第18夜 スコッパーの神様
「いつも応援ありがとうございます!」
読書家の僕は、今日も欠かさず投稿小説サイトを巡る。
読み終えたら、感想を書いてTwitterへの紹介も怠らない。
いつの間にか僕は「スコッパーの神様」と呼ばれるようになった。
他人から見たらどんな駄作でも、ダイヤモンドの原石のように隠れた良さが分かる。
「スコッパーの神様か……」
不意に、ため息がこぼれた。
僕にも現れないかな?
自作品だけはウケが良くなかったからだ。
理由もなんとなく分かってはいたが、そこまで作風を変えるヤル気もない。
「はあ〜……」
ため息は止めどなくこぼれる。
だがある日、なんと僕の作品をTwitterに取り上げてレビューまでくださった方がいた。
驚いて名前を見ると……それは、自分の名前だった。
さらに驚いたことに、僕の名前を使った誰かは、過去すべての作品に感想とレビューをくださっていたのだ。
身内が僕のアカウントを使った……のではない。
両親はすでに他界して、一人暮らしをしていたからだ。
不審に思った僕は、運営にアカウントが乗っ取られていると連絡した。
後日、メールで返ってきた文面には「後ろを振り返るな」と一言だけ書かれていた。
どんな意味だろう?
訝しんでいると、ふと電話が掛かる。
それは亡くなった母の声だった。
「A……あなたはよくやっているわ。だからもう少し、後ろを振り返らずに頑張りなさい」
僕は絶句しながらも通話を止める事ができなかった。
僕の両親は、二年前に交通事故で死んでいる。
不思議に思い、住職に連絡して霊園に行ってみると、墓は確かにそこにあった。
しかし、墓碑名を見ると両親と僕の名前が刻まれてあった。
「おかしい……どうして僕の名前まであるんだ」
僕は確かに存在している。
でも、すでにこの世にはいない。
これは一体どうした事だろう?
そこである事に気づいた。
二年前、事故があったあの日、僕は確かに両親が運転する車内にいた。
前方からトラックが反対車線を突っ込んできて、そこで意識が途絶えたのだ。
ほどなくして、夢から醒めると、僕は机に突っ伏していた。
どうやら画面を点けっぱなしにして寝ていたらしい。
今日も僕は、スコッパーの神様と呼ばれながら、投稿小説サイトのページを楽しくめくっていた。
どんな駄作と呼ばれる作品でも、隠れた良さを見つけ出せる。
それが僕の個性だった。
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