第2話

夕陽の逆光でよく見えなかったが同じ学校の男子だ。

その背中が不意に立ち止まり振り向いた。

金色の光の中に佇みこちらを見ている。

怪訝に思いながらも不思議な感じに吸い寄せられるようにそちらの方へ坂道を下っていく。

向こうが止まっているのでだんだん近づく格好になる。

3mほどまで近づいた時やっとそれが誰だかわかった。

アイツだった。

「部活の帰り?」彼の思わぬ問いかけに

「・・・そうだけど・・」と答えた。

答えながら初めて会話をしたと思った。?これが会話?と考えていると彼が言った。

「俺、いつも学校の帰りはみんなとカラオケいくだろ?でも今日は進路相談で遅くなったんだ。で学校出たら目の前にこの夕陽だろ?!こんなに夕陽が綺麗なんだなって思ったらカラオケ行くより気持ちが良いなっておもってさ。おまえはいつもこの時間に帰るの?じゃあこんな綺麗な夕焼けいつも見てんだ。うらやましいぜ。」

早口で一気にまくし立てる彼を見ているとよっぽど興奮してるんだなあと思う。

夕陽の力ってすごいんだなあとしみじみ彼を見ていたらこんなにしっかり顔を見たことなかったことに気がついた。

はじめて間近で見る彼は思っていたより穏やかな顔をしている。いつも目立つ存在だからもっと猛々しい顔をしているもんだと勝手に思っていた。

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