第7話 詩人と霊剣(前編)
ニフル王国……そこには北国らしく、大地は一面雪におおわれていた。
ここは港町エンブラ。ジェロムたちは店でコートを買い、町の人々から情報を集めていた。
この国の首都チラの場所は聞き出せたのだが、目的のガルムのアジトを知っている者はいなかった。
「……やっぱり知らないみたいだ。こうなれば都へ移動してから情報を集めることにしようか?」
「ちょっと待て、フレイ。あいつ……誰だ?」
さっきから目つきの悪い詩人風の男がこっちを見ている。その男は気付かれたのを悟ったか、声をかけてきた。
「貴様ら……ガルムの居場所が知りたいのか?」
「……何なんだよ、てめ~は。さっきからガンとばしやがってよ……その上その口のきき方は何だぁ? ふざけんのもいい加減にしやがれ、このクソが!」
「フッ……ガキだな、貴様も」
「やめて下さい! 会って早々ケンカなんて困ります!」
「仕方ねえ……ここは姫様に免じて許してやるぜ!」
「惚れているのか? 一丁前に」
「貴様ァ……俺にはちゃんと他に好きな娘が……い……いるんだョ……」
「ガキが色気付いたか……」
「俺はガキじゃねえ!!!」
「本当にやめて下さいよジェロムさん! 話が進まないじゃないですか!」
「すまなかったな、小僧。オレはヘイムダル、一応吟遊詩人ということにしておこう」
(ケッ……何が一応しておこうだよ……カッコつけやがって……)
「こちらこそ……私はフレイア。貴方はガルムのことを何か知っているのですか?」
「ガルムはこの町の南東のハイドルンの洞窟にいる。オレもついて行ってやろう」
(こいつは……姫様になれなれしくしやがって……このロリータ野郎! まだ姫様は15だぜ!)
「……何か言いたそうだな。洞窟を案内してやるというのに、不満か?」
「べつに!! 来たかったら来りゃいいじゃねえかよ!!!」
(一言一言に気合いが入ってるな~、ジェロムさん)
「おい、小僧。その剣をオレに渡せ。洞窟は案内してやる、その代金だ」
「フレイ、こんな奴に渡すこたねーぞ。それはお前が持ってりゃいいんだからな!」
「いや、べつにいいですよ。はい、ヘイムダルさん。この剣はバルムンクといって……」
「知っている。だから渡してほしかったのだ」
「あ~あ。こんな奴にやっちまって……知らね~ぞ、俺は」
「まあ、よいではないか。では行こうか、ヘイムダル殿」
あやしい男ヘイムダルを加えた一行は彼の言ったとおり南東はハイドルンの洞窟へ足を運んだ。
「いよいよ来たが……今度の敵は並の相手ではないぞ。大丈夫か、ジェロム殿?」
「やっとまともに扱えるようになった
「私も大丈夫です。お気になさらずに」
「そういうことらしい。急ぐぞ」
ヘイムダルの案内に助けられ、洞窟内を進んで行くと、ヘルハウンドが3匹ほどかかって来た。
口から吐く熱波はやっかいだったが、一分もあれば倒すことはできた。
しかし問題はその後ろに立ち、ヘルハウンドたちと戦うジェロムたちを冷笑していたガルムともう一人の男だ。
ガルムの手では『ブリーシンガメン』が凍るような輝きを放っている。
「やはり、そんなものだね。見ろよベルゲルミール、また命知らずが来たぜ」
ガルムにベルゲルミールと呼ばれた男はヘイムダルを見る。
「あなたは戦わないのですか?」
「貴様となら戦ってもかまわんが」
そう言うとヘイムダルは初めて剣を抜いた。
「ではまず小手調べといきますか……」
ベルゲルミールは地面に八芒星を描き、
「ジンよ、その男を殺れ」
ジンは命令どおり竜巻をおこした。
ジンは大気の精霊の中でも最大の強さを誇る精霊だ。その竜巻は天井をつき崩し、破片は竜巻に巻き込まれた。そしてそのままヘイムダルの方へ向かって行った。
竜巻はヘイムダルに直撃し、そのヘイムダルはボロクソになって地面に伏した。
「う……うう……」
「……さんざんでけ~口きいてたくせにヘイムダルの奴……まるで
「それだけ奴が強いということか……!」
「ど……どうするん……ですか……! 精霊には普通の武器はききませんよ!!」
フレイはフレイアの後ろに隠れてガタガタ震えている。
「だからこのバルムンクを使うのだ」
ヘイムダルは何もなかったかのように立ち上がった。
「な~んだよ、おめ~は……まだ死んでなかったのかよ!」
「オレとて
「ほう……こいつらけっこうやるみたいだし……ベルゲルミール、あとはまかせるヨ!」
「まて! お前は拙者が相手する!」
その場を去ろうとしたガルムをティルが止める。そしてティルの2本のグレートソードがすぐさまガルムをとらえる。
しかし、1本はガルムの張ったシールドに当たり、砕け散る。
「甘いな……六魔導をナメてもらっちゃあ困るぜ!」
次いでガルムはエネルギーボルトを放ち、ティルをはねのけた。
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