第12話 なすと豚バラのピリ辛みそ炒め

 傭兵マーセナリーのメンバーと早速ダンジョン調査を行っている。

 メンバーは傭兵マーセナリーのギルマスであり 剣闘士グラディエーターのアルヴァン、盾使いシルダーのウィリアム、狩人 ハンターのメイソン、工作員サッパーの ヘンリー、修道女シスターのオリビア、魔導士のシャーロットだ。

 スタンビートの兆候があるとのことだが、どうも魔物が弱い。彼等曰く魔物が強くなっているとのことだが、私からしたら中の上レベルの魔物ばかりなのだ。

 「カサンラカのダンジョンの階層って何階層なんだ?」

 ゲーム時代で有名どころのダンジョンなら分かるがカサンラカのダンジョンなんて聞いたことがない。

 「70階層だ。あんた強いな。最初はどうなるかと思ったが、俺達より強いぞ。」

 アルヴァンの言葉に

 「そうですわ。私達では手強い相手も一刀両断なんですもの!お陰で初日なのに7階層まで来れました。」

オリビアが賞賛する。他の面々もうんうんと頷いてるので何だか照れる。本当は私が強いんじゃなくてモンスターの弱いだけだけどね。

 例えばゲーム時代ではゴブリンはEランク以下だったのが今はCランクに該当する。ロックベアなんて雑魚魔物が此処ではBランク指定の魔物に該当するのだ。

 「魔物の量も多くて強いからもっと苦戦するかと思ったが、ヒヨリが倒してくれて助かる。」

 「それに罠を的確に回避してくれますもんね。俺の仕事無くなっちゃいましたよ。」

 メイソンとヘンリーの言葉に

 「ヒヨリは私の攻撃よりも早いからね。」

シャーロットが頷く。

 「そろそろご飯にしませんか?」

 オリビアの言葉に皆が賛成した。セーフエリアに移動して今日の行動は此処までになるようだ。

 セーフエリアで

 「あのー食事は私に任せて貰えないか?」

立候補してみると

 「それは嬉しいが良いのか?」

アルヴァン達は困惑した表情かおをしている。ダンジョンなんて携帯食で済ませるのが普通だろうし。

 「構わないよ。ご飯は美味しくないと冒険は出来ないからね。」

 食い物が異常に不味いこの世界で、美味しいご飯が食べたい。私は食文化の聖地日本で育ったのだ。不味い飯で生活しろと言われたら絶望する!

 バンブーテーブルを空間魔法アイテムボックスから取り出し、食材と調味料を並べていく。勿論、カセットコンロとフライパンに鍋も用意する。

 なすは一口大に切って、水につけてアク抜きをし、アクが抜けたら味噌、コチュジャン、豆板醤、砂糖、酒、みりんを入れて味を付ける。

 豚バラは4㎝くらいに切り、ピーマンは乱切りにする。

 熱したフライパンに油をひいて、豚バラを炒める。

 豚バラに火が通ったら、なすとピーマンを加えてさらに炒める。

 混ぜておいた、調味料を入れて、よく絡めて出来上がりだ。これだけだと物足りないので焼きれんこんとなすのアンチョビーサラダと野菜たっぷりミネストローネを作った。

 それぞれおかずは皿に盛り、スープを入れて各自に渡していく。最後にクロワッサンを渡して食事にする。

 「今日のメニューはなすと豚バラのピリ辛みそ炒め、焼きれんこんとなすのアンチョビーサラダ、野菜たっぷりミネストローネ、クロワッサンだよ。」

 デザートはないけどね。そうそうダンジョンに潜る前に私はポイントを消費して水魔法、氷魔法、魔力操作を取得した。本来は魔法使いの系統が自然に取得するのをポイントで強引に取得しているのである。ぶっちゃけ力技なのだ。ただ取得するだけでは使えないので熟練度をPTポイントで上げた。水と氷魔法は料理に使うためだけに取得したので熟練度は両方とも20と低い。

 「っ美味い!!何だこの美味さは!?絶対に王宮の食事より美味いぞ!」

 見たこともない料理を前に尻込みしていたメンバー達は、ご飯を一口食べ美味い、美味いと言いながらご飯をかき込んだ。

 「本当に美味しいわ。豚の肉が此処まで美味しくなるなんて凄いわね。」

 シャーロットの言葉に

 「あぁ、お金が厳しい時にしか手を出してなかったが、こんなに美味い料理は初めてだ!」

アルヴァンが同意する。

 「このパン?も美味しいですわ!サクサクッとした食感がたまりませんわ。」

 上品にかつ高速にクロワッサンを食べているオリビア。

 「俺はスープが一番美味いと思う。一口めは少しあっさりめに感じるんだけど、野菜の旨味が溶け込んでいてとっても美味しい。食べれば食べるほどに旨味をより感じて、スープを飲む手が止まらん。」

 食レポが上手いメイソンに

 「いつもは干し肉と乾パンなのに、こんなに豪華の食事が食べられるなんて夢のようだ。」

感無量とばかりのウィリアム。

 「酒は出せないが、林檎ジュースでも飲んでくれ。」

 コップに林檎ジュースを注いで渡していく。

 「……美味しい!」

 「本当だ。甘いだけでなく、リンゴの酸味も残っていて爽やかな味わいがする。」

 林檎ジュースも皆に好評のようだ。

 「この仕事が終わったら酒を御馳走してやるよ。」

 地球産のビールや日本酒などを飲ませて反応を見るのも楽しみだ。

 「本当か!?ヒヨリが用意する酒も美味しいのだろうなぁ。」

 酒のワードに食いつくウィリアム。

 「それにしてもこんな美味い料理が食えるとは依頼を受けて良かったよ。」

 「本当にね。最初はCランクの子と組んで調査って言われた時はどうしようかと思ったけど、ヒヨリは強いし、気遣いも出来るし料理も美味しいし!文句無しよね。」

 ご飯のおかわりをするシャーロットを皮切りに他のメンバーもおかわりしていった。多めに作ったので残るかと思ったが、全部綺麗に食べられていた。

 ご飯も終わり、環境に優しいパパイヤ洗剤で食器を洗い片付けていく。勿論、パーティメンバーにも後片付けの手伝いをさせた。

 「今日は此処で泊まるんだよね?」

 私の問いにアルヴァンが答える。

 「時間も遅いからな、今日は此処までだ。野営の準備をしよう。」

 空間魔法アイテムボックスからワンタッチテントを二つ取り出して組み立てた。一つのテントで大人4人収納出来るので、男性と女性に分けて使えるだろう。

 「ヒヨリ、これは何だ?」

 メイソンの問いに

 「テント…天幕といえば分かるかな?この中に入って寝るんだよ。寝袋も人数分あるから使ってくれて構わない。使い方は……」

テントと寝袋の説明をした。テント内部にはLEDライトのランタンを下げておく。勿論、LEDライトの使い方も説明した。

 「随分と便利な品物だな。これはどこで売っているんだ?」

 アウトドアグッズに興味津々な ヘンリー。

 「これは私が作った物だよ。」

 大嘘です。スキルに鍛冶があるので変に思われないだろう。

 「凄いな。これは売らないのか?」

 アルヴァンの疑問に

 「売っても良いが安くないぞ。テントは金貨23枚、寝袋は金貨1枚、ランタンは銀貨5枚だ。ランタンは太陽の下で充電出来るから繰り返し使えるぞ。」

吹っ掛ける。Aランクなのだからお金は持っているだろう。

 「安いなじゃないか!!もっと高額かと思った。是非、全部買い取りさせて欲しい。」

 アルヴァンを押し退けてヘンリーが食いついた。

 「別に構わないが、調査が終わってからの引き渡しで良いか?」

 「それで良いよ。今は荷物になっちまうし、ヒヨリの空間魔法アイテムボックスに入れてくれ。こんなにコンパクトで持ち運びが便利なテントなんか凄いと思うぞ。」

 「持ち運びならこんなのはどうだ?」

 ノーパンクタイヤの折りたたみ キャリーカートを空間魔法アイテムボックスから取り出す。これは冒険者ギルドにでも売りつける予定だったものだ。

 「何だこれは?」

 メンバー全員が折り畳んであるキャリーカートを見て頭に疑問符を浮かべている。

 「これをこうするとっ!」

 大容量のキャリーカートになったのを見て驚く面々。

 「これなら持てない大荷物も便利に運ぶことが出来るよ。」

 「凄いな。これなら狩りに出た時に獲物を容易に運ぶことが出来るぞ!!」

 興奮するヘンリーは

 「これも譲って貰えないか?」

購入する気満々だ。

 「金貨30枚になるけど良いの?」

 定価1万7千円の商品である。

 「それぐらい大丈夫だ!寧ろその値段だと安いぐらいだぜ。ギルマス、買って良いよな?」

 アルヴァンに許可を取るヘンリー。

 「勿論だ。俺達のメンバーには空間魔法アイテムボックス所有者はいないから運べる荷物が限られているんだ。これがあれば飛躍的に仕事がしやすくなるな。」

 どうやら好感触のようだ。念の為、各種道具はカサンドラの商業ギルドで特許を出しておいたから売るのは落ち着いてからでも大丈夫だよね。

 「じゃあ、商品の受け渡しは依頼達成後ってことで良いかな?」

 「宜しく頼む。他にも便利な品物があれば購入したい。」

 「分かった。依頼達成したら飲み会をしようよ。その時に便利な商品を紹介するってことでどうだ?」

 私の言葉に一同が頷いた。

 こうして幸先良くダンジョンの調査が始まったのであった。

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