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「おう若いの、無事辿り着けたようだな」
それからまた少し歩いていると声を掛けられた。声のした方を向くと、荷馬車を引いた旅装の青年が立っていた。
誰だっけ? ……ああ、思い出した。ここに来る前、旅籠で少し話をしたっけ。そう言えば、この町までの道を教えてもらったのもこの青年だった。確かマルケスとか言ったっけ。
「おかげさまで。商売は順調ですか?」
「いや、積荷は幾つか捌けたが、飛び込みで買い付けは難しいな。取引先も量もきっちり決まってるんだと」
それを聞いて僕は少し違和感を覚えた。
「あれ? おかしいですね。さっきの倉庫では熱心に在庫を売ろうとしてきましたけど……」
「そうなのかい? ちょっと行ってみるか、それはどこに?」
「あそこです」
僕は二百メートルほど離れた、先ほど訪れた倉庫を指さした。
「そうか、ありがとう」
マルケスは手を上げて背を向けてそちらへ歩き出した。その動きに違和感を感じ、よく見ると左足の服が少し破れて赤い染みが付いていた。
「あの、足、どうかしたんですか?」
「ああ、これね。道中で野犬に襲われてね、ツイてないよ。いや、三食分浮いたから元は取れたかな? ハハ」
逞しい人だ。いや、行商人なんてやる人はあのくらいじゃないとやっていけないのかもしれない。
「さて、さっき見かけた宿に行く前に……」
僕は僕でその場を離れ、もう少し歩き回り、手近な木材を扱ってそうな店を見つけ、中に入っていった。
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