記憶の欠片(二)
これを誰がどうやって取り出すのか少し気になったが、それはわたしの関知するところではないし、早く帰った方が良さそう。
仕事を果たすと、来た方向の空へ飛びあがる。速度は速めで。軽いとはいえずっと人体に似たものを抱えながらの飛行は色々な意味でつらい。
やがて、金網の柵を越え、管理された自然公園に戻ってくる。
――しかしどうしよう。人体を抱えて人目にさらされるわけにはいかないぞ。
と、迷っていると。
『ひさめ、恵人が呼んでいるよ。一番向こう側のバンガローだ』
コビーのことばに従い、三角屋根のバンガローに向かう。並んだバンガローの中で最も山に近いそこの出入り口前に恵人さんがいて、ドアを開けていた。
わたしはバンガローに入り、人工造体を床に置いて〈透明化〉を解く。
「お疲れさま。いやー、大変なことになったね。話はコビーに聞いていたけれど、無事で良かった。とりあえず……」
「ええ、これをどうにかしないと」
そう、人間そのものの人工造体を誰かに見られるわけにはいかない。運び屋が来るまでの間、どうするか。
まず恵人さんはリュックサックから寝袋を出し、寝袋に人工造体を入れて、それを抱えたまま飛び上がり、天井裏に続くパネルを押し開けてそこに入れる。もともと荷物置き場になっているらしい。
できれば〈飛行能力〉がないと行けない場所に保管しておければ安全だけれど、目の届かない場所にあるとそれはそれで不安になるし、運び屋が来たときにさっと渡せないのも困りそう。
「しばらくならこれで大丈夫だろう。運び屋は夕方くらいまでかかるだろうから、とりあえず、昼ご飯を食べてのんびりしようか」
そういえば、そろそろ正午になる頃だ。
「ここを離れるのは、少し不安ですけどね」
「鍵をかけていくよ。管理人さんが怪しんで合鍵で中に入って来て見つけるとか、天変地異でも起きてこの建物がバラバラになる事態でもなければ大丈夫だよ」
管理人さんに怪しまれるようなこともしていないはず。
バンガローを出ると、恵人さんがしっかりドアに鍵を掛けた。
向かう先はひとつ、道路の向こうのレストラン。こちらも木造の、ロッジのような雰囲気がある。単なるレストランではなく、どうやらリゾート施設の一緒のようだ。レストラン直通の玄関の横に土産物店の玄関があり、そこから通路がつながる円形の建物には温泉があるらしい。
道路を渡ってレストランに入る。昼食どきでそこそこ賑わっているものの、立地が立地なので席が埋まるほどではない。
たぶん、夏休みシーズンとかならもっと人が増えるんだろうな。
わたしたちは窓際の、景色のいいカウンター席に座った。小さめのメニュー表がそこに立ててある。
洋食の定番と和食の定番が混ざったよくあるメニュー。デザートはアイスとクレープとパンケーキと杏仁豆腐のみ。種類はあまりないけれど、値段はお安めのものが多い。
「んー。僕はカツカレーとアイスがいいかな。飲み物はオレンジジュースで」
「では、わたしは天丼と杏仁豆腐で。飲み物はあそこからもらってきますよ」
ここはセルフサービスで水とお茶が汲める機械が置かれていた。恵人さんがお店のカウンターに行って二人分の注文を伝える間に、わたしは紙コップに自分の分のお茶と、一応恵人さんの分の水を汲んでいく。カレーがどれくらい辛いのかわからないし。
席に戻ると、彼は感謝してくれた。
「ありがとう。それにしても、悪かったね。手紙の件」
「手紙の件というと?」
謝られる意味がわからず、そう尋ねる。思えばここは奢られるのだから、無料の水を汲んできて礼を言われる筋合いもないのだ。
「偽人類に狙われるなんて想定外だったろう。危ない目に遭わせたからね」
そういうことか。
「ああ。バトルがあるゲームなんだろうし、何か危険なことが起きる可能性はあると思っていましたよ」
「冷静だね……まあ、無事でよかった」
本当はもっと恐怖冷めやらぬ感じの反応が普通なのかも。でも、もしかしたら死の危険すらあるような場面ですら、恐怖心はなかった。それはゲームの現実感のなさや、すでに世棄て人気分だったからだろうか。
「まあ、危険な仕事だったのだから、仕事の料金は弾んでくださいね」
「ああ、正式には三日後くらいに入金されるだろうけれど、七万か八万は下らないだろうね。それとべつに、偽人類捕獲の報奨も出るから十万は越えるな」
「え、そんなに?」
いきなり金持ちになってしまった。ああ、何に使おう――と考えかけて、いやいや、先のことを考えると無駄遣いはできない、と思う。後先考えないと、十万なんてすぐになくなってしまうだろう。
「いやいや、まだ先は長いので貯金ですね、貯金」
「いつまで旅を続けたい、とか目標はあるの? 偽人類をすべて粛清したら、飛ぶこともできなくなるかもしれないけど」
それは確かに。
そうなれば、元の通り人目のつかないところを歩いて旅をすることになるだろうか。それもいい、と思った。ただ、資金は? 写真が売れるようになればそれで生活できるのかもしれないが、飛びながら撮ることもできなくなってしまう。
たまにアルバイトして旅を、というのが普通なんだろうけれど、何か普通だな。旅行記でも書こうかな。
「今はあまり深くは考えてませんね……どこかの土地が気に入れば、そこに定住したっていいと思っていますし」
そこで呼び出しがかかった。カウンターに注文した料理の載ったトレイを取りに行く。こういう場所によくある、食器の上げ下げはセルフサービス式の店だ。
料理を手に席に戻る。量は多くはないけれど、天丼はカボチャやナス、マイタケなど野菜のほかにエビやアナゴの天ぷらものっていて、なかなか豪勢だ。
となりを見ると、カツカレーのカツもサクサクで大きめに見える。
「いただきます」
カウンターにある箸入れやスプーン入れからそれぞれを取り、食事に取り掛かる。
――こんな山奥でもおいしい魚介類が食べられるんだから、交通網や流通の進歩とは凄いものだ。
サクサクの衣をまとったエビを一口かじり、そんなことを思う。上からかけられたタレも好みの味だった。
杏仁豆腐は固めでゼリー感が強く、わたしの好みではなかったけれど……まあ、ミルクゼリーの一種だと思って食べれば美味しくなくはない。
ちなみに、カツカレーのカレーは結構辛かったらしく、恵人さんは紙コップの水をおかわりしていた。
「辛かったけど美味しかったよ。日本は大抵、どこの店も一定水準以上の味だからいいね。当たりがいいだけかもしれないけど」
「そうですね。こういうところはいい料理人を連れてくるのかもしれませんね」
わたしも、あきらかに不味いと思うような飲食店で食べたことはないな。ただ、わたしが接客をやっていたころの同僚には、遠い地方の路地裏にあるラーメン屋でぬるいラーメンに当たったとか、乾いたパック寿司のような寿司に当たったとか、色々と話は聞いたことがある。
そういうのと無縁なのは運がいいのかも。
「まだまだ時間がありますね。温泉でも入りましょうか」
必要なタオルなどはリュックサックに持ってきているが、レンタルも可能らしい。
「それもいいね。でも、二人ともいる必要はないだろうから、帰りたいなら帰ってもいいんだよ」
「いや、残りますよ。ちゃんと……アレが渡されたのを見ないと安心できないし」
一瞬、あの身体、と言いかけて慌ててアレと言い直した。周囲にこちらに注意を向けている人はいなかったようだけれど、そんなこと聞かれたらどう思われるか。
「まあ、いてくれるなら僕の方も心強いけれどね」
彼はほっとしたように言った。
食器をカウンターに下げると、わたしたちは温泉に続く通路に向かう。途中、券売機があって温泉大人一回券は三五〇円。なかなかお安めだ。
ここは自分で支払い、彼は男湯、わたしは女湯へ。
中はよくある温泉施設だ。更衣室で服を脱いで籠に入れ、貴重品はロッカーに入れて腕に巻くタイプの鍵を抜き、温泉に入る。ややぬるめの湯に水風呂に熱めの湯、そして露天風呂にサウナ。何度かこういうタイプの温泉に入ったことはあるけれど、構成はどこもあまり変わらない。
洗い場で身体を洗い、風呂をいくつか入る。ただ、サウナや水風呂は実際は利用者が限られる。わたしも興味本位で一度使ってみたくらいだな。
こんな真昼間から山奥の施設の風呂に入る人間は限られているのか、ほかの利用者は二名で、それもわたしが出る少し前に上がっていた。
温泉に入れる機会もそうそうないかもしれないし、ゆっくりじっくり入りたいところだけれど、連れを待たせちゃ悪いし、バンガローの方も気になる。
そう考えたところで、ふと湧き上がるものがあった。〈連れ〉って、なんだか懐かしいような、心地よい響きなような。
家族とどこかに来て連れ、ということは何度かあったけれど、それ以外の意味で言うと彼氏いない歴イコール年齢のわたしに、連れなんていたことはないんだけれど。
また夢の中ででも何かあったのか。あまり気にしないことにして、更衣室に戻りタオルで身体を拭き、備え付けのドライヤーで髪を乾かし、急いで外へ出た。
温泉の券売機の前にベンチがいくつかあり、小さな休憩所になっている。そのベンチのひとつに、見覚えのある姿が座っていた。
「お待たせしてすみません」
「いや、そんなに待ってないよ。戻ろうか、あまり留守にするのも不安になるし」
「そうですね」
彼もやっぱり人工造体が気になるらしい。
並んで通路を歩き、玄関に向かう。時刻は午後二時過ぎくらいになっていた。窓の外は雲の切れ目から差し込む明かりで眩しいくらいに明るくなっている。
窓の外を見た視界に、恵人さんの横顔が入る。淡い栗色の濡れた髪が肩にかかるその眉目秀麗な横顔は、映画のワンシーンにあってもおかしくないような物憂げな美少女のように見える。
知ってたけど、彼とは凄く住む世界が違うんじゃないだろうか。アイドルとかにいそうなくらいの美男子だ。いや、それだけならまだしも、温泉で身も心も洗濯してきたとはいえすっぴんどころか化粧水さえつけていないわたしとはかなり隔たりがある。
――よし、決めた。お金が入ったらまず化粧水と最低限の化粧くらいは買おう。
ただ生きて旅をするだけなら一番必要ではない物かもしれないが、現代の日本を旅する以上は人間社会とのつながりは断ち切れない。化粧しないことで悪目立ちしてもなんだし。
建物を出るまでの間、風呂上がりの心地よさからか恵人さんは鼻唄をうたっていた。
おや、この曲は?
「その曲、聞き覚えがありますね。なんの曲かわかります?」
メロディーがしっかり耳に馴染んで、すっかりわたしも気に入って鼻唄常連になっている曲だ。でもどうしても思い出せなく出来になるし、この曲を知ることができるチャンスを逃すわけにはいかない。
「この曲、お気に入りなんだ」
曲名とアーティスト名を教えてもらってメモする。いい曲だけど、日本のゲームのテーマ曲のために海外の新進気鋭のバンドが提供したっていうマイナー曲らしい。大した売れたゲームでも曲でもないらしく、一体どこで知ったんだろう? コマーシャルででも聞いたのだろうか。
考えながら道路を渡り、目的地へ。
「……どうやら、無事のようですね」
バンガローに戻ると恵人さんが屋根裏をのぞき込み、うなずいた。見ない方が怪しまれる可能性は下がるだろうが、確かめたくなるのが人間の性。もちろん、見る前に周囲に人の視線がないことは確認している。
「そういや、本当に夕方までここにいるの? バスがなくなる可能性があるけれど。僕はここに泊まるつもりだけどね」
とりあえず椅子に座り、わたしたちは一息入れた。
「遅くなったら飛んで帰りますよ。別にここに泊まってもいいですけどね」
「ほんと? こういうところ大丈夫?」
と、彼は周囲を見回す。
バンガローはマットの敷かれた二段ベッドがあり、椅子やテーブルもあるが電化製品はレンジと電気ポット、照明のみ。コンロはなく火は持ち込めないが、玄関の外にバーベキューセットがあった。管理棟で炭を購入すると使えるらしい。肝心の具材がないけど。
まあ、食事はレストランでどうとでもなるだろう。行ったときに一度確認したけれど、午後七時まではやっているようだし。それに、お土産店には地元産の野菜や肉も売っているようだった。
大きな窓の外に見えるのはバーベキューセットのほかに緑の芝生、遠くに遊具。たまに紅葉した木々が見えた。
今は羽虫も減っているけれど、夏はちょっと苦労しそう。
「わたしは田舎育ちですので。家は一応、街中ではありますけど、祖父母の家は郊外の農家でしたからね」
その祖父母も今は郊外の家にはおらず、家は親戚の手に渡っていた。
「そうなんだ。僕はずっと都会の騒がしいところにいたから、こういうところにいると少し、どうしていいか困る」
そんな気はしていたけれど、シティーボーイらしい。
「せめて、本でも持ってくれば良かったかな……」
「お土産店にいくらかありましたよ」
そう言ったところでわたしは理解した。こういう閑散としたところに慣れていない恵人さんは寂しいのだろう。
「話し相手が必要なら、わたしもここに泊まりましょうか。ホテルには連絡しておけばいいでしょうし」
「ほんとに?」
顔を上げてこちらを見た彼は、とても嬉しそうな笑顔。
「そうしてくれると助かるよ。お礼は、夕食と朝食を奢るというのでどう? 良かったらお弁当もつけるよ」
泊るところも食事も保証されるのなら、わたしとしては願ってもない話。
「いいですよ。ホテルには電話しておきましょう」
確か、管理棟の前に昔ながらの公衆電話があったはず。
立ち上がろうとすると、声をかけられる。
「それと……嫌だったらいいんだけど、できれば敬語じゃない方が僕は話しやすい」
少しためらいがちに、そう提案される。
正直、恵人さんは年下か年上かもわかりかねていた。接客をやっていたので敬語は苦手じゃないものの、使わずに済ませられるならその方が楽だ。
「それじゃあ、敬語はやめますね……じゃなくて、やめるね」
慣れるのにはちょっと時間がかかるかもしれない。
「あ、飲み物でも買ってきましょうか……じゃなくて、買おうか」
「いいよ、しばらくは慣れないだろうし。僕はサイダーがいいかな。お湯はあるから、お茶くらいは入れられるし」
相手は少し笑いながら返事をする。
そうか、電気ポットはあるんだ。なら、わたしも土産物屋でパック入りの紅茶か何かを買おうかな。
とりあえずバンガローを出ると、自動販売機でサイダーとリンゴジュースを買い、走って道路を渡って土産物屋の玄関をくぐり、そこで紅茶とポテトチップスとチョコクッキーを購入。ジュースと合わせて五百円とちょっと。まあ、一仕事を終えた自分へのご褒美と思っておこう。
それに、夕食と朝食は奢ってもらうのだから、それに比べれば大した額でもない。
「ありがとう。おやつも買ってきたんだ」
「ほら、そろそろおやつの時間ですし」
と、時計を指さす。昔ながらの小さな振り子の壁掛け時計が高い壁に掛けられていた。ずいぶん高くにあるのは、振り子がうるさくないようにという配慮なのかな。
それにしても、時間が流れるのが遅い。とりあえずお菓子の袋を空けてジュースを飲みながら恵人さんのデザインについて談笑して時間を過ごすが……これは確かに、一人ではどうしていいかわからなくなるのもわかる。
しばらく話して、不意に、恵人さんが二段ベッドの方を向く。
「夕食はレストランで食べるとして、寝床はどうしよう。僕、寝袋使ってしまったし」
そうだ。恵人さんがリュックサックに入れてきた寝袋は、人工造体を包むのに使ってしまった。
わたしはもともと寝袋なんて高価な物はないので、タオルなどでなんとかしないと。あ、タオルは干しておかなければ。
「下はマットがあるからいいけれど、上はなにか掛けるものがあった方がいいかもしれないね」
わたしはコート二枚重ねだ。これのまま寝るのを想定して着て来たんだし。
「僕もジャケットとコートがあるから……うん、贅沢は言ってられないねえ」
たぶん、彼はわたしより綺麗好きなんだろうな。というか、わたしは野宿も辞さないつもりで旅に出ているけれど、彼はそんなわけじゃないし。
とりあえず濡れた物を外のバーベキューセットに干す。晴れてきたし、バスタオルはまあまあ干せるだろう。リュックサックを枕に、バスタオルを下のマットに敷いて、コートを掛けて眠れば大丈夫じゃないかな。
暖房はないし、高いところなので少し気温は低いだろうけれど。こういう場所は本当に寒い時季になると閉鎖する。
リュックサックをゴソゴソしているうちに、わたしは敷物を持っているのを思い出した。でも、これだとマットのままの方がマシかな。
毛布の一枚くらい持っていても良かったかもしれないけれど、旅をしている間は必要なさそうだからなあ。
向かいの土産物屋は、バスタオルはあっても毛布はなさそうだ。もちろん、寝袋も。
「まあ、旅人スタイルで寝るのがバンガローというものなのかもしれないし。ものは試しだね」
そして、二段ベッドの上と下どちらに寝るか? を少し話し合うが、わたしにも彼にも希望はなく、結局わたしが上になった。そんなに寝相が悪いわけでもない、スカートを履いているわけでもない。どっちでも良かった。
もうそろそろ四時くらい。もう〈夕方〉には差し掛かっているが、いつ運び屋はやってくるのだろう。
と思っていると、少しの間宙を見上げていた恵人さんが振り返る。
「〈透明化〉がなかなか続かないのと、途中天候が悪いのもあって、到着は七時くらいになりそうだって」
なるほど。スキルの取り方やレベルの上げ方によっては、そういうこともあるか。わたしみたいに平均して上げるプレイヤーばかりじゃないだろうし。
と言っても、わたしより断然上のレベルだろうな、たぶん。
「じゃあ、夕食は早めにした方がいいね」
「うん、六時前くらいになったら行こうかな。それまでまだ二時間くらいあるけど」
「まあ、のどかなところですし、昼寝でもして過ごせばいいのでは」
テレビもない、ラジオもない。うーん、ラジオくらいは持ち歩いてもいいかもしれない。
わたしの適当な提案に、彼も同意した。まだ夜には早いけれど、わたしは二段ベッドの上に登ってみる。
いくら田舎暮らしだからと言っても、祖父母の家に泊まったときも民家は民家。こういうところで寝るのは祖父母の家より、小学生のときに研修で行った〈ナントカの少年の自然の家〉で泊まった宿泊施設に似ている。
梯子を登りベッドに横たわってみる。ホテルのベッドとは比較にならないが、マットは厚めで思ったほど背中は痛くならなそうだ。
それより、天窓の存在が気になった。普通に床の上で過ごしているときには、ああ、あれのおかげで明るいなというくらいだったのだけれど、夜になればきっと、あそこから星空が眺められるのだろう。
特にわたしの視点からは丁度いい位置だ。
リュックサックの中身を調整し、コートの一枚を身体の上に掛けて天窓を見上げる。
すると睡魔が緩やかに頭をもたげてきた。
まだ夕日も見えない眩しい空は目を閉じても透けて見えるくらいだけれど、すぐにそれも闇に飲まれていった。
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