お金が入ったからって、ちょっと無駄遣いしたかもしれない。でもまあ、どれも何食分かにはなりそうなものだし。
飲み物は、ペットボトルを公園の水飲み場で洗い、水を入れておくことにした。ただの水、も飲むのは大事だと聞いた気がする。
とりあえずしばらくは徒歩で、というところで歩き出す。
偽人類がすべて地球上からいなくなり、事態が解決したら飛べなくなる。なら、できるだけ飛ぶべきじゃないか、と思わなくもない。特殊能力が使えるうちに、できるだけあちこちを飛んでカメラに撮っておきたい。それができたとしても、やっぱり飛べなくなること自体が寂しい。
わたしが空を飛ぶことができた、最短でほんの数週間程度。その期間は、人生におけるボーナスステージだったと思わなければいけないのかも。
すぐに物陰を見つけ、特殊能力二つを発動。予定を少し変え、できるだけゆっくり飛んでは休んで、を繰り返していくことにした。カメラを携えながら。この空を飛ぶ感覚というのを忘れたくない。
――能力がなくなったら、また何度も空を飛ぶ夢を見るんだろうな。
飛ぶときの目線も忘れたくなくて、色んな高さで景色を撮った。でも、こんな風に撮りまくっていたらすぐにデータがいっぱいになりそう。電気屋さんかコンビニでも見つけたら、カメラ用にSDカードを買わなくては。
天気も良く、見晴らしがいい。この国のどこかにまだまだ偽人類がいるのか、と思うと信じられない。もしかしたらわたしが捕まえたのが日本にいる最後の偽人類で、ほかは外国にいる可能性だってあるけれども。
そこまでいかなくても、外国にも偽人類は少なからずいるはずで、ということは〈ハイアーシルフ〉のようなグループはひとつだけではない……?
考えてみれば、現代のSNSゲームとかだって何かしらのプレイヤーの集まりがあるからなあ。ギルド、クラブ、パーティー、チームなどなど。
考えながら飛び、少し疲れてくると降りて歩き、休める場所を見つけると一休み。それからまた少し歩いて飛ぶ。
車通りが多い場所では誰かに見咎められないかと思うようなところもあったものの、結局、車を止めて話しかけてくるような人はいなかった。女一人旅は珍しいかもしれないが、こんな明るい真昼間だし。
一応、髪を隠してフードを被ってはいる。でも、性別は体形や体格で、わかる人は一目でわかるだろう。
少し暑くなると、木の影に隠れてタオルで汗を拭き、冷却時間を置く。飛ぶと太陽が近くなるが、風が抜けるのであまり暑さは感じない。今はいい時季だけれど、冬に飛ぶのを想像すると凄く寒いだろうな。
そうやって、海が見えたり見えなくなったり、飛んだり歩いたり休んだりを数時間繰り返し、やがて道路脇の看板で、八戸市が近いことを知る。
時刻は十時前。待ち合わせより一時間以上は早く街に入りたかったので、思わずほっと息を吐く。
少し歩くうちに周囲に高い建物が増え、道行く人の姿もさまざまな店も目に付く。何より、郊外ではほとんど耳にしない色々な音が、都会に来た実感をもたらす。
自動販売機のジュースが目に入り、冷たいサイダーでも飲みたい気分なので立ち止まりそうになる。しかしここは我慢。
どこかで休みたいけれど、その前に買い物したいところ。どうせ、大した長くはかからないだろうし。飲み物とちょっとしたお菓子、それと安い帽子を買おうかと思っていた。今までも買おうと思いつつ忘れていた。高い物などいらないし、百円ショップで済まそう。
テナントに百円ショップが入ったデパートを見つけ、そこで黒いシンプルな帽子を見つける。薄いし髪の量が多いわたしからすると、ちょっとした風で飛んでいきそうな不安はあるものの、ヘアピンで止めれば大丈夫。ということで、ヘアピンを購入。
――さらに、ヘアピンを探しているうちに目に入った物で思い出した。
そう、お金が入ったら化粧水や化粧品を買おうと思っていたのだった。ここで化粧水とファンデーション、化粧落としを購入。量は百円値だけれど、質の方は最近は百円ショップのもかなりいい、などと聞いたことがあったので、心配はしていない。
それから食品売り場のフロアに移動し、安売りしていたペットボトルのサイダーと値引きで三〇円のあんぱんを購入。
どこか、飲食していても違和感のなさそうな場所を探す。すぐに見つけたのは公園だ。周囲に人の姿も多いけれど気にならない。空いていたベンチのひとつに座り、サイダーを飲みつつおやつ代わりのあんぱんを食べる。約束の時間まであと一時間。
のんびり食べながら思い出す。あ、SDカード買うの忘れた。幸い、すぐそこにコンビニが見えている。SDカードならコンビニでも売っているはず。
サイダーを飲みたかったのは暑かったのが原因だろうけれど、身体の熱が冷めてきたのもあってか、それにあんぱんという取り合わせはちょっと口の中が甘くなり過ぎて失敗したな、と思い始める。それに、あんぱんといえば飲み物は牛乳じゃないだろうか。
一旦、普通の水を飲んで口の中をリセットしたりしつつ、どうにかあんぱんを食べ切って、コンビニでSDカードを購入。公園に戻って日陰の芝生に敷物を広げて、少し休むことにした。
少し離れたところには同じように敷物をしいて座っている夫婦らしい姿や、遊んでいる子どもたちをベンチから見守る母親らしい女性、犬を散歩させている若い青年の姿などが見える。のどかな光景だなあ。
『今、大丈夫かい?』
頭の中に聞き慣れた声が響く。
コビーの方から声を掛けてくるのは珍しい。大丈夫だよ。
『本部から連絡だよ。キミが応募した写真だけれど、一枚ほど採用されて、口座に報酬が振り込まれたそうだ。報酬は五千円だそうだけれどね』
へえ、採用されたんだ。
ほんの五千円でも、自分の撮った写真でお金が稼げたのだ。素直に嬉しい。自分の写真が少しは認められた、と感じる。
でも、あわよくば何枚か採用されるかなと思っていたけれど、一枚だけか……そう甘くはないということか。
そう言えば、どの写真が採用されたのかはわかる?
『巣の中のヒナの写真だよ。良かったら、その写真をコンビニでプリントできるようにしておくけれど』
いや、それはいいや。暁美さんには画像を送ってほしいけど。採用されたのはたぶん、あの写真だろうな。最後に撮った日の。
応募総数、なんてのはわかるのかな。応募数が必要数とあまり変わらないから採用されたんだったら、そんなに喜んでいられないかもなあ。
『応募総数は二一〇八点。まあ、一人で何点も応募している人も多いだろうから投稿者数は何分の一にもなるだろうが、誰でも採用されるレベルの倍率ではないと思うよ』
そうか。それは喜んでもいいのかな。
まあ、これに採用されたからって名前が売れるとかそういうこともないんだけれど。また写真募集の仕事が見つけられるとも限らないし。一応、写真が採用された事典には名前は載るのだけれど、それで何が変わるわけでもなく。
それでも一応、写真募集の仕事がないか、新聞や公募系の雑誌を買ってみることにしよう。後でまたコンビニに寄らなければ。
それじゃあ、とコビーとの通信を切り、リュックサックのポケットに袋ごと突っ込んでおいた塩飴を取り出し、包み紙をコートのポケットに突っ込んで飴を口に。
木の幹を背中にして目を閉じる。
視界に広がる、もう説明不要の見慣れた光景。スキルポイントが八〇〇以上溜まっており、〈飛行能力〉を〈透明化〉と同じレベル五まで上げる。
新しい特別作戦もないようだし、ウィークリークエストはクリア済みだし、ほかに作業はない。ホームフィールドを離れ、目を開いてしばらく飴を味わう。この塩気というのも、運動をした後の身体には心地いい。
そろそろコンビニに寄ってから待ち合わせ場所に歩き出せばいい時間かな。遅れそうなら飛べばいいので気楽だ。
コンビニで新聞と公募雑誌を買い、駅に向かって歩き始める。
人の流れに沿い、ときには外れながら、看板や道路の経路表示を参考にして駅を目ざして歩くこと三〇分くらい。待ち合わせの一五分前くらいに駅の前に辿り着くことができた。待ち合わせ場所は駅前だし、どこか開けた場所にでも座っていればいいんじゃないかな。
とりあえず、端の方のベンチに座っておく。反対側の端までを見渡せる位置だ。
――菊池さんに会うのも、久々だなあ。
そして会ったらわたしの記憶について聞くのだ。そう考えると、今更ながら少し緊張してきた。
菊池さんはどうやってここにやってくるのだろう。一日で北海道にあるはずの自宅からここまでやってくるんだから、自家用ジェットで来るとか、もしくはなんらかの特殊能力でやってくるんじゃないかと思うけれど。どうにしろ凄い方法でないと無理そうかな。
しばらくの間、わたしは行き交う人々の姿を眺めていた。周りには同じように休んでいる人や誰かを待っている風に見える人が座っていて、すっかりわたしも埋没して見えるだろう。
駅にも様々な人間が出入りしている。旅行者、仕事中らしいスーツ姿、学生さん、何かを届けに来た配達員、駅の清掃員や職員、その他。それらを眺めながら、五分くらいは経ったろうか。
人々の姿が行き交う雑踏の間から、誰かがこちらへ向かってきた。
近づく足もとを視界に捉えて顔を上げると、見覚えのある相手と目が合う。浜辺で別れて以来の、菊池政宗さんだ。
「やあ、久々だね。といっても、一週間とちょっとくらいか」
「お久しぶりです」
わたしは立って相手を迎えた。
「すみません、ここまで来ていただいて」
「いや、いいんだよ。わたしも、〈高速移動〉くらいは持っているし。あとは普通に列車で移動したんだ……じゃあ、座ろうか」
白い口髭に白髪の老人は皺の刻まれた顔にほほ笑みを浮かべ、わたしのとなりに腰を下ろす。わたしもそれに続いた。
「まずは、黙っていてすまなかったね」
と、彼は覗き込むようにわたしの目を見て謝った。こちらの疑問はすべて察している様子。しかし、今のわたしは何か謝る要素があるのかもわからない。
「いいえ。何か理由があるんでしょう? その理由を教えて欲しいのです」
「そうだね、順を追って話そう」
菊池さんは語り始めた。
まず、〈第五世界の二重線〉のゲームフィールドが地球上まで不法に拡張されたときに、それと波長が合ってホームフィールドに取り込まれた地球人たちがいた。その最初の一団にわたしも含まれていた。何年も前の話だ。
最初は、みんな純粋にゲームを楽しんでいた。そのうちコビーとも知り合い、なぜゲームフィールドが生まれたのかも知ったが、一時的な事故みたいなものだろうと思いながらゲームをプレイし、今はプレイ可能な間はこのゲームを楽しもうと考えた。そのうちほかのプレイヤーたちと知り合ったりもした。ゲーム内にはいくつものチームがあり、わたしは〈ハイアーシルフ〉というチームを作った。
〈ハイアーシルフ〉は人数も増えて大きくなり、チームのホームフィールドには、基地として廃校を使った。チームは複数で同盟を組んだり、ほかのチームと競い合ってランキング上位になれば特別報酬がもらえたりした。まあ、それ自体はSNSゲームとかでも良くあることだ。仲間が増えるにつれ、菊池さんや恵人さん、暁美さんらも加わった。
一方、地球上では異変が起き始めた――と言っても、何も知らないままなら普通の歴史の流れではあるけれど、コビーに言われて気がつく。ニュースになるような大きな場面にも、プレイヤーらしき者が映る。同じこのゲームのプレイヤーなら、相手がプレイヤーかどうかわかるのだ。
そこで、やっとわたしたちは――コビーらも含めて、事態を理解した。地球上にゲームフィールドが広がったのは能力を悪用しようという一部の異星プレイヤーたちの画策の結果であり、それが地球上の歴史の流れにすら影響をもたらしていると。
この頃から彼らはこう呼ばれることになる。〈偽人類〉、と。
わたしたちは彼らを送り返したいというコビーらに協力することにした。地球上にはいくつか偽人類からなるチームがあり、抗争を繰り広げていくつものチームを潰し、わたしたちは百人以上の偽人類を送り返した。
しかし、最後に最も強大なチーム、〈シルバーアロウ〉との戦いに向かう途中。
わたしともう五人が、別動隊がひきつけている間に主力を急襲する役目を引き受けていた。その六人のデータがクラックされ、そのうえ無理にユーザーデータを消されたためか記憶を失ってしまったという。
その後、菊池さんはわたしの家に駆け付けた。すると、玄関前にパトカーが止まっている。まさかわたしの身に何かあったのでは……と隠れて見ていると、わたしがパトカーに乗り込み去っていった。
そう、その日は家族が亡くなった日だったのだ。菊池さんがそれを知ったのは数日後のことだったようだけれど。
「葬式の様子を少しだけ見に行ったよ。しかし、声はかけられなかった」
それはそうだろう、と思う。記憶を失い家族の死を前に放心しているわたしにゲームがどうとか言っても、わたしは理解すらしようとしなかったかもしれない。
わたしがあまりに大きな人生の変化を迎えていることを知った菊池さんらは、もうこの戦いに関わらせることなく終わらせようという結論を出しかけた。そうして軽く見守りながら離れていこうとしていたものの、それは、時間がかかってもいずれはわたしは立ち直って新たな道を見つけるのだろう、という前提での話だった。
しかし、わたしはすべてを棄てて旅立つことにしたのである。菊池さんがわたしに近づくことにした理由のひとつがそれだ。
もし、あのとき菊池さんと会うことなく〈第五世界の二重線〉に触れることもなく旅をしていたら、わたしはどうなったか。立ち寄った街などで居場所を見つけるという可能性もゼロではないけれど、どこかで事件や事故に巻き込まれたり、野垂れ死にしていたかもしれない。むしろ、野垂れ死にするだろうと想定して旅に出たのだから。
危険があっても、それならゲームに触れる方がわたしは生きる。それが、菊池さんがわたしに塩飴を渡した理由。
わたしが記憶をなくした一方、〈ハイアーシルフ〉と〈シルバーアロウ〉の抗争はどちらのチームも半壊に終わり、今の状況に至った。わたしと同じく記憶を失った者たちはみんな、今はこのゲームとは無縁の生活を過ごしているらしい。
話を聞いても思い出せるものはないのであまり実感が湧かないが、なんだか……切ない話だな。
他人事のような感想だけれど、ひとつ、得るものもあった。
わたしはずっと、家族が出かけて事故死し、自分が家に残って生き延びたのはわたしが怠惰だからだと、運命から逃げたような気がしていた。
でも、そうじゃなかったんだ。わたしは家にいる必要があって家に残った。自己満足だけど、それは何も必要がないのに家に残っていたことよりは、よっぽど自分に失望せずに済む話だ。わたしなりに一生懸命にやっていた結果があれだったならば。
本当に、わたしの内心だけの問題で、他人にはまったく理解できないだろうけど。
「いきなり聞かされても、信じられないかもしれないね」
わたしの様子をしっかり見ていた菊池さんは、気遣うような様子で苦笑した。
「いえ、信じますよ。たぶん、あの犬も菊池さんも、バスに乗って襲われて廃校の拠点に来たんでしょう?」
わたしがそう言うと、さすがに相手は驚いたようだった。
「なぜそれを……部分的にでも思い出したのかい?」
「思い出したというか、たまに夢の中に出てくるんです。経験したらしい過去の光景ややりとりが」
「なるほど……少しずつ、脳が思い出そうとしている可能性もあるね。しかしまあ、無理に思い出そうとする必要性もないし、この先どうするかはきみに任せるよ。ゆっくり考えるといい」
そんな気はしていたが、菊池さんは何もわたしに求めなかった。すべてはわたしの選択に委ねられている。
何を選択するかというと、このままのんびりと旅を続けることと、来月の〈ハイアーシルフ〉による〈シルバーアロウ〉の残党の掃討作戦に参加すること。
今のわたしが参加してなんの意味があるのかと思われるかもしれないが、どうやら、わたしの元のプレイデータがコビーにより修復されて保存してあるらしい。だから、わたしが望めば元のスキルレベルや特殊能力のレベルを再生してもらえるらしい。
「来月の作戦開始まで一週間はある。何も焦ることはないよ……それでは、わたしはそろそろ失礼しよう」
「ありがとうございました」
迎えたときと同じように立ち上がり、駅の中へと去っていく背中を見送る。
一人で考えられるようにとの配慮もあったのだろう。残されたわたしは再び座ると、しばらく周囲をぼんやり眺めながら、聞いた話を反芻した。
でも、あまり情報が増えた気がしない。実感として持っている記憶が、夢で見たわずかなものしかないからだろうか。
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