第11話 黄金よりも

「ヘイムダルさん!」


 フレイアの声が響いた。次いでヘイムダル、相手のロードの声も辺りに響いた。


「キンドル・フラッシュ!!」


「砂の精霊ジュールよ!!」


 ヘイムダルの魔法が一閃した。ロードの召喚したジュールは砂の壁をつくってそれを防いだ。


 ロードはロッドを構えた。今度は氷の精霊オーセルが剣をつくり出した。

 それはヘイムダルに向かって来たがバルムンクでぎ払った。相手はかなり多くの精霊を用意しているらしい。


 ヘイムダルは勝負に入った。ロードの出したロッドは攻撃を受け止めた。


「貴様は……六魔導の一人か……?」


「何のことだかさっぱり分からない!」


 精霊シルフの風がヘイムダルを吹き飛ばした。さらに真空波が襲った。


(場外に追い込むつもりだな……)


 ヘイムダルは相手に跳びかかった。ロードはウンディーネを呼んだ。水壁がヘイムダルの勢いを止めた。


「ジュシエルよ、星を降らせよ!」


 小さくはあったが、一つではあったが隕石メテオがヘイムダルに降った。剣で砕いたが破片は肉を焦がした。回復しようにもウンディーネの水が口に入ってきて呪文を唱えられない。


 氷の矢が、砂の粒が次々と飛んで来た。ほとんど全部当たった。血を吐いたが、それでも立ち上がった。


「もう見てられない! 私の負けだ!」


 叫んだのはロードの方だった。




 二回戦も終わり、ジェロムたちもヘイムダルも宿へもどった。

 ヘイムダルの部屋には客が来ていた。


「……負けたよ、あんたには勝てない。精霊の力を借りてもね」


「そうかな……」


「試合中、あんたはずっと私の方をにらんでいた。本気で戦っていたろう。そんなあんたに……精霊の力を借りて戦うなんて失礼だと思ってね。それで勝ったとしてもそこまでして手に入れる物でもないと思ったんだよ、黄金の冠なんて。でもあんたは勝たなくちゃならないって感じだった」


「まあな……」


「そうだ、あんたに聞きたいことがあったんだが……あんた、光の魔法を使ったところを見ると……」


「なにを言う……あれは本を見てマネをしてみただけだ!」


「そうかな……そうだな。もし本当に『パラディン』ならもっと強力だったろうしね……。じゃ、私はこれで」


 ロードは部屋を出て行った。


(『パラディン』を知っているとなるとあいつは六魔導ではないな……)




 そして本戦一日目がすぎた。

 二日目、この日はジェロムとトールが試合に出る。


「……さて、各選手とも入場した模様です。今日、三回戦Aブロックはメリル・ザナック対……? 自分から勇者と名乗るジェロム・フォン・フィッツジェラルド! そしてBブロックはトール・チェンバレン対コヴェントリィ・サイラス・モーガン」


(う~……相手は女の子かよ……どうやって戦えばいいんだ……)


 ジェロムがそう考えている間に相手のメリルは作戦が決まったようだ。


「それっ!」


 元気な声とともに6本のナイフがジェロムに飛んだ。

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