第20話 これにて一件落着
轟音とともに迅雷が走り、それはフェンリルの体を黒コゲにした。
まだ油断はできない。
「それ、貸して! ジナイダ!!」
オーディンがジェロムのハルバードをぶん取り、ジナイダはそのハルバードに
「グッド・タイミングね。今まで泣いてたくせにやってくれるわ。まったく」
「あは……ありがと。でも、今の雷……誰かの魔法じゃありません?」
「ふははははは……!! そのとおりぃ~っ!!」
威勢のいい(!?)声の主はまさしくトールだった。トールは何やら仲間を三人連れている。
「な……何だよ~、遅いじゃね~かトールさんよォ~! しっかし、すげ~魔法だな」
「俺様が使ったのさ。俺様ほどの経験を積んだ海賊なら、海に現れるモンスターに効く電撃魔法は普通使えるもんだよ。……? ジェロムさん、そちらの娘さんは?」
「ジナイダ。ロキの支配から解放してやったぜ。そんで、こっちが……オーディン?」
「オーディンは私の先生よ。私はリディア・オリビア・ディーン。先生はね……」
「バカヤロー!! こっちを手伝え!!」
そうそう、ヘイムダルがフェイと戦っているのをすっかり忘れていたのだった。
「あ……姐さん!!」
「そうか、あいつがそうだな! 行くぞ、トム、ハリー!!」
「よ~し、やれえ! ディック!!」
トールの連れて来た三人が急に飛び出して行った。
「む……貴様らは……? ぐああっ!?」
ヘイムダルを敵と勘違いしたらしい。トム、ディック、ハリーは後ろからヘイムダルに襲いかかり、数秒でぶちのめした。
「ちがう! それは味方だ!」
ジェロムが叫んだが、三人は気がつく前にフェイに一秒で
「バカな奴らだねェ。次はトール、あんただよ!」
「……!! こうなればもう仕方ない! 7人も見ている前で恥ずかしいが……」
フェイが猛スピードで向かって来る。トールはそれを迎えうつようにして構え……
「姐さんんんんん……好きだあああああァ……!!」
と言って、向かって来たフェイを力強く抱きしめた。
トールの涙を見て、フェイの表情が目が覚めたように変わる。そして額のサークレットは音をたてて崩れた……。
「姐さん……」
「トール……」
抱きしめ合う二人。トールの顔に喜びが、フェイの顔に怒りが浮かぶ。
あれ!?
「……いきなり何をベアハッグなんぞやっとるんじゃあああァッ!!!」
フェイの拳……トールは笑みを浮かべたまま気絶……巨体が舞う……巻き添えを食ったジェロムがトールの下敷きに……その光景を目にしたジナイダも恐怖のあまり気絶……
……総勢7名意識不明……フェイいわく……
「やっと助かったよ」
* * *
リディア・オリビア・ディーン
Lydia Olivia Dean
16歳/女/槍闘士
162cm/右利き
特技:槍術
趣味:トレーニング
好きな食べ物:ピーマン
フェイ・ド・コルターサル
Faye de Cortasar
29歳/女/海賊
174cm/左利き
特技:キックボクシング
趣味:タロット占い
好きな食べ物:スルメ
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