終章
終章
『太陽と月の真実はこれをもって全てに非ず。知の冒険者よ、我が先を行け』
-“フォルティナ文書 文頭”より (著者不明)
ソポシュノ会戦と名付けられた戦いは統一戦争以来解放軍が経験した初めての会戦となり、解放軍の死傷者1360名に対し、帝国軍は遺棄死体だけでも3000を超えた。軍艦も七隻沈み極西海艦隊の半数を失うなど、帝国軍の完敗であった。
会戦の勝利も冷めきらぬ内にカトヴァアルは大魔術の調査隊を編成、喫水の浅い二隻のコルベットに分乗して出港した。
半日もすれば船団は常夜の森に入り、そこからさらに二日航行する。両岸には城よりも高い木が生え、枝葉が川へせり出して日陰を作る。鱗が表面を覆う木、肉質で長い毛が表面に生える木、悪趣味で気味の悪い巨大木ばかりが森を支配した。これらは密生し陽光を一切地面へ届かせない。昼間でも木々の下には浮遊する夜光蟲の姿がある。
夜になれば夜光蟲は木の下を離れて空に昇り、数十万の群れを幾つも作った。彼らは夜空の支配権を天翔ける星々から奪い、月だけが唯一の天体になる。全周を夜光蟲に囲まれ、船はさも星々の間を航行しているようだった。
チェルネツアを寝かせつけてから甲板に上がってきたセヘナイ。上ではリナアルが艦首の手すりに寄り掛かって物思いにふけていて、セヘナイは何となく彼の隣に立った。
「綺麗だよね」
「綺麗ですけど、遠くで見ているぐらいがいいですね」
リナアルは自分の手元に流れてくる夜光蟲を払い除ける。
「チェレネーツァさんは大丈夫ですか? ここ数日、一日の殆どを寝て過ごしてますけど」
「強力な魔法を連発したから、体力が底を尽きたんだ。だからあんまり魔法は使いたくないんだけど、無理させてばかりで悪いなって思ってる最中」
「なんだか、チェレネーツァさんへの接し方変わりました?」
リナアルが思った事を率直に聞くと、セヘナイは困ったように微笑み髪をいじる。
「変わってしまったといいますかね」
妙に言葉を濁すセヘナイ。内心モヤモヤしているこの想いを、このまま話題の流れに乗って打ち明けて良い物か考えていた。二人で踊った夜以降、今まで意識もしなかったチェルネツアの些細な仕草が、あの夜の可憐だったチェルネツアに重なる。それが理由となる様々な迷いがセヘナイを苦しめていたのだ。
「リナアルはさ、好きかもしれないと感じた相手がいたらどうする?」
「好きかと問うて、『はい』か『いいえ』の返事を待ちます。五秒で解決ですよ」
期待値を大きく下回る答えにセヘナイは大きく息を吐く。
「チェレネーツァさんの事ですよね。思うに、明日にでも両想いを確認して終わりでしょう」
「分かってないな。彼女の幸福を考えたら……、そうもいかないの」
セヘナイはほっぺを膨らませ、手摺にうつ伏せる。
「といいますと?」
「私はね……、んー、小難しい説明を全部省けば、命が削られる呪いにかかっているんだ。だからチェルネツアは立派な人に引き取ってもらいたい、そう考えてたはずなんだけどね。だから邪念だよ。じゃ、ね、ん」
リナアルは顔に出さなかったが内心驚き、心の声が洪水を起こす。服の擦れる音すら出ないようにゆっくり首をひねり、夜光蟲で満たされる空をぼんやり眺めるセヘナイの横顔をこっそり見る。
「だったら。チェレネーツァさんとカデシエーナさんの違いは?」
「全て教えた後で、彼女達が私に求める物の違いかな。多分チェルに教えたら、無意味にでも長く生きて欲しいと説得してくるんじゃないかな。でもカーシャは私を止めなかった」
「カデシエーナさんは全て知っているかのような口ぶりですね」
「全て教えてある。私が本気で愛した人を舐めるなよ」
セヘナイが穏やかにフフフと笑い、その表情がリナアルを物悲しい気持ちにさせる。
「私の面白くない愚痴は止めよう。リナアルも、何か心の蟠りがあるんだろ?」
「呪いの話を聞いた後では、自分が小さい人間だと感じるので言いたくないです」
リナアルは手摺から離れると、マストの周りをグルグル回る。セヘナイの視線に追われていると、話さない訳にはいかない気がしてくる。
「結局正しさとは何かを優柔不断にも引きずっている訳ですよ」
「それで?」
「嘘をつき続ける事は心地よくないと分かりました。それだけです」
「簡単だ。それを自分にとっての正しさだと定義すればいい。五秒で解決だね」
意地が悪な言い方にリナアルは不貞腐れ、マストに寄り掛かる。
「自分だけの正しさに意味はありますか?」
「じゃあ、神になるしかないね。人間には無理だよ」
子供を諭すようなセヘナイの態度に、リナアルはイラっとして口を閉じる。リナアルもセヘナイもお互いの事を一度頭の片隅に追いやって、それぞれの悩みに向き合った。
しばらくの沈黙の間にも蛇行する河を船団は進む。あるカーブを曲がり終えると、漠然と景色を眺めていたリナアルは森の向こうに巨大な三角形のシルエットを見つける。明らかに自然の物ではない直線的な形状。人工物だと理解すれば、直感的が目指している遺跡と結びつける。
「セへナイ様、着いたのでは?」
水面を見つめていたセヘナイはリナアルが見上げる先へチラッと視線を動かした。一瞬三角形のシルエットを捉え、二度見する。手摺を両手で鷲掴みにして、すかさず望遠鏡で覗く。船乗りたちも突然森の中に現れた巨大建造物にざわついた。
話を聞きつけたキイガールも甲板に上がり、身を乗り出すセヘナイが落ちないように肩を掴む。森の中から突き出る真っ白なピラミッドの頂上部。その大きさたるや教皇府の大聖堂にも引けを取らず、そういった事に関心が薄いキイガールですら尋常ではないと感じる程大きい。
「あれが太陽と月の遺跡だと言いたいのか?」
「多分。いや、きっと間違いない」
恋焦がれた発見にセヘナイは興奮と動揺で感覚が鈍り、全ての質感から意識が隔絶される。周囲の時間は普通に進んでいるのだが、自分の主観的な時間だけが静止しているような。現実味が湧かず、現実を現実として頭が理解するまでの長大なタイムラグの中で呆然としていた。
ピラミット群を中心にした次の蛇行を曲がり終えた船団、その前に白亜の都市が現れる。城壁、港、建物、全てが純白の石材で建築された、大森林の奥深くに眠る大都市。手の空いている船員は片っ端から右舷側の乾舷に並んで、その美しい都市に見入った。
「今すぐ上陸しよう!」
鼻息を荒くするセヘナイが右にも左にも訴えかけるが、リナアルも他の船員も魅了されて気の抜けた反応しか示さない。
「待てよ戦友。夜光蟲で明るいとはいえ夜の接岸は危険だ。朝まで待てって」
キイガールはセヘナイが暴れ出す前に両肩を掴む。
「こ、こ、これを目の前にして待てって? そんな殺生な」
キイガールは首を縦に振る事はない。セヘナイは白亜の都市を指差して地団駄を踏むが、そんな彼を見てキイガールは疑問に思う。
「戦友、大魔術はお前にとっての何なんだ?」
「人生だよ。この意地悪」
「そうか」
キイガールはもし自分から人生で大切なものを奪われたらどう感じるか、まだ駄々をこねるセヘナイを見下ろしながら少し考えてみた。
甲板に居座って夜を越したセヘナイは、森の向こうから太陽が顔を覗かせた直後にキイガールを叩き起こし、朝の弱い彼を強引に働かせてた。他にも叩き起こされた船員や解放軍の兵士も朝食前の重労働に 。
接岸作業が終わり、船員やキイガールが食事を求めてゾロゾロと船内に戻っていくが、セヘナイだけは船の甲板から埠頭に掛けられた木の板から離れなかった。甲板が静かになると、一人で懸け橋を渡り木の板の縁に立つ。あと一歩進めば白亜の街に踏み入った事になる。セヘナイは板と埠頭の境界をしばらく見つめて、唾を呑んでスッと足を前に出した。カツッと足音が二度鳴ると、セヘナイは埠頭に立っている。川のせせらぎ、鳥の鳴き声、太陽の温もり、世界は決して劇的に変わらない。けれどセヘナイの目から訳もなく涙が溢れた。あと少し、あと少しで憧れの大魔術に触れられる。実感がより強く確固たるものになればなるほど、感情は高鳴って、大粒の涙が頬を伝うのだった。
廊下を人が走って往来する音で目が覚めるチェルネツア。狭い一人部屋の家具は足音と同時に小刻みに揺る。水差しに貯めておいた水で顔を洗い、あくびをしながらブラシで髪をとかす。体のだるさと眠さはまだ抜けきってはないけど、体力の回復を感じて今日は外に出てみようと考えた。
見られても恥ずかしくないよう万全に身支度をして廊下に出ると、そこにはセヘナイがいた。
「セへナイさん?」
「太陽と月の遺跡に着いた。調査に出発するから外に出よう」
雰囲気が明るいセへナイは足早に階段を上っていく。チェルネツアも一段飛ばしで階段を上り甲板に出ると、目の前に広がる真っ白な街の姿に胸を打たれた。思わず艦首まで駆け出して、「遺跡」という単語からは想像もできない都市に見惚れる。
「これが遺跡なんですか! 信じられない。こんな不便な場所じゃなかったら住みたいくらいです」
「ビックリだよね。数千年の時間が経ってるのに、こんな綺麗に残ってるなんて」
チェルネツアは埠頭に降りると、探索の準備をする兵士の間を縫うように走り抜けて街に入った。舗装された道路には水路が通り、今でもチョロチョロと水が流れる。家々は直方体で歪みが無く、石材の間に一切の隙間が無く表面はスベスベ。街の中に円形の大穴が空いていて、深くまで断崖に囲まれた穴は底に澄んだ水を湛え、崖の上からでも泳ぐ魚の煌めきが見える。穴の縁には階段があって、そこの泉まで降りていけた。
セヘナイがチェルネツアに追いついた時、彼女は泉の縁に立ち目を輝かせていた。水面の反射がチェルネツアの顔に映る。
一区画丸ごと陥没した街が透き通った泉の中に沈んでいた。形を保ったまま水没する建物に魚の群れが住み着き、水草は赤い花を咲かせて水中に草原をつくる。
「何だか、天の国に来てしまったみたい。不思議です」
「うん、綺麗だよね」
「私嬉しいです。こんな場所に連れて来てくれて、ありがとうございます。一生の宝物ですね」
泉に目を奪われていたチェルネツアは気が付かなかったが、その時セヘナイは顔を背けて照れ笑いをしていた。
カトヴァアルが解放軍に招集をかけ、遺跡の探索が始まった。セヘナイとチェルネツアを先頭に、キイガールと解放軍が続いて魔道の倉を目指す。
市街を進む隊列は観光を楽しむ人々とそう変わらず、会戦の勝利による余韻もあって雑談し歌を歌い緊張感は一切ない。この様子にキイガールはリレッツェネがここを管理し観光産業を寡占してしまえば、儲かるのではないかと考えついた。
セヘナイとチェルネツアが他愛もなく話していると、カトヴァアルがそこへ追いつき、目が合ったチェルネツアの顔からスーと笑顔が消え、セヘナイの陰に隠れる。
「どうしましたか?」
「数千年前のエジシン人がこの精巧な石造りの街築き上げたと言いたいのか?」
カトヴァアルのもの言いたげな態度は不満からく。
「でなければ私達はこの街で気軽に散歩などしていません」
「これが自分達北方シア人の物だと胸を張って主張できればどれだけ素晴らしいか。考えれば考える程、聞かされた話が疎ましい」
この人ですら悔しいのだ。セヘナイは思った。北方シア人からすれば、どこか劣った連中だと考えていたエジシン人が過去ウルカハシアジルより壮麗で立派な街を築いたとは信じ難いのだろうと。
「私も疎ましく思いますよ。この場に私以外一人も学士がいない事が」
癪にさわったカトヴァアルが睨み返すが、セヘナイは知らない振りをしてやり過ごす。
市街を抜けた先には大小五つのピラミッドが立ち並ぶ広大な広場があり、ピラミットの表面は人の技とは思えない程平らに磨かれ太陽の光を反射する。セヘナイの次にチェルネツアが広場へ踏み入れる、その瞬間に彼女のポシェットから強烈な赤い光が放たれた。一帯が真っ赤に照らされる中でカトヴァアルやキイガールは逸早く身構え、チェルネツアはパニックになってポシェットを投げ捨てた。だが光の正体に心当たりのあるセヘナイは宙を舞うポシェットをダイビングキャッチし、アクアグロットを取り出す。予想通りそれはアクアグロットの輝きであり、包んでいた布を取ると一点へ向けて光の筋を照射した。
「向こうから魔道の倉へ案内してくれるみたいですよ」
セヘナイはカトヴァアルにそう言って、ポシェットをチェルネツアに返すと、アクアグロットを握って光の筋が示す最も大きなピラミッドへ一目散に向かった。チェルネツアとリナアルが小走りで追いかけるが、歩幅の差があるにも関わらず二人は並んで歩くにも苦労する。
「セへナイさん、ごめんなさい。大切な物があるのを忘れて」
「いいよ。気にしてないから」
「セヘナイ様、そんなそそくさと進まれては安全確認ができません。総帥閣下がいらっしゃるのですから」
「ああ、うん。そうだね」
両脇から交互に話しかけられても、セヘナイは右から左で歩くスピードを落とす気配は全くない。視線も光の筋の先から離れない。
最大のピラミッドには巨大な石の扉があった。百人で押してもびくともしなさそうな重厚な扉だが、アクアグロットを持ったセヘナイが近づくだけで、ガガガガガと音を立ててゆっくりと開いた。その先は地下へ潜る一本道の通路で、高さも幅も5mはあった。その先には光の柱が何本か見え、どこかへ繋がっていると分かる。アクアグロットが示すのもこの通路の先。
「いくよ」
セヘナイが聞えるギリギリの声で呟くと、扉が開ききる前に隙間をすり抜けて走り出す。リナアルが「待ってください!」と言いながら手を伸ばすが、指先がセヘナイの服に触れただけて止められなかった。チェルネツアも扉の間を通ってセヘナイを追いかけ、それを見たリナアルも「ああ、もう!」と唸ってから覚悟を決めて追いかける。どんな罠や脅威が控えているかも分からないのに、夢中になって走るセヘナイが信じられない。憧れは人をこんなにも盲目にするかと呆れる。けれどカトヴァアルが警戒していたように、セヘナイが解放軍を出し抜いて大魔術を手に入れようとしているとは思わなかった。
通路の先は巨大な地下空間。奧が霞んで見えなくなるまで広がる空洞の天井は高さ200mもある柱状の岩に支えられ、天井が崩落してできた穴からは陽が射して光の柱のようになっていた。幾つかの穴からは水が落ちて滝となる。底には緩やかな川が幾つも流れ、棚田のような岩々が底を覆った。そこを空中回廊が貫き、地底にある別のピラミッドまで続く。
セヘナイが地底のピラミットの前面までたどり着くと、アクアグロットから光が消え、ピラミットにある扉が独りでに開き始めた。息が上がって呼吸もままならないセヘナイは手を膝につくが、扉の奥から差し込む真っ青な光に照らされ顔を上げる。ここまで導かれているにも関わらず足を止めるわけにはいかない。そう思うと、自然と足は前に進む。
「セへナイさん! 待ってください」
チェルネツアが追い付くと、セヘナイの背中に手を添えた。セヘナイはチェルネツアと顔を見合わせて頷くと、二人並んで前を見据え地底ピラミッドへ入った。リナアルも地底ピラミットの前に着くと扉の中を覗き、恐る恐る青い光へ入る。
セヘナイ、チェルネツア、リナアルはほぼ同時に円形の空間にたどり着く。ドーム状の天井には青白い光を放射する雲が浮かび、その熱を感じられない幽霊みたいな光が照らす空間の中心には青い葉を生やす神秘的な一本の木が生えていた。四方八方に広がる根は太く頑丈で、床を掘り返し、岩を掴み、泉の奥底まで伸びている。
三人が中心の木に歩み寄ると、壁から膨大な数の文字が鮮やかな赤色に空中へ投影され、それらは木の周りを回ると集まって立体的な人の形になった。アクアグロットが見せた象形文字と同じ文字から構成された人型は目も口も鼻もなく、背も人の倍はある。けれど三人とも人型を前にして不思議と恐怖は無く、自然と受け入れた。
人型が手を差し伸べると、三人の頭の中に声が響いた。その感覚を不思議とは感じるけれど、違和感はない。語り掛けられた未知の言語にチェルネツアは、「ごめんなさい。その言葉は分からないんです」と答えると、人型は首を傾げる。セヘナイですら人型の言葉に心当たりはなかったが、太陽と月があった頃に話されていた時代が被る古シルカ語で「貴方は何者ですか?」と聞いてみた。これでダメなら意思疎通は不可能かもしれないと焦るセヘナイ。人型は傾けた首を時間かけて元に戻す。
「異国ノ者ヨ。倉ヘノ鍵ヲ持ツ者ヨ。余ハ國ノ魔法ヲ管理スル者」
その瞬間セヘナイはしめたと小さくガッツポーズをする。
「初めてお会いします。私はアタ・セへナイ、魔道の歴史を研究をする者です」
「同胞デアッタカ。國モ滅ビモテナス術モナイガ、ユックリシテイカレルトヨイ」
人型は木の根に腰掛けた。セヘナイも同様に座り、緊張を指遊びで紛らわす。チェルネツアは会話が進行する様子に胸をなでおろし、心の声で「良かったですね」と語り掛けて、セヘナイと人型を温かく見守った。
リナアルは外からの気配に入口を振り返る。始めにキイガールが現れて、次にカトヴァアルが兵士達を連れて堂々と入ってきた。リナアルは足音を立てないよう気を遣ってキイガールとカトヴァアルの元へ行くと、小声で現状の説明をした。
一人の孤独に数千年身を置いていた人型は饒舌に喋り、セヘナイはそれをただただ聞いて相槌を打った。気の知れた友との飲み会のように他愛もない話がしばらくの間交わされる。そして人型がこの場所について触れた時、セヘナイはここしかないと思った。目が飛び出そうになる緊張を抑え込み、口を開く。
「魔道の倉には『黒き力』が保存されているのですよね」
人型はセヘナイに眼差しを向けると、立ち上がって手を天にかざした。天井を埋め尽くしていた雲が晴れて、天井に彫られた巨大な魔法陣が現れた。その模様はシルカ式の魔法陣に似ていて、だが他の追随を許さない程複雑で細密で繊細だった。セヘナイは「ああ」と声を漏らす。
「アア、ソノ名ハ数千年ノ時ガ経ッテモ残ッテイルノデスナ」
人型は天井を見上げ、その様子はセヘナイには哀愁漂って見える。
「地震ニ大地ノ陥没ニ、コノ國ハ、ソレハモウ災イノ多イ國デアッタ。故ニ我々ガ、コノ『黒キ力』ヲ設計シ、時間ヲ巻キ戻シ、災イノ傷ヲ癒シタ。人ノ命マデハ取リ戻セナカッタガ、ソレデモ人々ハ『黒キ力』ガナイ頃ヨリモ幸福ニナッタ」
「時を戻す術があったのです?」
「コレハ我々ノ血デアリ、生涯デアリ、生キ様デアリ、可愛イ可愛イ傑作ダッタ。シカシ時ヲ戻シ破壊ノ後カラ前ヘ行ケルナラ、時ヲ進メ風化ノ前カラ後へ行ク事モ出来タ。機転ノ利ク賢キ王ハソコニ気ガ付キ、敵対スル國ノ都デ実行ナサッタ」
「悲しいですね」
「悲シイ。悲シイ。実ニ悲シイ。ダガ悲シイト汝ガ想ウ事ガ我々ハ嬉シイ。悲シイト想ウ物ガ増エレバ、キット過チハ繰リ返サレナイ」
人型がセヘナイへ穏やかな感情を向けた。直後衝撃波が人型を襲い、首が砕け散る。首を失った人型はその場に倒れ、崩れていった。体を作っていった鮮やかな赤色の象形文字は赤黒く変色し、最後には溶けて消えた。
突然の最後にセヘナイが振り返る。15mは離れた入口、そこには指先をセヘナイに向ける解放軍の兵士が立っていた。この場にいた人全員の視線を集めたその兵士は帽子を脱ぎ捨て、黒髪を掴み引きずりおろす。下から現れた銀髪に、セヘナイとチェルネツアの心臓は縮こまる。ツィツェーレはニタリと笑った。
「この地の敵を排せば大魔術は皇帝陛下の物となるわ。我らが使命を全うしなさい」
ツィツェーレの掛け声に、この場にいた兵士30余名の内の五名が突然武器を構え解放軍を襲い始めた。不意を突かれた兵士達も咄嗟に抵抗したが、ツィツェーレの強力な魔法の前に悉く血祭りにされる。
セヘナイは足元の石を拾いツィツェーレへ全力で投げた。石を避けたツィツェーレは関心をセヘナイに向ける。
「私の相手をするんだよ馬鹿野郎! このクソがーー!」
セヘナイが腹の奥底から出した怒号だが、ツィツェーレの眉すら動かす力は無い。
「親衛隊がどうしてここにいる?」
「追撃戦で敵味方が入り乱れれば、紛れ込むのは簡単でしょう」
「勝たせたのか?」
「まさか、貴方達が勝った状況を利用しただけ。陸でも河でもよく勝ったわ。褒めてあげる」
ツィツェーレがセヘナイへ右腕をピンと伸ばし、微笑みかける。
「さて、お喋りは終わり。さよなら」
ツィツェーレが口を動かし、それを見計らってチェルネツアはセヘナイの腕を抱え、真横に飛び跳ねた。元々セヘナイがいた場所の岩は木端微塵に砕け散り、間一髪で二人は助かる。這って木の根の裏に隠れ、二人が手を繋ぐ。
「馬鹿はセへナイさんの方です。渡り合えるようになってから啖呵を切ってください」
「悪い、助かったよ」
セヘナイが陰から顔を出し、解放軍の兵士を蹴散らすツィツェーレの場所を確認する。その後頭部をチェルネツアが手刀でポクッと叩いた。
「人の話聞いてます?」
「来てるよ。私が合図したら、左側の岩陰の方向に飛び出すよ。岩陰に入るまでに右側にいるツィツェーレを攻撃。いいね」
「聞いてないですね。もう、分かりました」
二人が飛び出すと、セヘナイは周囲への影響など一切考えず即時発動させられる最高位の魔法を何発も叩きつけた。ツィツェーレはそれを対魔法障壁や物陰に逃げ全て回避し、すかさず反撃する。チェルネツアとセヘナイが隠れた岩も数秒で半分以上が砕け、堪らず逃げ出した。
強力な魔法のぶつけ合いを重ねていく中で、ツィツェーレはセヘナイの魔法の制御能力を過小評価していたと、過去の自分に舌打ちする。一人では一切の魔法が使えないと情報を掴んでいて、強力な魔法を適当に放っているだけだと考えていた。だが魔法を放つタイミングや頻度は、魔法を使う人の体感が無理ないタイミングを理解している人のそれだった。もし知識だけで魔法を使う感覚を理解しているのなら、それは人間業ではないとツィツェーレは思う。
セヘナイもまたツィツェーレの魔法に衝撃を受ける。一対一で戦っているだけに魔法強度は対等だが、半神半人のチェルネツアが持つ膨大な魔力量と対等な魔力を、ただの人間が放っているとなれば、それは二つとない魔法の才能そのものだからだ。
両者ともに戦場を駆け回り、相手の隙を見出して魔法を叩きつけた。セヘナイとチェルネツアにとって繋がれた手が命綱そのもので、もしこれが解けるようなことがあれば、直後にはツィツェーレに一瞬にして殺される。それが暗黙の了解としてあったからこそ、二人は互いの手を強く握り、事あるごとに目を合わせて阿吽の呼吸を維持し続けた。
常人にとっての圧倒的な魔法による命のやり取りは、同等の魔法を操れる者以外に取り付く島を与えない。何とか生き残ったリナアルやキイガールは、セヘナイとツィツェーレの戦いに巻き込まれないように距離を取り続ける事しかできなかった。キイガールは襲ってくる親衛隊とマスケットで撃ち合うか殴り合うかして戦い、リナアルはカトヴァアルの護衛に徹する。
誰もが目も前の戦いに必死で、魔法の力がこの閉鎖された空間で飽和しつつある事を感じ取れなかった。そして、飽和した魔力は眠る大魔術に命の火を灯す。魔法陣から火花が散り、安定して炎が吹き出すと、最後に紫色の強烈な閃光を放つ。ただならぬ魔法の気配をようやく感じたチェルネツアとツィツェーレが天井を見るが、手遅れだった。
地底ピラミッドの頂上部を突き破った紫の光は打ち上がり、地下空洞から地表を突き抜け空を昇り、地表からずっと高い高度で静止する。
誰もが大魔術の発動を理解した直後、上空に浮かぶ紫の光を中心にして影すら許さない光と魔力の空間が構築され球状に拡大していった。光と魔力の空間に物体が触れると即座に風化し、地表の建造物は表面から塵になっていき、森の草木は枯れ、動物は腐り土へ還る。
地底ピラミッドへ迫る黒き力に、その場にいた誰もが死を覚悟した。視界は全て紫色の光に包まれ、自分の体ですら視認できない。目を瞑っても暗闇は訪れない。
チェルネツアは繋がれた手を頼りにセヘナイを手繰り寄せ、抱きしめた。強く強く、もう目で見る事はできないセヘナイの存在を確かめるように抱きしめた。
「セへナイさん、今までありがとうございました。私、セへナイさんにあえて幸せでした」
頭上からジリジリと迫りくる魔力の気配に、いつ自分が消えていなくなるのか分からない恐怖で震える。チェルネツアはこのまま自分の気持ちをはっきり伝えてしまうか悩んだ。言えば自分はスッキリするかもしれないけれど、セへナイにその気がなければ複雑な思いを抱えさせたまま死んでしまうと考えたら言えなかった。それだったら、思いは秘めたまま死んだ方がいい。チェルネツアの気持ちはそちらへ傾き、口を閉じて、代わりにより強く抱きしめる。チェルネツアが自分の死を覚悟していく隣で、セヘナイは全く違う事を考えていた。
「チェル、私はまだ諦めていないよ!」
「まだ諦めてないって、もうどうしようも」
「あるよ。時が過剰に進まないよう、時を遡らせれば何とかなるかもしれない。あるいは同等の力なら打ち消せるかもしれない」
「大魔術と同等の魔法なんて……」
「苦しいだろうけど、二人で耐えれば、もしかすれば発動できるかもしれない。それとも、このまま一緒に死ぬ? チェルがもう苦しい思いをしたくないなら、それでもいい。でも我がままを言えば、私は生きていたいな」
「……二人で生きていきたいです」
「良かった。同じ気持ちで」
セヘナイは記憶に新しい魔法陣を頭にイメージし、念じた。直後チェルネツアの体を負荷が通過する。鈍く重い痛みのような、全身を通過する負荷に絶叫する。頭が真っ白になり、今自分が生きているか死んでいるかの判断すら分からなかった……。
チェルネツアが次に感じた感覚は、太陽の陽の温もり。彼女は青い葉の樹木の日陰で、そよ風に吹かれながら立ち尽くしていた。地底ピラミッドの天井も地表も無くなり、広い広い空が見えている。けれど地底ピラミッドの壁は原形を残していて、リナアルやキイガールの姿もあった。皆生きていたんだと嬉しくなって周囲を見回しセヘナイを探したが、姿が見えない。徐々に不安になっていき、有らぬ予感にふと足元を見た。
セヘナイはすぐ横に倒れていた。目、鼻、口、耳、頭にある穴という穴から血を流し、頭は血だまりに浸っていた。チェルネツアは口を手で塞ぎ、崩れ落ちる。震える右手を伸ばして、血まみれ顔に触れる。
そこへ駆けつけたリナアルは、動揺するチェルネツアの右手をどけてセヘナイを転がし仰向けに寝かせた。耳を口に近づけると、呼吸は無い。「あ、あ、あ、あの」などと碌に声も発せずセヘナイを揺するチェルネツア、その手が邪魔で鬱陶しかったのでリナアルはもう一度跳ね除ける。
「解放軍の野郎、俺に出来る事は?」
キイガールがリナアルの向かい側に片膝をつき、力ないセヘナイの顔を覗く。キイガールに悪気は無いのだが彼の影がセヘナイの顔を覆い、リナアルは一刻一刻を争うのに何故次から次へ邪魔が入るのかと苛立つ。
「明かりを遮らないようにそこ退いてください! でチェレネーツァさんも邪魔なので引き剥がしてください」
「お、おう。分かったよ」
もはや怒られるような立場にいないキイガールは年下から容赦なく怒鳴られ驚いて、リナアルの真剣な顔を見ながら退き、それからチェルネツアの両脇に後ろから手を入れセヘナイから引き離す。途端にチェルネツアは赤ん坊のように喚き暴れ出し、いくらキイガールとはいえ抑え込むのに苦労した。
リナアルは胸に両手を置き強く押し込んだ。するとセヘナイの口から血が吹き出し、リナアルは驚き手を離した。直後セヘナイが咳き込みさらに血を吐く。ゴホゴホと吐血するが、呼吸が戻り安定していった。
「セへナイ様、聞こえますか? リナアルです」
リナアルがセヘナイの口元に耳を近づけると、微かに「聞こえる」と返事があった。
「キイガアルさん、チェレネーツァさん、船まで運んでいただけますか? 私には解放軍の生き残りを助ける役割があります」
「分かった、やっておくよ」
キイガールはチェルネツアを離すと、セヘナイを抱えて来た道を走って戻る。チェルネツアはまだセヘナイが生きているか死んでいるかも把握していなかったが、脇目もふらずキイガールを追いかけた。
ひと段落ついたリナアルはマスケットを構え、親衛隊の生き残りに警戒しながら生存者を探した。カトヴァアルはもちろん他数名の同胞を助け、解放軍と親衛隊双方の死体の数を確認する。親衛隊の死体は四つしかなく数が合わなかったが、戦闘の後行方不明者が出る事は普通なので大して気にも留めなかった。
セヘナイの意識がはっきりとしてきた頃には、既に船室のベッドに寝かされていた。食事の後、カトヴァアルも立ち会いリナアルから事の顛末を全て聞かされた。襲って来た親衛隊は壊滅した事。大魔術の魔法陣が彫られていた天井は消滅し、誰かの物になる前に消滅してしまった事。白亜の都市は半壊してしまった事。解放軍は作戦を完遂したとして既にシェエリク河を下っている事。
「大魔術の魔法陣は親衛隊との戦いで崩壊した。この世界から消滅した」
不機嫌なカトヴァアルは嫌みたらしく言う。
「残念です」
ぼんやりとしたセヘナイが気の抜けた声で答えると、カトヴァアルは詰め寄って「何故我々は生きているのだ?」と聞き返した。だがセヘナイはゆっくりと首を横に振る。
「神が救ってくださったとしか言いようがありません」
カトヴァアルはさらに顔を詰め寄るが、遂に一言も発さず乱暴に扉を開けて部屋を出ていった。
入れ違いにキイガールが入ってくると、セヘナイはリナアルに退出をお願いした。二人だけになると両者ともに気まずい空気になり、無言のまましばらく時間が過ぎる。セヘナイは、逃げる事も出来ないし、こうなってしまえば遂に年貢の納め時が来たかと、これからシルカルブトに連れ戻される自分を想像した。
「なあ、戦友。話いいか」
キイガールから話しかけられ、セヘナイの鼓動は速くなる。
「なんだい?」
「謝りたい。大魔術なんて存在しないって前に言っただろ。けどよ、本当だった」
「いいんだ……。もう過去の事だよ」
再びキイガールは黙り、爪を噛む。静寂と緊張に耐えられず、セヘナイは最大の懸念を吐き出した。
「私は。このままシルカルブトへ帰されるのだろう」
セヘナイはキイガールから目をそらし、ひたすら答えを待った。けれど、なかなかキイガールは喋らず、爪を噛む。
「いいよ。大魔術の実在は確かめられた。一生分の夢は見たよ」
「その件だけどさ。大魔術は他にも存在するんだろ? ならば帝国も諦めず探すだろう。見つかればリレッツェネの脅威になる。ネルボウからの正式な依頼でもあれば、俺との男の約束でもある。この世の全ての大魔術を探し出すんだ、戦友」
思いもよらぬ言葉にセヘナイは耳を疑う。
「い、今なんて言った?」
「この世の全ての大魔術を探し出すんだ、戦友。リレッツェネに利益をもたらす範囲でな」
セヘナイはキイガールに抱きつき、右手で背中をバシバシ叩いた。
「最後の一言余計なんだよ。キイガール、ありがとう。もう、なんて言ったらいいか」
「おいおい、男が簡単に泣くじゃない。情けねえな」
「男だって泣くんだよ。分かった男の約束だ。なら私だって約束する。
「無理するなよ」
笑顔でワンワン泣きじゃくるセヘナイに苦言を呈しつつ、キイガールもこっそり涙を溜める。本心を言えば共にシルカルブトへ戻りたいと考えていた。けれど、自分がして欲しい事を相手に押し付けるばかりが友情ではないと思ったのだった。
「キイガールさん、そろそろ変わってくれませんか?」
こっそり部屋に入ったチェルネツアがベッドの隅に座り、セヘナイに分からないようにキイガールへハンカチを渡す。それを受け取ったキイガールは涙を拭ってハンカチを返し、セヘナイの背中をガシガシと擦ってから部屋を出て、扉を閉めた。
残ったセヘナイとチェルネツアはお互いを見合い、セヘナイがクスッと笑う。元々むず痒い気持ちを抱えて部屋に入ってきたチェルネツアは、それだけで顔が真っ赤になる。大魔術で死にかける直前のやり取りや行動が、後から思えば恥ずかしくて、セヘナイに触れて欲しくなたかったのだ。
「え、へ? 何かおかしいですか?」
「いいや。心配してたんだけど、私より元気そうでよかったなって」
「と、当然ですよ。私の方が体は頑丈なんです」
セヘナイは右手を持ち上げ、人差し指を伸ばす。
「私はまだ旅を続けられる事になった。知識は多少役には立つけど、結局チェルが一緒にいてくれないと何もできなかった。改めて、チェルは旅についてきてくれかな?」
チェルネツアも自分の人差し指をセヘナイの人差し指に重ね合わせる。
「私だって、力はありますけど、セへナイさんがいないと何もできないのは同じです。連れていってくれますか?」
二人は指を絡ませ、顔を綻ばせ合った。
十二月、雪が降る船の甲板にセヘナイとチェルネツアはいた。リレッツェネの貨物船に乗り込み、アグリア王国に逃亡すべくリザーツァを目指していた。
「私、雪、初めて見ます」
チェルネツアは掌を空に向けて、雪が手に降る様子に目を輝かせる。けれどセヘナイは悴む手を擦り、寒さに凍える。
「ああ、アグリアに行ったら嫌って程雪があるから安心して」
シェエリク河を久々に見るセヘナイは、二ヶ月前のこと思い出す。会戦も、船旅も、太陽と月の遺跡も、全てが嵐のように駆け抜けたひと月も、終わってしまえば全て夢のよう。
灰色の川と、灰色の空の境界を眺めため息をつくセヘナイに、チェルネツアは手の雪を払って捨てる。
「セへナイさん、残念でしたね。大魔術、結局崩壊して無くなってしまって」
強引に気持ちを合わせようとするチェルネツアにセヘナイは一冊の方を開いて見せる。左のページには豆粒サイズの文字で文章が隙間なく描き込まれ、右のページには魔法陣が描かれている。
「まさか、この魔法陣って!」
思わず本を手に取るチェルネツア。
「記憶が正しければ、それが『黒き力』だよ。本物は消えたけど、複製しておけば未来に残しておける」
「じゃあ、あの時って!」
「魔法陣の補助がないと頭がどうにかなりそうで良くないね。頭の中が燃えるかと思った」
セヘナイは本に積もった雪を払い、閉じてから表紙を撫でるとチェルネツアに握らせた。
「この本はチェルに預けたいんだ。私より、生き残る可能性はずっと高いだろうから」
チェルネツアは大魔術が記録された本に目を落とし、それからセヘナイの微笑む顔を見る。
「世界で私とセへナイさんだけが知る、秘密の本って事ですね」
「だね。頼まれてくれるかな?」
チェルネツアは本を抱きしめ、パッと明るくなった顔に満面の笑みを浮かべた。
「はい!」
チェルネツアと秘密の書 cooksonia @cooksonia
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