第9夜 冷えた心臓

 僕はほどほどに上手くやるのが得意だ。



 テストの点はギリギリ及第点よりも上くらいを狙って、勉強の手を抜く。



 また、クラスの男子からやっかみを買わないように、マドンナではなくそこそこの容姿の相手と付き合う。



 運動競技も本気を出せば上位を狙えるのに、目立つのが嫌で4位当たりを狙う。



 そこそこの偏差値の大学を出て、適当な会社に就職してからは、定年までをクビにならない程度、真面目に働く。



 そんな日々がこれからも続くと思った。



 しかし、その日はいつもと違った。



 会社帰りにふと、人混みの中で視線を感じたのだ。



 目を凝らして見ると、気配の正体は、黒スーツに白皙の真っ赤な目をした死神のような男だった。



 いつも通りの帰りに、ただならぬ出来事が起きて額から冷や汗が流れる。



 男は僕の目を射抜くように見据えて、一瞬間を置いてから、酷薄な笑みを浮かべて告げた。



「お前は俺の同類だ」と。

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