第27話 野菜たっぷり卵雑炊

 グレイス孤児院、インノチェンティ孤児院、バーナード孤児院の3つの孤児院と契約が出来た。3つとも建物の老朽化が激しかったので建て替えをすることにした。一番最初にグレイス孤児院、次にインノチェンティ孤児院、バーナード孤児院の順に改装する。改装中はそれぞれの孤児院に分けて預かって貰う予定だ。

 グレイス孤児院の取り壊しが始まり、子供達はインノチェンティ孤児院とバーナード孤児院に振り分けられた。

 「私の名前はヒヨリ!秋月しゅうげつの代表をしている。これから料理・マナー・読み書き算数を教えていくので頑張って覚えて欲しい。合格者だけが秋月しゅうげつが運営する食事処で働ける事になる。また、私が出す問題をクリア出来た者にはお祝いとして銀貨1枚が出るぞ!」

 お金のワードに子供達だけで無く大人までもが沸いた。お金は魔法の言葉だと思う。

 「講師役のスカーレットとグレイスだ。」

 「スカーレットです。宜しくお願いします。」

 「グレイスだ。宜しく頼む。」

 二人を紹介し終えたら次は秋月しゅうげつで取り扱っている電子メモパッドを人数分配布した。紙が勿体ないからね!何度も描いたり消したり自由にお絵かき……げふん、げふん、文字や算数を書いて楽しめる魔法のボードです。

 使い方を説明すると子供達は興奮気味に電子メモパッドに絵を描き始めた。

 空間魔法アイテムボックスから両面脚付きホワイトボードを取り出し、講師のスカーレットとグレイスに読み書き算数を教えるように指示を出した。

 私は昼の仕込みにとキッチンへ向かうのだった。

 


 本日の昼食は野菜たっぷり卵雑炊とにんじんのポタージュ、バナナジェラートと胃に優しいメニューにした。

 粗末な食事ばかりで肉はほとんど食べてないとのことだったので、胃がビックリしないように配慮した結果である。様子を見て肉を出す予定だ。

 大根とにんじんは2〜3㎜幅のいちょう切りにし、白菜は5〜6㎜幅に切り、鍋にだし汁を入れ、大根とにんじん、白菜の芯の部分を入れる。

 椎茸とえのき茸は軸や石づきを切り落とし、椎茸は薄切りにして、えのき茸は1㎝幅に切る。

 鍋を火にかけ、沸いてきたら火を弱めて3〜4分ほど煮て野菜に火を通し、続けて、白菜の葉、椎茸、えのき茸を加えて火を入れる。

 すべての野菜に火が通れば、ご飯を加えて少しぐつぐつと煮て温める。それからしょうゆと塩を加え、味付けし、溶いた卵を入れ、ひと呼吸おいてからお玉で全体を混ぜ合わせて完成だ。

 雑炊が完成したらにんじんのポタージュ、バナナジェラートを作っていく。

 大人数なので修道女シスターにも手伝って貰った。

 「ご飯が出来たよ!」

 修道女シスターの合図に子供達がわらわらと集まってきた。食堂はグレイス孤児院の子供や職員達もいるのでぎゅうぎゅう詰めである。

 年長の子供が配膳し、小さな子供は行儀良く席でご飯を待っていた。躾が行き届いていて何よりだ。

 いただきますの大合唱と共にそこらかしこから美味しいと声が聞こえてきた。

 「ヒヨリ様、ありがとうございます。勉強だけじゃなく食事までも頂いて何とお礼をしたら良いのか…」

 感涙するグレイス孤児院の院長マリア・テレサの言葉にインノチェンティ孤児院の院長のリアムが同意する。

 「子供達が店に立てるまでは食事の支援をさせて貰うよ。頑張って働いてくれれば、それが恩返しになるからね。」

 低賃金で頑張って働いて貰う為の先行投資と思えば安いぐらいだ。

 ゲスイことを考える私を他所に孤児院の皆が感謝の眼差しを向けたのであった。



 孤児院の建て替えを順番に行っている中で、子供達は着実に読み書き算術とマナーの勉強をこなしていた。読み書きについては漫画を用意したので上達が凄い事になった。漫画に関しては秋月しゅうげつの宿泊所で貸し出しをしている。これを目当てで泊まりに来る客が絶えないのだ。

 料理に関してもピーラーや万能スライサーを使うことで包丁を使わなくて良いように工夫した。料理は見栄えがして簡単なレシピを教え込んだ。

 「これ便利ですよね。」

 孤児院で一番料理が上手なノーマが便利グッズに感心する。

 「これ全部ヒヨリ様が考案して作ったんでしょ!凄いわっ!」

 キラキラした眼で私を見るエマに内心、地球から持って来ただけだよ!なんて思いつつ

 「まーね、料理関係の特許は孤児院に入るようにしたから運営も楽になるんじゃない。」

 キッチン用品の一部は各孤児院に特許料が入るように手配したので、余程のことが無い限り潰れることは無いだろう。

 「ヒヨリ様は天使様ですね!秋月しゅうげつに出してる商品の全てはヒヨリ様のアイディアだと聞きました!素晴らしい才能を女神ユーノー様から授けられたんですね!」

 罪悪感が沸く賛辞から

 「ソフィアからマナーを習っていると思うが、皆はどれぐらい出来てる?」

ガッツリと話しを逸らした。私のアイディアじゃないんだ、すまぬ、すまぬ。

 「ソフィア先生から歩き方や喋り方、姿勢の正しさを学びましたよ。接客の基本5原則は毎日復唱してます!チビ達はまだまだですけどね。」

 ソフィアの厳しい躾…げふん、教えは孤児院に浸透していっているようだ。良かった、良かった。

 「今日はヴェニスから制服を作ってくれる人が来るからな。練習だと思って対応してみな。」

 人が多いのでグリッドに頼んで孤児院にお針子を寄越して貰う事にしたのだ。働ける人数は三つの孤児院合計で25名になる。靴のサイズも一緒に測って貰うつもりだ。

 「制服!凄く楽しみなんですよ!秋月しゅうげつの制服って凄く可愛いって評判だから楽しみで!早く着たいよー」

 「女はそう言うの好きだよな。」

 「男の子の制服ってどんなのだろう?」

 わいわいと賑わうキッチンで私は苦笑を漏らした。

 食事が終わった頃にヴェニスから派遣されたお針子達によって制服と靴の採寸がされるのであった。

 後日、各孤児院に制服と靴が届き、子供達のやる気が増したのは言うまでもない。


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