第39話 王家主催のパーティで爵位と領地を貰った・前
王都と地球、カサンラカを行き来して納品を済ませている
地球に戻るのは主要取引先との物品の受け渡しが主だからだ。スキルの空間支配は一度行った場所であれば必ず行けるので、海外旅行と称して金貨で取引してくれる企業や組織がある場所に出向いている。
目まぐるしい毎日を過ごしている中で王家から招待状が届いた。
私の世話係をしているアルマから手紙を手渡された。
「えっと、王家主催の晩餐会に招待するから来いってことなのかな?」
ざっと手紙の中身を確認してアルマに問えば
「ヒヨリ様は今や新進気鋭の商人です。またスラム街も整備された功績は計り知れません。褒賞を与えるのが目的ではないでしょうか?」
貴族子女らしい答えを返してくれた。
「報奨金が貰えるなら行くけど、ナヴァール公爵の話だとそうじゃないんだよね。」
数日前にナヴァール公爵より呼び出しがあって屋敷に向かったら、公爵直々に陛下が爵位と領地を下賜する予定がある旨を伝えられたのだ。
内密にと言われているので誰にも言ってないけど、この国は私に首輪を着ける気満々なのだ。
とはいえ、世界情勢を見てもこの国ほど過ごし易い国はない。この国では種族間の差別がないからだ。他国だと人族主義が多かったり、劣悪な奴隷制度が健在していたりする。
「晩餐会は二ヶ月後ってことはドレスを仕立てなくちゃならないよね。」
「衣装係に採寸して貰いますか?」
「いや、今回は私の国のドレスにするから採寸は良いよ。」
着物を新調しないといけないな。
ウォーズの世界のドレスはプリンセスドレスしかなかった。だから公爵夫人やイザベラ嬢にモデルをお願いしてAラインドレスやマーメイドラインなどの様々なドレスを着て夜会に出席して貰い話題を作って貰ったのだ。
今や彼女達はファッションの最先端と言っても過言ではない。
ドレスの予約は3年待ちになるほど盛況である。既製品部門も売り切れが続出しているのだ。少しお高めの庶民向けではあるが、そのデザインから貴族のお嬢さん達が購入している。
イザベラ嬢のお茶会にパンフレットを持って行ってもらって正解だった。今では
「着物で出席なさるのですか?」
アルマの問い掛けに私はニヤっと笑い
「そうだよ。着物ならダンスをしなくても良いからね!」
本音を漏らした。
アルマは溜息を吐いて
「そんな理由なら新作のドレスを着て下さっても良いじゃありませんか…」
恨みがましそうな
「私の顔では新作ドレスが泣くんだよ!」
そう言って話を打ち切り自室へ逃げ込んだ。
私は皇室御用達の
家賃収入と
王宮のからの迎えの馬車に乗り城へと目指す。ソフィアを付き添いで連れて行きたかったが、生憎許可されなかったので一人で王宮にやって来た。
行く先々で私の装いに見惚れる人が多いこと、多いこと。夜会は目立ってなんぼだからね。
しかし私を案内するメイドの態度が悪い。慇懃無礼な態度に
夜会が行われるパーティ会場に到着すると
「ヒヨリ・ヤマト・二ホン様のお着き~」
声高々と言われ、ラッパが鳴り響く。
とても恥ずかしいが、そんな感情は見せないようにニコニコと笑顔を浮かべて中に入る。
今を時めく商人の私に挨拶しようって人はいなかった。そうだよね、皆お貴族様だもんね。
飲み物でも取りに行こうかなと辺りを見回していたら
「ヒヨリ、此処に居たのね!一緒に行きたかったのに!ドレスありがとう。とっても気に入っているわ。」
イザベラが私を見て近付いてきた。
「イザベラ様とても良くお似合いです。」
私の広告塔その2に挨拶をする。
「マリア様もお綺麗です。そのネックレスは我が
マリアの胸元を飾るネックレスは今月発売したばかりの新作である。普通であれば入手困難なのだが、特別枠としてナヴァール公爵の枠を抑えてあるのだ。
「ヒヨリのお陰よ。貴女が融通を利かせてくれるお陰で新作のドレスやネックレスが手に入るんだもの。新作を皆に自慢しちゃったわ。」
うふふ、と笑顔を見せるマリア。年齢不詳の美しさに磨きが掛かってますね。
「そう言えば美の魔法薬の入荷の予定はあるのかしら?」
化粧品の話に移ると貴族令嬢達が一斉に私に注目した。
そう現在基礎化粧品の入荷が遅れているのだ。追加で入荷しても完売続きになるため購入制限をしている。
基礎化粧品の入荷は化粧品会社と提携の話を進めている最中である。提携が決まれば基礎化粧品だけでなく化粧品も安く入荷出来るのだ。
「安定した入荷はまだ先になります。転売する不届き者もいるようで、本当に困ります。半年後には安定して供給出来ると思いますよ。新作も出ますし、その時はお願いしますね。」
広告塔1号に宣伝をお願いすると心得たとばかりに
「勿論よ、
私を遠目にしていた女性達に私を紹介してくれた。
わらわらと寄って来た彼女達の名前を
「ラベンダーのドレスを着ているのはグリント伯爵家の三女のミリア様、ピンクの……」
小声で私に有力貴族の令嬢を教えてくれるイザベラに感謝だ。完全記憶があって良かったと思う瞬間だった。
「ヒヨリ様は変わったドレスを着ていらっしゃるのね。不思議だけど品があって美しいわ。」
令嬢の賞賛に
「これは
流通はしないと答えると
「そうなのですか?それは残念です。ヒヨリ様はこの国の出身ではないのですね。お国はどちらで?」
残念そうにしたが日本の話になった。これ幸いと
こうして令嬢達と談笑をしていると
「皇太后陛下エイダ様、皇后ディーナ様、ライリー陛下、皇太子ジュード様のおな~り~~」
ラッパの音がなり王族が入室した。
皆が一斉に臣下の礼をするのに伴って私は最敬礼をしてみせた。
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