第9話 ビルと一軒家をゲットしました。


 地球に居られるギリギリまで滞在して、一旦ウォーズの世界へ行った。ふとした疑問で、試しにスマホを使えるか確認したところ驚くことに使えた。原理は解らないが私のスキル空間支配でスマホの電波を日本と結んでいるようだ。

 試しに攻略サイトで発表されていたウォーズの地図アプリをDLダウンロードして使ってみたらGoogマップのように使用出来た。これは使えると思って攻略アプリもインストールしてみる。こちらも問題なく使えた。

 「スマホが使えるとはラッキーだと思っておこう。」

 娯楽の少ないこの世界でスマホが地球と繋がっている状態で使えるのは都合が良い。

 私はカサンラカへ向かう事になったので、空間魔法アイテムボックスから車を取り出し、スマホをカーナビ代わりにしてダンジョン都市カサンラカへ出発した。

 オーバーテクノロジーと言われるかもしれないが何日も掛けて移動するなんて御免である。スキルの空間支配があるから一度行った場所であれば転移出来るのだが、カサンラカはまだ行ったことが無い場所だから転移出来ない。

 昼夜車を走らせること一週間でダンジョン都市カサンラカの近くの村まで来れた。作り置きしていたご飯も無くなったので、人気の無い場所に移動し地球に戻った。

 速達で伊勢神宮から郵便物が届いていた。譲渡される曰く付きのビルと家の間取りと曰く付きになった原因が記載されている。書類をパラパラと眺めていたら

 ♪ー-♪ー----♪♪

スマホから着信鳴った。

 見たことの無い番号だ。

 「はい、秋月あきつきです。」

 『三屋みつや不動産の須佐すさと申します。秋月あきつき燈由ひよりさんの携帯で間違い無いでしょうか?』

 「はい、私が秋月あきつき燈由ひよりです。」

 『世田谷区のビルと京都の亀岡にある一軒家の譲渡の件でお電話させていただきました。』

 彼の言葉に天照大神あまてらすおおみかみ様が言ってた言葉を思い出した。

 「曰く付き物件でしたよね。」

 『押久保おくぼ様からお伺いされてるんですね。贈与契約を書面にて締結と土地の所有権の移転登記手続を行い、名義を変更が必要になります。贈与税も発生しますので、金額の見積もりも出してあります。手続きをされるお日にちはいつ頃が宜しいでしょうか?』

 押久保おくぼさんじゃなくて天照大神あまてらすおおみかみ様から聞いたんだけどね。

 「急ですが、明日とか大丈夫ですか?」

 ダンジョンに潜ってしまえば最悪数ヶ月は地球に戻ってこれない可能性がある。出来れば早めに手続きを済ませたいのだ。

 『明日ですね。スケジュールを確認します。』

 5分程待たされたが

 『16時なら空いてますね。』

空きがあってほっとした。

 「では明日の16時でお願いします。」

 『分かりました。詳細はショートメールに送りますので確認をお願いします。お時間有難うございました。明日宜しくお願いします。』

 「宜しくお願いします。」

 プツっと通話が切れる。

 「ビルを貰っても管理に困るんだよねぇ。う~ん、ビルをリノベーションしてマンションにして賃貸にしようかな。」

 配線や水回りの増築、Wi-Fiの設備や部屋の増築とお金は掛かる。ネットで相場を検索したら目玉が飛び出るような金額だった。手持ち分でも税金を支払いきれない。リフォーム代なんて無理な話だ。金貨を換金してお金を作るか?ダンジョン産の宝石を売りに出すのでも良いが地球では高く買い取って貰えなさそうなんだよね。一応、粒の大きな物は両方で鑑定に出して、値が高い方で売ろう。そのお金でリフォーム代と税金の支払いに回そうと思う。

 翌日、私は無事にビルと一軒家を手に入れることが出来た。相続税の支払いがあるのでお金が足りないか心配になる。

 「悩んでも仕方ない。先ずは現地に行って物件を内覧しないと!」

 早速、ビルの内覧の予約を入れた。

 私は夕食を済ませ、明日のビルの内見に備えた。



 ビルは30階建てだった。高層マンションになるなぁ、と思いつつビルの内見を済ませる。

 時間もまだあったので宮大工の会社でネットで高評価だった《もみじ》という会社に予約を入れたら即日担当者に会えることになったので、もみじに足を運んだ。

 「いらっしゃいませ、秋月あきつき様」

 「本日は宜しくお願いします。」

 私は応接室に通された。ふかふかのソファーが気持ち良い。

 「秋月あきつき様、いらっしゃいませ。秋月あきつき様の担当をさせて頂きます小川です。宜しくお願いします。」

 名刺を受け取り、持参したビルと一軒家の間取りを見せる。

 「ビルは屋上に、一軒家には庭に社を建てて欲しいんです。」

 書類を手に取り目を通す小川さんの目が険しくなっていく。

 「……これはちょっと難しいですね。」

 「事故物件だからですか?」

 「はい。この界隈では有名ですからね。」

 渋い顔をする小川さんに

 「お祓いをしますし、金額も1,5倍出すのでお願い出来ませんか?」

粘ってみた。受けて・受けないと押し問答の末に小川さんは棟梁に相談しますと退席した。

 「おう、あんた厄介な案件を持ってきたらしいな。俺はここの棟梁をしている増山ますやま剛生たけおだ。宜しくな。」

 しゃきしゃきした感じの70代の男性が応接室に入って来た。

 「もみじは腕の良い職人さんが多いと聞いたので是非お願いしたいんです。」

 「そうだな…2倍なら受けても良いぜ。」

 提示金額のに2倍なら依頼を受けるという棟梁の言葉に私は沈黙した。他の会社に依頼しても良いが、腕が確かな所でお願いしたい。また事故物件だからお断りされる可能性も高い。

 「腕の良い所だと断られると思うぞ。」

 棟梁の言葉に

 「宜しくお願いします。予算はビルと一軒家合計で500万でお願いします。」

釘を刺しておく。あまり金額はかけられない旨を伝えた。

 現在お金はマイナスになるのだ。お社の金をケチるわけじゃないけど、出せる金額も限りがある。

 「分かった。それで受けてやるよ。」

 「ありがとうございます。着工の日取りなんですけど、なるべく早めにお願いことは出来ますか?」

 「おう、早めとなると二週間後になるな。それで良いか?」

 「分かりました。それでお願いします。前金置いて行きますね。」

 バックから150万を出してテーブルに置く。

 「金払いが良いな。嫌いじゃないぜ。おい小川、領収書持ってこい。」

 小川さんは一旦奥に引っ込み、領収書を持ってきた。私は領収書を受け取り

 「お社お願いしますね。依頼を受けてくれてありがとうございました。」

お礼を言って退席した。

 話が纏まって安心する。一軒家は築3年と真新しいのでリフォーム不要だ。ビルのリフォームが必要だがお金の問題で一旦リフォームを保留とした。日にちが近い順に神社にお祓いを依頼する。

 地球に居られるギリギリの日数でお祓いも終わり、私はカサンラカへ向かったのであった。


 

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