第33話 自分の居場所があるはず

「大師、無間地獄に落ちるのは誰ですか?」


「人は感情を持って生まれてくる、感情があるから人は感情に苦しめられるはずだ」


「でも、お仏さまは、『世界は無常であり、感情があるのは衆生』だとも言ったわ」


「衆生を知るのは無常の場から知り、感情がある方が衆生を知ることができる。賀施主、今の君はどこにおられているか?」。


「大師、俺がここの敷居に座っているのを見ませんでしたか?」


山奥にある古い寺では、観光客は少なく、俺は詮霊寺センレイジ地蔵堂の老僧と一緒に外の敷居に座って、お互い話をしている。


山の気温はとても涼しく、新鮮な空気を吸い込むのがとても心地よく、のんびりと筋肉や骨を伸ばしていると、老僧は微笑みながら私を見てこう言いました。


「賀施主、もう帰依できるか?」


私はハッと顔を上げて彼を見つめた。


この話の意味は、俺が仏様に戒律を守れるかどうかを問うことです。


仏教には戒律を解脱とも言うという言葉があり、戒律をしっかり守れば自分も解脱でき、そこから菩薩道に入ることができます。


はっきり言えば、この老僧は俺を弟子にして、一緒に僧侶になれるかと誘った!


そんなつもりがない俺が慌てて手を振りながら断った。


「まさか、全くですが、大師、俺の六感は穢れに満ちている、この世の感情をまだ、まだ経験が足りない」


老僧はそれを聞いても腹が立たず、ただぎこちなく微笑んで独り言を言った。

「なるほど、まだ頼むのが早すぎたようだ」


「ヘヘ、そうね!俺もう31だし、たとえ過去に仏様と縁があったとしても、とっくの昔に禿げてしまうでしょう。その考えは手放してください。」


そう言い残したのですが、僧侶は俺には見向きもせず、仏堂の廊下の向こう側を見つめ、その視線を追うと、目の前に女性の姿が現れました。


心の中でため息をつきましたが、顔は穏やかで、老僧は立ち上がり、私たちは手を合わせて敬礼しました。


そして、彼は堂に入り、菩薩に向かって歩きました。


そして、ホールの外にいた俺は、その女性に向かって歩きました。


「本当に来たの?どうしたの、そんなに心配して、わざわざ山まで走って来るの?」


歩きながら話していて、温涼のところに来ると、彼女の顔は疲労でいっぱいで、胸は上下し、大きく喘いでいたので、山に登っているのでしょう。


それでも、俺が歩いてきたときから彼女の視線が俺の顔を見つめることに気づきました。


彼女は静かにそこに立って、ぼんやりと俺を見ていたので、俺が顔に触れて言いました。


「どうしたの?俺の顔に花が咲いていたのか?」


彼女は首を振って「なぜここにしたの?」と尋ねました。


それを聞いた俺は笑顔でこう言いました。


「最近ダイエットしようと思っていたさ、ちょっとコントロールが足りなくて、しばらく精進料理を食べに山に来ました。ちょうどいいタイミングで来たね、ここの料理は、体型を維持必要のある、芸能人に最適だし、一緒に試しさない?」


「……うん」


温涼は一瞬ためらいながらも優しく答え、俺の前では決して拒む様子はなかった。


ここは話す場所ではないようで、私たちは詮霊寺センレイジの観光客のように並んで歩きました。


その間、お互いに黙りながら進めたが、彼女が何か言いたいことがあるに違いないとわかっている。


しばらくすると山裏側にある八角亭にで、俺は手すりにもたれかかり、上から山の景色を眺め、ポケットからタバコを取り出し、火をつけ、口にくわえて深呼吸した。


「彼は……消えた」


その背後で、温涼がついに声をかけられた。


「消えた?誰か?」


「……賀天然だ」

「はあ!?俺はここにいるじゃん」


俺は煙を吐き出し、彼女の方を振り返った。


「だから……もう一人のことを言っているの……」


温涼は私を見つめたが、これを言うのは少し難しかった。


私はハッと気づいたふりをして、「ああ、彼ね……わかっている、感じている」と言いました。


「感じられるの?」


「そうだね、小説でよくある設定のように、代わり身が消えたと全く同じような気がするよ」


これを聞いた温涼は困惑した。彼女は頭がいいし、俺は解釈などしていない、きっと彼女ならわかるはずだ。


「嫌いなの?」


この話はきっと彼にも聞いたことがあると分かっている。


「自分のことが嫌いと言ってほしいね」。


それを訂正すると、温涼の表情が暗くなった。


燃えているタバコの炎の跡をじっと見つめながらタバコを目にかざすと、口と鼻から煙がゆっくりと排出されました。


「実は……嫌いじゃない、分けて言うと、彼は俺より度胸があり、後悔が少なく、分かっていることが少ないが、俺よりも信じていることが多いし、むしろ俺のことですらよく演技してくれた」


「嫌いというと嘘で、嫉妬するのは本当だけど、この嫉妬のおかげで、彼に少しの憎しみを持ち出すことができなく、俺でさ、結構矛盾しているよね?」


俺は自分の感情を分析し、話しているうちに少し放心状態にさえなった、この状態を温涼の前で滅多に見せないが、この世界では彼女にしか分からないと信じている。


この小さな八角亭ではしばらく沈黙となった。


「賀天然はこの世界に一人しか残らない。少年の存在はただ一つ証明できる。何度もやり直しでも同じ結末があるということ。つまり、彼は自分の消滅と引き換えに、正しい未来を…」


ゆっくりと真実を明らかにすると、蘇った記憶が再び頭の中を駆け巡った。


「今……何を言っているの?」これを聞いた温涼は戸惑いながら聞いた。


「物語はとても簡単で、実際は13年前の9月に別の物語が起った。俺は生まれ変わった女の子に会った。彼女はあのいたずらを甘い夢に変えてくれた」


「私たちは恋に落ちたが、彼女は消えてしまった。彼女によって変えられた俺が残された。これはあの小説には書かれていなかった事だ……」


「その後の話は君も知っているが、俺は曹愛青と一緒になった。しかし、結末はここで終わりではなく、俺が未来へタイムスリップとなり、再び消え去った彼女に会った」


「彼女に何の要因で生まれ変わったのを知らないけど、彼女が過去に戻るために大きな代償を払ったのは知っているし、俺が彼女のことを心から愛しく、もう一度生まれ変わってほしくなくなった…」


「ただ、タイムスリップして、いつ消えてしまうかもしれない俺が、この白黒の世界で何ができるだろうか?考えた末、ついに思いついた計画があった。そう、全てをやり直したい、もう一人の俺になれば、彼女の悲劇を止められる」


「俺は再び13年前の9月に戻った。そして、すべてを忘れた。すべての不幸が再び俺に起こり始め、彼女への愛も忘れた。心に残ったのは、大きな屈辱だけで...この憎しみのせいで徐々に悪意を持ち、憤慨し、不本意になり、最終的に自分でも最も嫌いな賀天然になってしまった」


それを言って、手に持っていたタバコが最後まで燃え尽きて、地面に投げて強く踏み鳴らした。


「何年にもわたって、彼女の罪悪感を利用し、少しずつ彼女を好きになってもらった。復讐の喜びで、しばらく俺の目が見えなくなった」


「ところで、ある日記憶が突然目覚め思い出した。俺は彼女のことが…大好きだったのに、…今すぐ、全部を伝えたかったのに、蘇った記憶が漠然と不安で……」


「それから間もなく、少年の俺が再びこの世界にやって来た。前と同じように、彼はすべてを考えた後、「自分自身」も感動した計画を受け入れ、決然として再び火の穴に飛び込んだ」


「そして、彼は、今、あなたの前に立っている」


苦労してすべてを終えた俺の目は、すでに少し渋くなっていた。


温涼は聞いた話に魅了され、ゆっくりと歩み寄って彼を抱きしめた。


彼女の身体はまだ柔らかすぎて、思わず背中に手を回して、この時間が長く続けばいいのにと貪欲に思っているのに、耳元でこんな言葉が聞こえてきて――。


「でも…この計画は…失敗したと分かったでしょう?」


「……」


「少年の自分を見た瞬間から、あるいは記憶が目覚めた瞬間から、自分が失敗することはわかっていた…あの子がそのいたずらを甘い夢に変えていなかったら、彼は現れなかったでしょう、君も記憶を目覚められないでしょう?」


彼女がこれほど早くすべてを理解し、要点を絞ったことに驚きました。腕の中で彼女は頭を上げて私を見つめました。


彼女の目にはキラキラと水が入っているように見え、彼女の表情は豊かで遺憾ながらお詫び申し上げたように。


「天然...ごめんなさい...本当にごめんなさい...若くて無知だった私があなたにあの苦しみを与えたのを思い出すたびに、恥ずかしくてしょうがなかった... 何年にもわたって何度かより良いチャンスを見逃しているのを見て、心が苦しく...私を騙すために近づいたのはわかっている……しかし、そうすれば、あなたはより楽な生活を送られるのなら……騙しでも良い、それが私の償うべきだ……」


彼女は涙がこぼれないように一生懸命に微笑んで、すぐに目をそらした。


「知っているか、あの少年を見た時から、きっと君だろうとわかったの。君らを二人だと思ったこともなかった……だって……君に足りないものは、すべて私が償うべきだもの……」


温涼がこの話し終えた後、心の中で勇気を振り絞ったようで、涙をぬぐい、その目はこの緑の山のように澄んでいて、その中に隠されていたものは愛情に満ちていました。


彼女は顔を上げ、微笑んでこうつぶやいた。


「天然……私が好きなのは、すべての君だよ……」


すべての俺……


愛も憎しみも満ちたり消えたりするし、どちらもお互いに借りがあると思って、自分を悪者にしようと頑張った。


全力で時間軸を正しい軌道に戻し、目覚めてからの思い出をすべて心の中に埋めた。霧の中に隠れ、彼女を愛しているという痕跡を慎重に遠ざけました。


それでも、霧が晴れてボロボロの俺の顔になっても、彼女はこう言った。


すべての俺が好きなんで!


静かに腕の中で彼女の体温を感じながら、そっと言いました。


スズミ、機会があれば、改めましょうか?でも、このような始まりはしたくない」


「天……天然?」


温涼が驚いて俺を見た!


俺の手は徐々に彼女の体を通り抜け、ついに、彼女を抱き締めることができなくなり、体はゆっくりと透明になってしまった!


どうやら、俺の時間がここまでのようだ。


愛青のほうは決断があったようだ。


遅ればせながらの陽光では枯れた花は救えない、だから彼女が救えるのは自分自身だけだ。


この「俺」は愛青にあまりにも借りが多く、彼女には関係がないのに、今の俺が消え去るのは彼女が過去に戻り、歴史を変えていることを意味している。


この世界には、最初から最後まで、賀天然は一人しかいない。


温涼は、必死で人形を掴もうとする泣き叫ぶ女の子のように、必死で俺を抱きしめようとして、何度も試みたが無駄だった。


俺が微笑んで彼女を見つめると、彼女は泣きながら俺を見つめました。


たくさんのことを言っているようだが、俺にはもう何も聞こえなくなった!


俺がいなくなった後、彼女がどのように生きるのか、愛青がどのように生きるのか、そしてどのような賀天然がこの世に現れるのかは知らない。


でも、それが新たな始まりを意味することはわかっている。


そう、この二人の女性、一人は高貴な不死鳥のような女性、もう一人は明るい月の光のような女性です。


この世の中で、不死鳥を育てる人を見た人がいるでしょうか?


月の光を溜められるのは他に誰だ?


流星には、行き帰りする方向があり、


俺には当然、自分の居場所があるはず。


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