第8話 天照大神の信託を受ける
ウォーズの世界から一時的に帰宅している。
地球にある私物を
使ってない私物は段ボールに纏めておく。向こうで適当に売り払う予定である。使用していない物の大半が雑誌の付録である。集めるのは好きだが使うにはチープ過ぎて使わなかった代物だ。
「結構、荷物が多いな。」
黙々と作業を熟すこと三時間、やっと終わったので休憩を入れようとキッチンへ向かった。
ーー♪ーー♪♪
スマホの着信音が鳴った。
誰からだろうとスマホを確認すると会社からだった。
「はい、
『お久しぶり
「
『源泉徴収票、雇用保険被保険者証、離職票、年金手帳、退職証明書を会社に取りに来るか送付希望か確認したくて電話したの。取りに来る場合は有給休暇明けだから早くて5月14日以降のに来てね。送付の場合は1カ月ほど時間が掛かるからね。』
「態々有難う。では5月14日の午前中に伺うよ。」
『了解!
割と仲良しだった
「虐めとかないよ。というか私が黙って虐められるわけないじゃん。実は体調が悪化しちゃってね。何度か家で倒れててさ、会社で倒れるかもしれないと思って急だけど辞める事にしたんだ…」
人間卒業してしまったのでとは口が裂けても言えない。
『それなら休職という方法もあるよ。
「…病院には怖くて行けてないんだよね。リモートワーク中に倒れたら意味ないと思うし、貯金もそこそこあるから一度会社から離れてみるよ。」
『……そう、これからどうするの?』
「近々家を売って田舎でのんびりしようかなって思ってるよ。」
『じゃあ、新しい住所が分かったら連絡して欲しいな。元気な時に飲みに行こうよ。』
嘘ばかりですまん、すまん、と心の中で謝りながら
「了解。引っ越しして一段落したら連絡するね。」
飲み会の約束をして電話を切った。
今日が4月21日だし、まだ時間はある。
別宅を田舎に購入して、普段は東京で過ごすという手もあるかな。
「物件探ししないとなぁ。」
現在の全財産は合計で三千万弱である。家の購入費に充てられるのは最高でもリフォーム代込みで2500万円だ。500万は保険や維持費に使用するので削れない。
私はスマホを操作して良い物件が無いか調べる。
「う~ん、やっぱり23区は高いなぁ。間取りも狭いし、どうしようかな…」
ウォーズの世界の物で良い物があれば地球で売っても良いと思うし、地球の物は向こうで売る予定だ。在庫を置いておく場所を確保しておきたいためマンションは除外している。
「この際、事故物件でも良いかな。信託のスキルもあるし、駄目元で
そうと決まれば伊勢神宮にお参りしに行かねば!
貰ったまま未開封の大吟醸があったはず。これとお酒のおつまみで購入していたプレミアム缶を手提げ袋に仕舞い出発の準備をする。
思いだったら吉日とばかりに私は今、伊勢神宮にいる。新幹線とバスで伊勢神宮にやって来たのだ。
夕方だからか人がまばらだ。荷物を片手にいざ参らん!
鳥居を潜ったところで宮司さんが私に声を掛けてきた。
「もし、そこの貴女、少し良いでしょうか?」
「私ですか?」
何だろう?と首を傾けると
「えぇ、貴女です。私はこの伊勢神宮の神主をしている野々村と申します。
彼は私を多分だが本殿へ案内した。
本殿へ到着し
「野々村さん、これ
私はお供え物を彼に手渡す。
「良い品ですね。
お供え物を大切に受け取ってくれた。
「どうして私は此処に連れて来られたんでしょう?」
確かに
「
そう言って彼は本当に席を外した。
う~ん、信託が欲しいがどうすれば良いのかさっぱり分からない。10分ほど時間が経過した頃、ふっと視界が真っ白になった。
上下の感覚が無い真っ白な世界に佇む美しい神の名を呼んだ。
「
「ふふ、息災であったか?」
麗しい微笑に思わず溜息が零れる。
「はい、元気に過ごしてます。
「私に出来るのはそれぐらいだからな。」
「それでも有難いです。そうだ、
「どれ話してみよ。」
「私の種族が魔族になったことで寿命が長くなったじゃないですか?此方で過ごすのにも拠点とお金が必要になるので、新しく家を購入しようと思うんですけど…お金に余裕が無くて困っているんです。そこで事故物件を購入しようと思うんですけど、幽霊をどうにかならないのかな?って思って……」
女神チケットを使えば解決するだろうけど、そんな事でチケットを消費したくない。
「ふむ、異世界とはいえユーノーの加護があるから幽霊や妖は寄ってこぬだろう。」
「じゃあ、事故物件を購入しても悪霊とか逃げちゃうってことですか?」
期待を込めて彼女を見た。
「その認識で間違いない。家を買うならお勧めの物件があるぞ。」
ニコニコと笑顔の彼女に
「……それって堕神ってことはないですよね?」
凄く嫌な予感がして聞いてみれば
「まだ堕ちはいないが祟ってはいるな。」
爆弾発言をいただきました!ヤバいやつじゃないですかー。
「いくら異世界の神の加護があったとしても手に負えませんって!」
「住処を奪われたのだ。祟っても致し方ないだろう。私からもお前に手出しせぬように申し伝えておく。丁重に扱えばあやつの加護を得ることも出来よう。どうだ?」
どうだ?って、そこに拒否権はないじゃないですよね!
ガクっと肩を落として
「予算内の物件でお願いします。23区の都内と田舎の二つ購入するので!私が都合付けられる最大の金額は2500万円なんです。」
予算内じゃないと購入しないと念を押した。
「うむ、お金は掛からぬから安心せよ。」
「お金が掛からないとは?」
「
「その者達は
二柱とも有名な神様じゃないですかー
「せぬから祟られておるのじゃ。」
「私まで祟られるのは勘弁して欲しいんですけど……」
ぶっちゃけお家から追い出された神様の怒りに触れたくないのだと主張した。
「きちんと二柱にはお前には手出しせぬように言い聞かせる。お前は新に二柱の社を作って管理すれば良いだけの話だ。ほれ、これをやろう。」
彼女は、ぽいっと私の掌に勾玉を乗せた。
「悪しき
「ありがとうございます。」
艶々とした勾玉を撫でると心が温かくなった。
「そろそろ時間切れだな。
ふわりと風が頬を撫でる。
くらりと眩暈の後に私は現実世界に引き戻された。
夢かと思ったが手の中にある勾玉を見て現実だと思い直す。
私はお札を頂いて空間支配を使用して帰宅するのであった。
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