第二章 武闘会

第9話 探し者は……

 港町エンブラにもどり、フレイアに胸甲を買った後、三人は船へ乗った。


「のあよぉ……ところで船は誰がかじとるんだよ」


「知らん。オレは砂漠の砂船と雪上船しか操れんのだ」


「仕方ないわね……みんなで何とかしましょう」


 ジェロムとヘイムダルはフレイアについて船室へ入った。

 船室では変な男がフレイアの荷物をゴソゴソいじくり回していた。


「だ……誰なの!?」


「下着ドロボーか……!?」


「ちがう!! 俺様はモンを探してただけだぁ!」


「ドロボーには変わりねーじゃねーか!!」


「ドロボーじゃなくて海賊パイレートだ!!」


「結局同じようなもんじゃねーか!!」


「落ち着け、ジェロム。さあ海賊さんよ、話を聞かせてもらおうか?」


 海賊という男は話し始めた。


「俺様はトール・チェンバレンっていうんだけどナ、さっき言ったとおり海賊団パイレーツの切り込み隊長でよ。何か月か前にヘル帝国だっけかな……まあ、そこらへんの海底から財宝を釣り上げてナ、


そん中にあった冠をあねさんが、うちのかしらがかぶったらおかしくなっちまってよ、その後は海ン中から大ヘビが出てきて船は沈んじまうわ、他の仲間は全員食われちまうわ、全く大変だったんだよ」


かしらが女っつーと……海賊団ってのはシャドーワルキュリエか?」


「おお、知ってたか~! ジェロムさんって言ったっけな、会ってすぐこんなこと頼むのも申しわけねーと思うけど俺様をヘルに連れて行ってほしいんだよ!」


「……いいですよね? ジェロムさん、ヘイムダルさん」


「オレはかまわないが……どっちみちヘルに行くんだろう?」


「いいってよ! トールさん、その代わり舵とってくれっかな?」


「もちろんよ! 海賊だぜ、俺様は!!」


 トールを加え、四人は南東のヘル帝国へ船を進めた。




「もう参加者はいないのですか?」


「それは……あのオーディンが参加するとなればどんな戦士とておびえて参加したがらないのも当然と言ったところでしょう。締め切り時間もあと20分……参加者は今のところ60名です」


「するとあと4名足りませんね、ロキ」


 ……ヘル帝国首都パンデモニウム、武闘会予選開始20分前、闘技場フラウィウスの特別席から聞こえる二つの声……女帝ヘルと側近ロキであった。


「……皇帝、たった今3名参加者が……」


「ええ、聞いています。……ジェロム・フォン・フィッツジェラルド、トール・チェンバレン、ヘイムダル・ラスプーチンですね。しかしもう時間がありません。ロキ、あなたが参加するのです」


「御意。私の魔法をうち破れる者こそが、この冠を手にするに相応ふさわしいでしょうから……ふふふ……」


「流石に自身はあるようですね」




「……しっかしよお、参加したのはいいけど俺達同士であたったらどうするわけ?」


「俺様は手加減せんからな~」


「三人とも別々のブロックに散ればいいのだが……」


「おっと、もう予選が始まるみてーだぜ」


 ジェロムたちは闘技場へ向かった。




「では、これから予選を行います。選手の皆さんは受付でもらった1番から16番までのカードを見て同じ番号の人同士集まって下さい。その4人でバトルロイヤルをして決勝進出者を決めます」


(……バトルロイヤルか……オレは6番だから向こうだな。ヘイムダルは11番だったな)


「俺様は13番……不吉だナ……ま、いいか。すぐそこでやるみたいだし。じゃな、ジェロムさんよ」


 ジェロムはトールたちと別れて6番の場所へ向かった。


「予選は素手で戦います。魔法も使用禁止です。ただし闘気は許可します。そして……」


(早く始めりゃいいじゃねーか……)


 そう思うジェロムの相手は三人とも格闘士。真っ先にジェロムをつぶそうとにらみつけている。


「……では、試合開始!」


 予想どおり、三人はジェロムに向かって来た!




「……というわけで予選の結果、本戦へ出場する16名の選手が決まりましたので発表します!」


【Aブロック】

スタンフォード(拳士・男) VS リズ(拳士・女)

オーディン(騎士・男) VS バスター(忍者・男)

メリル(曲芸師・女) VS ジェロム(勇者・男)

スブラーマニャン(剣士・男) VS ホウオウ(武士・男)


【Bブロック】

ビンセント(戦士・男) VS ロキ(魔導師・男)

ヘイムダル(詩人・男) VS ロード(精霊使い・男)

トール(格闘士・男) VS コヴェントリィ(浪人・男)

アンヌンツィオ(戦士・男) VS フェイ(占い師・女)


「……以上です。本戦は明日から行います。優勝者には皇帝陛下から黄金の冠が与えられます!」




 ジェロムが思う。


(やっぱりこん中にカレンがいるなんて期待しない方がよかったか……)


 ヘイムダルが思う。


(一体誰が六魔導か……火のスルト……水のアエギル……地のフェンリル……)




  *  *  *




トール・チェンバレン

Thor Chamberlain


28歳/男/海賊

185cm/右利き


特技:酒一気飲み

趣味:ドラム

好きな食べ物:ナマコ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る