第8話 6日後①

デート当日の朝、僕は凛花さんをエントランスで待っていた。

「早く着きすぎたかも…」

そう、僕はなんと待ち合わせの1時間前に着いてしまったのである。別に自分の家のエントランスに集合なのだから、もう少し遅くても良かったのだが…

「やっぱり楽しみだったからなぁ」

そう、実は僕、楽しみ過ぎて居ても立っても居られなくなって早めに待ち合わせ場所にきたのである。

それから30分後…

「あ!透君!ごめんね、待った?」

「ううん、僕が今日を楽しみにし過ぎて早くき過ぎただけだよ」

「そうなんだ!むふふー。透君が楽しみにしてくれて居たなんて嬉しいなぁー」

「うっ…」

まずい、その笑顔が眩しすぎる…

「ほ、ほら、そんなことより、どうする?本来の集合時間よりもまだ30分も早いけど…もう行く?」

「うーん。そうだね、そうしよ!映画が始まるまでは、ショッピングモール内を散策すれば良いだけだしね!」

「じゃあ、もう行こうか!」

映画館のあるショッピングモールは、ここから数駅離れた場所にある。その為、電車に乗る事になったのだが…

「あちゃー」

「はぁ…」

なんと、電車が事故によって20分も遅れるそうなのだ。それだと結局、当初の予定通りの時刻に向こうに着いてしまうのだ。まぁここは、間に合うだけ、良しとしよう。それに、事故だなんて心配だしね。

「まぁ、電車がくるまで、もう少し話してよっか」

「それもそうだね」

その後、僕らは電車が来るまで楽しく雑談を繰り広げていた。こんな時間でも、凛花さんと一緒だと、楽しいのだから不思議だ。

そしてやがて、電車がやって来た。

そして、またしても話すこと十数分。ようやく映画館のあるショッピングモールについた。

「楽しみだな♪」

彼女は先程からご機嫌モードである。

そして、僕は、スマホを受付で見せると、チケットがもらえ、僕らは中に入ることができた。

「これが…カップルシート」

僕は戦慄していた。その席は、席の区切りがなく、密着しようと思えばいくらでもできるような程の物で、思春期男子からすると、非常に心臓に悪い。でもここは公共の場所だから、凛花さんもそんなにくっついて来ないだろうと、高を括っていたら、映画が始まると、全身をコチラに預けてきて、腕にしがみ付いていた。

「あの…凛花さん?」

「なぁに?透君」

「ちょっと近過ぎやしませんか?」

「え、嫌だった?ならごめんね、、、」

そう言って、凛花さんは露骨に落ち込んだ様子で距離を取ろうとした。

「い、いや、別に嫌とかじゃ無くて…恥ずかしかっただけだから。」

「ふふーん。ならもっと密着していいよね?」

そう言って、凛花さんは先程よりももっと密着して来た。

僕は諦めて、映画の内容に集中する事にした。

映画の内容は、学校一の美少女が平凡な男の子に告白をして、付き合い始めたのだが、その彼女の方が重い病気にかかってしまって、亡くなってしまい、彼氏が彼女の死を必死に乗り越えようと前向きに努力をしていく。という、悲しくも前向きな気持ちになれる良い作品だった。

ちなみに、これを見た彼女が号泣していたのは言うまでもない。

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