第38話 200人の教師陣と対話する

 200名の教師陣を移転した時の反応は凄かった。生気の無かった表情かおをしていた彼等から一変、ワイワイと活気に満ちていた。

 「ここはこれから貴方達が子供達を教え導く場所の講堂になるよ。今から貴方達の校内を案内し、宿泊する寮に行くので付いてきてね。」

 プラカードを持って校内を案内する。

 初等科から中等部、高等専科を見て回った。特に高等専科に関しては最先端の技術を取り入れている。学校の屋根に張り巡らされたソーラーパネルの蓄電気を使用して必要な機器を揃えたのだ。

 校内を見て終わると次は寮に向かった。

 寮は使用人も合わせて合計300人もの人間が生活出来るように設定されている。

 「ここが寮だよ。今から名前を呼ぶので部屋の見取り図と鍵、設定済みのノートパソコンを取りに来て。」

 私はアルファベット順に名前を読み上げ空間魔法アイテムボックスから必需品が入った手提げ袋を渡していった。

 全員に配り終わったところで

 「今からスマホのWi-Fi設定をします。TP-Link42Bに繋いでね。パスワードの表示が出たらそこでストップしてて。」

皆、異世界でWi-Fiが繋がるのか?と半信半疑に設定を始めた。

 5分経過したところで

 「ではパスワードは●●●●●●だよ。ホワイトボードに記しているので間違えないように入力してね。」

ホワイトボードに自宅のWi-Fiのパスワードを記入して彼等が入力するのを待った。

 次々と繋がった!と言葉が出てきたので

 「繋がってない人はいるかな?」

最終確認の声掛けをする。繋がってない人はいないようだ。

 「ウォーズの地図アプリをDLダウンロードしてみて。」

 各々アプリをDLダウンロード出来たようなのでGoogマップを起動するように指示した。

 「他にも必要と思われるアプリは各自DLダウンロードしてね。次に食事は朝は7時~8時、昼は朝にお弁当を渡されるから各自持参して。夜は18時~19時半になるよ。風呂は朝5時~夜21時まで。それ以外での入浴は出来ないから注意してね。スマホの時計に時間を合わせておいて。ここまでで何か質問はあるかな?」

 「あの、ゴミは何処に捨てたら良いんでしょうか?」

 女性ならではの質問に

 「ゴミ捨て場はこっちだよ。」

共同住宅専用のゴミ捨て場に案内する。そこには50匹近くのスライムがうようよといた。

 「す、スライムだ!」

 「異世界っぽい!」

 ゴミ捨て場のスライムを写メる皆を見て、これが普通の反応かと思った。私は慣れてしまったからなぁ。

 「どうしてゴミ捨て場にスライムがいるんですか?」

 素朴な疑問に

 「スライムは雑食だからゴミを消化してくれるのよ。因みにお風呂場やトイレにもいるからね。」

スライムを活用していると言えば何故か固まった。こればかりは慣れて貰うしかない。

 一通り説明を終えて解散となった。




 学校が始まるまでに教師陣に使う教材の確認をして貰った。アメリカにある何でも屋のタスクラビットはウォーズの金貨支払い可能だから助かっている。

 仕入れは専らタスクラビットで仕入れているのだ。

 鍛冶科・美術科・建築科・商業科・医学部の五つに分けられている。

 その中で医学部が一番難航した。地球の薬は私頼りになる上に獣人やドワーフ、エルフ、魔族と様々な種族がいるのだ。体の仕組みも違ってくる。これについては研究するしかない。薬についてはハイマで薬学に精通した者を選んで共同研究させた。

 学校の一角には薬草園があり、そこで薬草を栽培している。

 フランスの薬学研究者の一人が元スラム街でペニシリンの開発を進めているのだ。この世界の薬はお呪いと同じぐらい信憑性がないと知って彼は直ぐに行動を起こした。

 また解剖学は教会から異端だと言われていた為に誰もしてこなかった。だから解剖学をするにあたって、教会を説得する必要があったのだ。

 アシュヴィッタ王国には国教は無いが、女神ユーノーが祀られている大聖堂がある。私は大聖堂に赴いて女神ユーノーに願いという名の伝言を伝えた。

 内容は勿論、解剖学を学ぶことが出来る日本国秋月あきつき専門学校を神の学び舎として認めたことを最高司祭にお告げしろとお願いをした。解剖学についての知識も最高司祭に分かるように説明する旨を伝えた。見返りは異世界の食べ物である。

 あの女神、地球産の食べ物に興味があったようだ。私が色々とやらかしているのを見て、ご飯や菓子を食べたいと思っていたらしい。

 食い意地が張ってるなと思ったのは仕方のないことだと思う。月に一回のお供えで手を打って貰った。

 大聖堂に赴いて数日後に教会から大司教が数人の司祭と修道士や修道女シスターを連れて私の所にやってきた。

 「突然お訪ねしてすみません。貴女がヒヨリ様ですね?」

 応接室のソファーから立ち上がった大司教に

 「ええ、わたくし燈由ひより大和やまと・日本です。本日はどのようなご用件でしょうか?」

皇女様の猫を被る。

 「私はソールズリー大聖堂の大司教の任に就くマインツと申します。日本国の姫にお会いできて光栄です。」

 皇女の猫を被ったが、私が日本国(笑)の皇女と知っているのは公爵だけだ。

 「あら?わたくしが日本国の姫だとどこでお知りになられたのかしら?」

 「先日、女神ユーノー様から信託を受けた時で御座います。」

 私を崇めるようなで見るのは止めて欲しい。

 「して信託とは?」

 「女神ユーノー様よりヒヨリ様の運営する日本国秋月あきつき専門学校の高等専科にある医学について啓示を受けました。」

 「啓示と?」

 知らんふりをしつつ相手の出方を見る。

 「はい、現代の医術は神聖魔法かポーションに頼り切りになっています。女神ユーノー様はそれを憂いておりました。そんな時ヒヨリ様の提唱する医学はまさに神の英知の一端だと称され、神の学び舎であると仰りました。是非とも私の部下達にも神の英知をお与え頂きたく存じます。」

 深々と頭を下げるマインツに

 「門徒は誰にでも開かれております。ですが、直ぐに高等専科に入れるわけではありません。学ぶにしてもそれなりの教養が必要になります。ですので、試験を突破した方のみ受け入れをしております。読み書き算術が出来れば初等科は大丈夫でしょう。ですが中等部からは勉強の難易度が格段に上がります。わたくしとしては中等部の入学から進めています。中等部で下地を積み上げ、高等専科にて専門の知識を学ぶことになります。」

学校の説明をした。

 直ぐに医学部に入学出来ないと分かった彼は少し落胆したが

 「では中等部への入学を許可して頂きたい。」

気を持ち直して交渉してきた。

 「許可も何も入試で合格すれば良いことです。我が校は実力主義が校風なのですよ。実力が伴わない場合は初等科より入学するしかありません。丁度、入試の日はずらしてあるので、全部受けても構いませんよ。」

 全部受けて受験料を納めてくれたまえよ、と思えば彼は頷いた。

 「ではそのようにしましょう。」

 「初等科と中等部は三年、高等専科は専攻する学部によって違いますが医学部は6年になります。それだけ通っても卒業試験を突破しなければ卒業出来ません。留年するか退学するかのどちらかになります。卒業すれば日本国秋月あきつき専門学校より医師免許を発行します。とはいえ、国が運営している学校ではないので我が校の免許がどれだけの力を発揮するかは分かりませんが…」

 これが問題なんだよね。自称医者は多いけど専門的に学ぶ場所といえば、代々医者家系の家柄ぐらいしかない。

 「それなら我が教会が医師免許の保証をしましょう。」

 マインツの提案に乗り、私達は医師免許に関しての具体案を練ることになるのであった。

 数年後、在籍中の医師の卵達の活躍によって日本国秋月あきつき専門学校は世界最高峰の医学の学び舎として全世界から注目されるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る