第7話 詩人と霊剣(後編)
「向こうでは始めているらしいですね。こちらも参りましょうか」
ジンは再びヘイムダルに襲いかかった。今度は拳で殴りかかる気らしいが……ヘイムダルの振り下ろしたバルムンクはジンの腕を断ち切り、次の一撃は相手を苦しませる間もなく
「次は私というわけですか……?」
「答えるまでもないな……」
ヘイムダルは跳躍し、ベルゲルミールの脳天に刀身を向ける。
ベルゲルミールはかわそうとするが肩に当たり、右腕を斬り落とされる。
後ろで震えていたフレイも、その光景を見ないようフレイアの目を手でおおい隠す。が、自分はまともに見て (ゲロを)吐いてしまう。
「きたね~、このぐらいで吐くなよな……って言っても無理もねえか……」
「つっ立ってないで貴様も戦え!」
(なに言ってんだ……一人でも充分優勢じゃね~か……)
ジェロムの見たところ……いや、誰が見てもヘイムダルが
とは言え仲間が戦っているのを黙って見ているわけにもいかず、ジェロムはヘイムダルに加勢する。
こちらの勢いはさらに増し、ベルゲルミールは全身に傷を負ったが、その目はフレイアたちの方を見ていた。
そして疲労からか、ジェロムたちの攻撃がとだえた一瞬に、ベルゲルミールは
「危ない、フレイア!!」
フレイはフレイアを守ってアイシクルをくらった。氷の矢はフレイの胸に深々とつき刺さる……
「い……痛いよ……う……!」
フレイが崩れ落ちるとベルゲルミールはまた容赦ない攻撃をフレイアに向けた。
氷の刃だった。
「この……くされ
そのベルゲルミールにも一瞬のスキができた。
ヘイムダルが加えたバルムンクの一撃はベルゲルミールの首を斬りとばすが、その時にはすでにジェロムの孫六が心臓を貫いていた。
「貴様がスキをつくってくれたらしいな」
「なぁに、どうってこたぁね~よ。……あ! それよりフレイが!」
ヘイムダルは急いでヒーリングをフレイに使い、何とか助かった。
しかし氷の刃はフレイアの背中を……
「やべぇっ! 目ェ開けてね~よ、姫様!!」
だがその心配もティルの一言で安心に変わった。
「よく見ろ! 姫にはミスリルチェインを着せてある!!」
ティルはフレイアと会った時、もしもの事を思い、服の下に軽量で丈夫なミスリル繊維で編んだチェインメイルを着せておいたのだ。
フレイアは気絶しただけですんだ。
「おしゃべりしてるヒマはないぜ!」
ガルムは手のひらをかざし、魔法力を集中させると電撃系最大の魔法、サンダークラップを放った。
フレイに向けてガルムはライトニングボルトを発するが、ジェロムはその手を斬り落とす。
そしてヘイムダルの使ったエアスラッシュの魔法がガルムの身体を斬り裂く。
しかしガルムにとってその攻撃は少々なまぬるかったらしい。無数の電撃の矢はジェロム、フレイ、ヘイムダルを瞬時にして
その中ティルはジェロムが斬り落としたガルムの手の上にあった『ブリーシンガメン』を拾い上げた。
「姫!! フレイア姫!!!」
ティルの声でフレイアは目を覚まし、放り投げたそれをしっかり受け取った。
「姫は今のうちにお逃げ下さい! 拙者どもはこやつを倒したらすぐ都へもどります!」
「倒せると思ったか……」
ガルムはティルの首をつかんで持ち上げた。
「お前も知ってるよなあ……気や魔法力なんかのエネルギーを一番放出しやすい場所……身体ん中じゃあきき腕と……
大きく開いたガルムの口からは、今にも極大のサンダークラップが放たれようとしている。
この時、ティルは生命をかけた攻撃を敵にくり出した。戦いの最中、一度も離さなかった左手のグレートソードがガルムの首をはねた。
サンダークラップはグレートソードをつたわってティルに致命傷を負わせた。相討ちだった……。
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