第18話 弱い娘
「……仲間内でケンカなんかしてるヒマはないよ!」
「そうだった! ジェロム、これ使って!」
ジェロムがオーディンから渡されたのはハルバードだった。
「俺、槍なんて使ったことねーよ!」
「矛よ!!」
「わかりましたよ!」
三人は一斉にフェンリルを攻撃した。
にもかかわらず、ロキとフェイは何もしようとしない。
ヘイムダルが言う。
「気をつけろ、フェンリルはシェイプチェンジャーだ!」
そう聞いてジェロムとオーディンは後ろへ下がる。
死にかけているはずのフェンリルが平然とした顔をして起き上がった。
「よくもやってくれたね。痛かったよ。……殺してやる!」
フェンリルの目が銀色に変わる。やがてその姿は銀色の巨大な狼となった。
「ど……どうやって戦えばいい……ヘイムダル?」
「全力で戦わないと……三人とも死ぬぞ」
ジェロムの顔から血の気が引いた。余裕なのはオーディンと……敵だけ。
「まず……宝石を破壊しろ!!」
ヘイムダルの剣がロキをとらえた。
しかし次の瞬間、尋常じゃないスピードで、ロキのワンドが剣を払った。ヘイムダルは驚く間もなく正面から
そして、次に狙われたのはジェロム。ロキはジェロムが矛を振るえない至近距離にいた。
(しまった!! このスピード……
ジェロムがそう思った矢先、すごい勢いでロキが倒れかかって来た。どうやら、オーディンがロキを後ろから攻撃したらしい。
ジェロムは気絶しているロキの頭のティアラを外し、宝石を地面に叩きつけて破壊した。
一方、オーディンの方はフェンリルと戦っているが、相手の方が大きいのにもかかわらずかなり素早い。攻撃はまだ一発も当たっていない。
毒をうけたヘイムダルも自然に回復しているらしく、フェイの攻撃もかろうじて防いでいる。
「……助かった……」
突然、ロキ……いや、ロキに支配されていた女魔導師が目を覚ました。
「あの……記憶とかはあるんですか?」
「はい。あなたはジェロムさんですね。私、ジナイダ・レオンチェフです。さっきはいろいろ魔法使ったりして困らせてすいませんでした」
「話は後でいいから……あいつら、どうにかして!」
「わかりました」
ジナイダが使ったのはアイス・ストームの魔法だった。無数の氷のつぶてがフェンリルに次々とぶつかっていった。
しかし、フェンリルの身体には傷一つつかないどころか、足止めにもならなかった。
「なんで効かないの……もう、イヤ! うわ~ん!!」
自身をもって使った魔法が効かない……ジナイダは泣いてしまった。
(うお~! なんなんだ、この娘は! ……これじゃ簡単に人格を支配されるわけだぜ……)
* * *
ジナイダ・レオンチェフ
Zinaida Leontief
21歳/女/魔導師
169cm/右利き
特技:黒魔法
趣味:作曲
好きな食べ物:たまご
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