第6話 航海戦士
「ここでいいんですよね、アムドゥムラ島って……」
北のニフルのある大陸に渡るため、船小屋のあるアムドゥムラ島へ来た四人だが……
その船小屋というのが小屋などとはとても言えないような屋敷なのであった。
あいさつをして中に入ってみると、出てきたのはこれまた豪華なドレスを着た婦人なのであった。
「何かと思えばお客様ざますか? あらま、ずいぶんとお粗末なお着物ざますね。物乞いはお断り……」
「待てやぁ、ババア! この紋所、とくと見やがれ!」
失礼な態度をとる婦人の言動に耐えかねたか、ジェロムは額の陣鉢に刻まれた王家の紋章を見せて言った。
「そ……それはミドガルド王家の紋章じゃあ~りませんか! それに後ろに
屋敷内に案内してもらうと奥の部屋には人のよさそうな男が座っていた。男は立ち上がり、御辞儀をすると話し出した。
「どうも妻が御無礼をはたらいたようで……私、ジークフリートという者で。妻はクリームヒルトと申します」
「こちらこそ失礼、私はジェロム・フォン・フィッツジェラルド。知ってのとおりこちらはフレイ王子とフレイア姫。それと……」
「……ティル・ソーディックです。あなた方はどこかの貴族ですかな?
「実は……私達は東のヘル帝国に仕えていた者で……夫のジークフリートは女皇陛下直属の剣士だったのですが、3年前に突然やって来たロキという魔導師に位をうばわれ……今は船小屋を改築したこの屋敷に住んでおります……」
「3年前……といえばアスガルド王国からオーディン王が失踪したのもそのころのはず……」
「姫様も知ってたのか。これは何かありそうだなぁ、フレイ君よぉ」
「はい……それより僕達は船を探しに来たはずでしょう。でもここには船が……」
「ありますよ。こっちです」
裏庭には船つき場があり、そこには大型の帆船が堂々と浮かんでいた。
「この船はあなた方に譲りましょう。もちろんタダでけっこうですわ」
「それとこの剣も持って行って下さい。私が城を襲ったドラゴンを倒した霊剣バルムンクです。神剣『シグルスヴェルズ』ほどではないにしても、かなりの切れ味はもっているはずです」
「ありがとう。……それにしても『シグルスヴェルズ』というのは……」
「何か知っておいでかな? 王子」
「ミドガルド王家に伝わる剣……だったような気がしたが……」
「どうでもいいじゃねーか。さあ、早く船に乗れ。……それでは、お騒がせしました~」
四人は船に乗り込み、船つき場を離れた。
「この船には羅針盤と地図もついていますわね。するとニフルの国は北東……」
「そのとおりですぜ、姫様……はいいけどこの船……誰が操縦するわけ!?」
「しまった! それを考えていなかったあっ……父上なら航海術を知っているのだが……僕は習っていない!!」
「……心配するな、帆船なら拙者でも操れる」
海はそう穏やかではなかったが、ティルのおかげでジェロム達は無事にニフル大陸に着いた。
(これほど船を自在に操るとはこの男……ただ者ではないな……!?)
などと、ジェロムだけでなくフレイもティルのことを少しずつ疑い始めていた。
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