第2話

クライトンベイホテルの1638号室の眺め相変わらずに素晴らしい

ここの景色が好きで松田は日本に来るとここのホテルを拠点にするのだ


「すんげ〜!東京ってこんなに綺麗な所あんだな!」

先程の女が窓際で目をキラキラさせていた。

「凄いでしょ?僕はこの景色が好きなんだ、椿ちゃん猛獣ちゃんにとりあえず飲み物出してあげてよ、僕はコーヒーで」

「はい、只今」

「アタシ別にいらない、何が入れられてるかわかんないから、てかアタシ猛獣じゃねぇし!この胡散臭いチャラ男!」

「なっ!僕はチャラくないよ!失礼だな!君は!」

「プッ!」

コーヒーを注いでる名城が我慢しきれず吹いていた

「じゃあ君はなんて呼べばいいの?僕君の名前知らないからさ」

「……音羽」

「ん?」

「広瀬 音羽」

「それが君の名前?」

「うん」

「改めまして、僕はピースカンパニー代表松田 啓介、んでそっちのメイドさんは名城 椿、あとは…あれ?弟村は?」

「あ!多分正面でお車の用意を、連絡するの忘れてました」

「あと弟村って無口な男がいるんだけどこれで自己紹介は終わったね、さて少しは落ち着いたかい?」

言い終わると同時に名城がコーヒーと未開封のペットボトルのミルクティーを持ってきた

「はい、「チャラ男社長」のブラックコーヒーです。広瀬さんはこちらが良いかと、もちろん手をつけなくても結構ですよ。」

「社長だけでいいから、そこは」

「はい、チャラ男さん。弟村さんに連絡しますね」

「さて、音羽ちゃんは僕に何を話したかったのかな?それとも何か欲しいのかい?」

「馴れ馴れしく呼ぶな!このチャラ男!」

音羽はペットボトルを叩きつけながら言った。

「ふー、音羽ちゃんね?ホントなら僕は大切な用事があったんだよ、でもね?君がいきなり僕のこのホテルまできたから予定をキャンセルして君に時間を取ったんだ。君が子供だろうが関係ない、ハッキリ言って君は僕の時間を無用に奪ってる、大人がみんな君の訴えに耳を貸すと思ったら大間違いだ。老若男女問わず人の時間を奪うってのは大変傲慢だよ」

「なんだよ!じゃあ帰るよ!」

「帰るのね、お帰りはあちらからで、それに君の名前もわかったから僕は君に慰謝料請求させてもらう。時間を奪われて僕は酷く傷ついた」

「汚ぇ野郎だな…どいつもこいつも…」

「僕はお風呂ちゃんと入ってますー!汚くありません!誹謗中傷もつけ加えよ」

名城が割って入った

「広瀬さん、これはこの人なりの引き止め方なのです、この人本当に無用ならこうやって時間を取りません。それに貴方に危害を加えるような事は絶対しない。信用しろとは言わないけど安心して、だから落ち着いてゆっくり話をして」

そんな時1638号室のドアが開いた

「社長、名城さん!予定変わったら直ぐに教えて…ん?この女性は?」

音羽が身構えた

「誰こいつ!ヤクザか!」

「アハハハハハハハ!弟村がヤクザかぁ!こりゃ傑作、確かに黒スーツにサングラスだもんね、そう見えるか。こりゃおかしい」

「広瀬さん、この人は私たちの同僚の弟村さん、この人も貴方に危害を加えたり酷い事を言ったりしないから安心して」

名城が膝をつき音羽と目線を合わせ手を包むように握った

「悪かったよ…ごめんなさい」

「よし、じゃあ解決!偉いぞ!謝れて!」

「謝るなんて普通じゃない?」

「大人になるとねぇその「普通」ができなくなるんだよ、さっさと謝ってしまえば済む話を言い訳したり隠したりして見栄やプライド優先させるんだ、それに比べて音羽ちゃんはちゃんと謝れた、これは凄い偉いよ、僕は音羽ちゃんを評価する」

「あ…ありがとう…」

「それで?僕に話をしたかった事て何かな?矢継ぎ早に話さなくてもいいからゆっくり落ち着いて話そう、時間はたっぷりある、お腹空いたらルームサービスを使うといい」

音羽が黙り騒がしかった部屋が静かだったが口を開いたのは名城だった

「もしかして男の人には話せない事?」

「ううん…どこから話していいか…」

「よし、じゃあ僕が質問するから答えていって、もちろん答えたく無いことは答えなくていいから」

「うん…」

「あの日君はあそこで何をしてたのかな?」

「ライズの活動の手伝いしてた」

「ライズ?あそこの活動団体の名前?」

「うん、ライズ」

「ライズってのは何をしてる所なの?」

「アタシみたいに家から逃げてきた女の子達の話を聞いたり匿っまたりしてくれた」

「君はそこに匿わてたの?」

「匿われてたというか…なんというか…」

「ん?」

「その時はとにかく逃げたい一心で何も考えられなかった…特に疑問持たずに2週間くらいたった時かな、役所につれてかれて何かのお金の申請をさせられたんだ」

「役所に行った時はライズの人と行ったのかな?」

「うん、三山さんとあとなんか弁護士?もいた気がする」

「三山さんって誰?」

「ライズの代表だよ」

「ちょっと見えてきたぞ…もしかしてその申請をした後通帳や身分証を取られなかった?」

「そう、なんで分かったの?!」

「悪いやつが考えそうだからだよ、その前に色々名前を書かされなかった?」

「うん…アタシが馬鹿過ぎたんだ…」

「貧困ビジネスか…」

弟村も口を開いた

「いいかい?過ぎてしまった事は仕方ないが自分の名前を簡単に書いちゃダメだ」

「うん…」

「弟村、それは後で話そう、まずは音羽ちゃんだ。それで?」

「三山さんに衣食住は心配しなくていいけどタダでは難しいからこのお金は私達で管理するねって言われてなんやかんやのお金を引かれて月2万がアタシの自由にできる額だった、2万なんてスマホ代払ったら終わりだよ」

「うんうん、それはそう、自分で管理するから返せって言えなかった?」

「三山さんに言ったら貴方達が自立出来るよう貯めているのよ?って言われてじゃあここを出て行くって言ったら恩知らず!ってみんなから言われて…」

音羽の目には涙か溜まりだした

「音羽ちゃん、泣きたい気持ちは分かるけど話をしよう、無理なら時間開けようか?」

「ううん…悔しかったからその足でライズの寮から出たんだ、でも家には帰れないし身分証がないアタシが働けるわけないからさ、やれる仕事は限られるよね…」

「そこは話さなくていい、音羽ちゃんさ?君もしかしてまだ20になってない?」

「19…です」

「それで?新しい仕事してからどうなった?」

「とりあえず汚ったない部屋だけど寮も用意してくれて働いてたらどういう訳かアタシの居場所探されてね、大勢でやってきて連れ戻さたんだ、アタシは抵抗したんだけど厄介払いされた、ライズの寮に連れ戻されてみんなからめちゃくちゃに叱られたよ、アタシん家親父が再婚でさ、全然ソリが合わなくて家でも叱られてここでも叱られてもう慣れちゃったよね」

「連れ戻されて手伝いをさせられたと」

「うん…」

「あとさっきエレベーターから降りた人知ってる?」

「…知らない…それとこれはライズでも噂なんだけどどうやら合宿ってのがあるみたいでその合宿を終えると自由になれるって聞いた、ライズで仲が良かった子がいたんだけど合宿行ったら家に帰ったみたい、でも連絡つかないんだよね、それも心配で…」

「その子はいつ合宿に行ったの?あと名前は?」

「その子は楓って名乗ってた、合宿は最近のだとひと月前のに楓は参加してたよ」

「合宿の場所は知ってる?」

「沖縄とか福岡とか…だって聞いた」

「よーし…なんとなーくだけど分かってきたよ、だからあの女は若年女性を狙ったんだな」

「男は金にならないし世間の関心も得られない、胸糞悪い話ですね」

弟村は怒りをあらわにした

「どういうこと?!」

音羽が詰め寄った

「まだ現段階では僕の憶測だから話せない、よし、もう話は聞けた、これが最後の質問、1番僕が知りたい事なんだけどなんで僕の所に来たの?」

「…三山さんに物怖じしないで喋れる男をアタシは見た事無かった…あの人は文句があればいつでも来いなんて言わせない」

「さっきから出てる三山って人は音羽ちゃんからみてそんなに怖いの?」

「怖いっていうか…反論すると凄く怒るんだよ、それに三山さんの取り巻きもいるから言い返すのに疲れたんだ…」

「OK!君が僕を頼ったのは正しい選択、音羽ちゃんはしばらくここにいていい、流石に部屋を別々にするのはダメ」

「なんで!」

「そのうち分かるよ、とにかく君が1人で行動するのはダメ、ちょっと不便かもしれないけどこの部屋から出ちゃだめだ」

「それじゃなんにも変わらないじゃん!」

「大違いだよ、行動は制限するけど僕は君の自由は制限しない、自由と責任はセットだから制約が嫌なら好きにするといいよ、それにここにいたら名城も弟村もいる、ご飯だって好きな物食べていい、もちろんスマホだって自由に使っていい、でもさすがに僕の居場所をSNSとかで晒さないでね、椿ちゃんこれからは音羽ちゃんの面倒も見てあげてね、弟村君は音羽ちゃんが勝手に出歩かないように」

「社長…お言葉ですが私も名城さんも社長の護衛がありますので別々には…」

弟村の指摘は正論

「あ…じゃあ音羽ちゃんは今日からピースカンパニーの新人って事で僕と一緒に行動しよ、はい決定!」

「はぁ?なんで…」

名城が首を横に振りながら

「ごめんなさい広瀬さん、この人一旦言い出したらこうなの、でも大丈夫、この人は人をイラつかせたり怒らせたりする天才だけど約束は破らないから」

「わかったよ……これからよろしくお願いします」

「お?意外だね、こちらこそよろしく!広瀬 音羽ちゃん」

そういい2人は握手をした

「話したらお腹空いた」

「好きなもの頼んでいいよ、椿ちゃんメニュー渡して」

「…ねぇ…桁が凄いんだけど…」

「そう?よくわかんないや、アハハ。若い子が遠慮なんてしなくていいから好きな物食べなよ」

「社長にすっぽかされたおかげで俺も食事まだなんです」

「社長、私も実はさっき何も食べてなくて、私の分いいですか?」

「いーよいーよ、僕も足りないから寿司でも頼むか、みんなでご飯にしよ!」


「グスン…グスン…うわぁーーー」

音羽が急に泣き出した

「なんだよ!どうした!急に!君情緒不安定過ぎない?」

「だって…だって…みんなアタシの事ちゃんと見てくれ無かった…話も聞いてくれなかった…お前なんかとか貴方なんかとか…なのにチャラ男は…うわぁーーーん」

「チャラ男て…もう好きに呼んでいいよ、弟村、ちょっと僕について来て」

「えっ」と顔した弟村

「ここは椿ちゃん任せる…」

名城が肩に手を載せろ的なジェスチャーをした

場が悪そうに松田は音羽の肩を叩いた

「好きなだけ泣きな、君はまだ子供、沢山甘えていいんだ、ここにいる間は強がらないでいいから」

音羽の鳴き声は止まらなかった



その頃ホテルの正面に車がついたがまだそれを松田達は知らない…

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