第21話 俺も……

 トム、ディック、ハリーが次々と目を覚まして起き上がる。


「おお、姐さん! 御無事でしたか!」


「3バカトリオかい。さっきは悪かったね、ロキってのに操られててね~」


「ああ~、トールさんの言ったことがやっとわかりましたよ」


「トールか……あのスケベが……」


 何事か……その時突然、黒い刃がフェイの手をかすめた。

 ロキだった。


「このまますませてたまるか!!」


 刃は徐々に人の形に見えてきた。ヘイムダルがスッと立ち上がった。


「フッ……オレを消したいか、ロキ」


「あたり前だ! 貴様は……98年前だったか? 神殿を襲ったオレの人格を三つの宝石カーバンクルに封じたのは……知っているな。あの後、オレの体には憎悪から『スルト』という人格が現れて……」


「スルトは再び神殿を襲い、聖杯『グラール』を奪った。貴様の『ロキ』の人格を封じるのに能力ちからを使い果たしたオレはスルトに太刀打ちできなかった」


「ヘイムダル……あなた……まさか聖騎士パラディン!?」


 オーディン……もといリディアが言った。ロキがそれに答える。


「そうだ。こいつは聖杯グラールを守るパラディンさ。ギムレーの国の神殿で女教皇に仕える正義の騎士らしいがな。こいつはエルフなんでね、もう4代も仕えている……」


「それ以上言うなと言っても無駄らしいな。ならばオレも腹を決めよう」


 ヘイムダルはロキをにらみつけたまま、後ろへ飛んだ。


「起きろ、ジェロム! よく見ておけ!!」


 ジェロムがピクッとして目を覚ました。続いてトールとジナイダも起きる。


「皆よ、聞け! 私の正体を今、明かそう。一部の者はもう承知していよう。私はグラールの聖杯を守る……はずであったパラディン、ヘイムダルだ!


正体を知られたパラディンはこの世から去らなければならない。しかしこのまま去っては私以外、ロキのような実体を持たぬ者を倒せる者がいなくなる。よってジェロム! お前にこの技を見せよう! お前ならいずれわかるであろう!!」


「……俺にか……!?」


「技だと!? パラディンに光の魔法……白魔法以外の技があるのか!?」


「ロキ……パラディンの存在を知っているとは六魔導より知識があったな。だが『内なる光』を知らなかったのは勉強不足だった……」


「お……おい……それでオレを消すってのか……!? やめてくれよ……もう少し……あと一度でいいから人間に……お願いだ……魂まで消すのだけは……」


「見苦しいぞ、ロキ。しかしオレは貴様の魂まで消すとは言っていない。しばらく地獄でおとなしくしていてもらうだけだ。よ~く反省して今度は坊さんにでも生まれ変わるんだな。では……そろそろ……」


 ロキが後ずさり……ヘイムダルはさらに歩み寄り……ちょうど剣の間合いに入った時……


「ᛚᚮᛎᛅ ᛁᛋ ᛉᛅ……ᛚᚮᛎᛅ ᛁᛋ ᛣᚮᚢ……ᛚᚮᛎᛅ ᛁᛋ ᛆᛚᛚ……よく見ていろ、ジェロム。これがオレのᛁᚾᚾᛅᚱ-ᛚᛁᚷᚼᛏ……だ……!!」

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