第10話 あの時の
翌日……この日の試合があるのはヘイムダルだけだ。
「それじゃ、がんばって下さいヘイムダルさん」
「ありがとうフレイア」
ヘイムダルは一人、闘技場へ向かって走った。
「……ホントにあの野郎が言うとおり敵ってのはいるんだろうな」
「俺様もおめーさんも試合は明日だ。今日はあの人にまかせときゃいいじゃねえの」
「じゃ、俺達は観戦といくか。さ、姫様。トールさんも行こうぜ」
「さてルールの方ですが予選とは違い、武器・魔法なども使用可、戦いは一対一でどちらかが降参するか場外に出るかもしくはカウント10で立ち上がらなかった場合はその選手を負けとします。
ただし相手の目を狙ったり、殺した場合は反則負け。それ以外ならどんなに傷を負わせようと、審判が止めない限りよいとします。試合で傷を負った選手は場内にある八芒陣の間にて治療をうけることになっています。
……ではAブロック第一試合スタンフォード・ディキンソン対リズ・メイ、Bブロック第一試合ビンセント・スペンダー対ロキ・ダークサイド戦を同時に始めたいと思います。では試合開始!!」
気合とともにスタンフォードがリズに蹴りを放った。リズは攻撃を腕で受け、後ろにさがるが、その左足を軸に回転した。
相当なスピードでリズのかかとがスタンフォードの後頭部に決まった。そのまま彼は倒れた。そして、
その声とともにロキは手のひらを前へ出した。
「ファイアボール」
火球が相手のビンセントの方へ飛び、爆発した。
ビンセントはその手に持つメイスを一度も振るうことなく
「続いて第二試合Aブロック、なんとオーディンの登場です!」
試合場にはジェロムがワルハラの都で見たプラチナの騎士が立っている。
(あの時に俺たちを助けてくれた人じゃねーか……)
「では、改めてAブロック オーディン対バスター・ディラン、Bブロック ヘイムダル・ラスプーチン対ロード・フィン・クルーズ…………始め!!」
オーディンがハルバードを振るった。バスターはひらりとかわし、手裏剣を投げる。当然、全身をくるなくおおった鎧はそれらを受け付けない。
再びオーディンが攻撃をしかけたがこれも軽くよけられる。
バスターは印を結び、
「風化雷電……ナム マリ バサラ!」
炎の輪がオーディンの周りを囲んだ。バスターは上空高く跳び、次の攻撃に入る。しかし……相手までもここまで跳んで来れるとは予期せぬことだった。
オーディンのハルバードの柄がバスターの背中に叩きつけられた。バスターは気絶したまま何メートルも下の試合場に墜落した。
百数十キロの鎧を着たこの男があれだけ素早く、あれだけ高く跳ぶなど、誰が予想したろうか。
騎士……超人……勝利者オーディンの青いマントが風になびいていた。
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