第6話 調味料を売ろう
私はぼちぼちと薬草採取をしたり、スライム討伐をしたりして日々を過ごしていた。
「調味料を売って無かった。」
宿で
商業ギルドでお金に変えよう。大体の相場がいくらぐらいか知りたいし、足元みられないように頑張らないと。私は身支度を整えて商業ギルドへ向かった。
商業ギルドは冒険者ギルドと違い豪華に見えた。
「すみません。商業ギルドに登録したいのだが、大丈夫だろうか?」
受付にいる受付嬢に声を掛けると
「えっ……はい、大丈夫ですよ。こちらの書類に記入して下さい。ランクはF~Sまであります。Fランクは露店・委託販売。Eランクは移動式店舗。Dランクは小さな店舗。Cランクは中規模な店舗。Bランクは大きな店舗。Aランクは国内に複数支店を持っている店舗。Sランクは皇室御用達の店となります。どのランクにされるか希望はありますか?」
彼女は私に書類を渡し、商業ギルドの説明をしてくれた。
「そうですね、Fランクでお願いします。」
「分かりました。此方がギルドカードになります。紛失しますと再発行手数料が発生するので注意して下さい。」
「分かった。それと買取をお願いしたいのだが大丈夫だろうか?」
「大丈夫ですよ。商品を見せて頂けますか?」
彼女の言葉に私は砂糖・塩・胡椒を取り出した。取り出された品を見て顔色を変えてどこかへ連絡を取る彼女に私は何か不味いことでもしたか?と少々不安になった。
「お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうです。どうぞ此方へ」
私を案内する受付嬢の後を付いていくと重厚で趣のある部屋に通された。
「私は商業ギルドのギルドマスターをしているエイベルだ。ようこそ商業ギルドへ。」
私の容貌に少し驚いたようだが、私の種族が魔族と理解し直ぐに大人な対応を取って来た。ここで子供扱いや対等に扱われないと判断したら即刻破断にするつもりである。
エイベルが小皿に少量ずつ中身を移した。手で感触を確かめ、舌で味を確かめる。味を確認した瞬間、彼の目が驚きの表情をした。
「君が持ち込んだ品々は実に素晴らしいものだ。雑味がなく不純物も一切ない。王へ献上しても良いぐらいの品物だよ。特に透明なガラスは見たこともないぐらいに美しい。」
「塩が1㌔で金貨5枚、砂糖1㌔で金貨27枚、胡椒1㌔で金貨480枚で如何でしょう?」
エイベルの提案に私は元手一万円が大いに化けてくれた。しかしここで即答してしまっては駄目だ。解析鑑定の結果では相手の提示した金額が適正価格より少ないと判明した。適正価格では塩が金貨7枚、砂糖が金貨30枚、胡椒が金貨500枚である。舐められたら負けだ。
「おかしいな。適正価格より少ないとは別の所に卸した方が良いかもしれないな。商会に卸した方が適正価格で買い取ってくれるだろう。この話は無かったことに。」
私の言葉にエイベルの顔色が悪くなっていく。
「ちょ、ちょっとお待ちを!申し訳ございません。提示した金額が間違っておりました!、砂糖と塩は品薄が続いてますので塩が金貨10枚、砂糖が金貨40枚、胡椒は金貨550枚で買い取りしたいと思います。如何でしょう?是非、我が商業ギルドで買い取りさせて頂けませんか?」
大幅に上がった金額に私は内心のニヤニヤを抑えて
「まぁ、良いでしょう。今後は見目に惑わされないように注意した方が良いですよ。」
釘を刺しておく。
「はい!その節は申し訳ありませんでした。あの、これらの品々は定期的に仕入れる事は可能でしょうか?」
「今後このような事がなければ滞在中は商業ギルドに卸しても良い。」
「勿論です!是非、我がギルドに卸して頂きたい。相談なのですが、塩と砂糖が現在品薄状態で値段も高騰しているのです。高価買取するので出来ればあるだけ全部卸して欲しいのですが如何でしょうか?あと胡椒の瓶だけ卸すことは出来ますか?」
彼の言葉に
「分かった。品物を用意するのでどれぐらい必要か教えて欲しい。胡椒の瓶は同じ形の物を用意することは可能だ。ただその透明度を見て分かると思うが値が凄く張る。瓶は一つにつき金貨1枚と銀貨2枚になる。こちらは値下げ不可だ。」
思いっきりぼったくります。ええ、良心の呵責などありませんよ。だって向こうも買い叩こうとしたからね。一瓶100円が金貨1枚と銀貨2枚に化けると思うと涎が出そうだ。
私の強気な設定にエイベルが考え込んだ。
「瓶は他にも品を揃えている。例えばこれなんかどうかな?」
「これは美しい!この瓶も金貨1枚と銀貨2枚なのかい?」
「こちらは細工が細かいので値段が少しはるが、金貨3枚と破格の値段だと思うよ?」
どっちも
「むむっそうですか、分かりました。では通常の瓶を10個、柄の瓶は20個欲しいな。塩と砂糖はかなりの量が欲しいがどれぐらいなら用意出来そうですか?」
「最大100㌔だな。」
「ひゃっ百ぅ!?そんなに用意出来るのですか?」
びっくりするエイベルに
「不可能なことを可能とは言わない。商売で信頼関係を築けないのは致命的だ。ただそのぐらい用意することになるなら一週間時間を必要とする。」
誠実ですよとアピールする。嘘を吐く利点もないしね。調味料だって卸業者から買い付ければ安いし、自宅に持ってきて貰えるからね。麻袋への詰め替えが面倒臭いだけだけど。
「そ、そうなんですね。では塩と砂糖をそれぞれ100㌔、胡椒を10㌔お願いします。」
「分かった。一週間後には用意する。」
私は手帳に塩・砂糖100、胡椒10とメモした。
「あのーそれは何ですか?」
私の手元を不思議そうにするエイベルに
「手帳だよ。こういうのは此処でも売っているだろう?」
何でもないように返せば
「あることはありますが、変わったデザインですね。それにそのペンもインクを付けないで文字が書けるとは凄い!!特許が取れますよ!」
何故か興奮気味に話しかけてきた。
「特許?」
「はい!特許とは、「発明」を保護する制度のことです。発明者の権利を守るだけではなく、年間で特許料が死ぬまで入ってきます。」
ゲーム時代ではなかったシステムに私は良いことを考え付いた。地球の物をこちらに持ってきて特許を取りまくろう。
「ならこの手帳とボールペンの特許を取りたいと思うんだけど申請出来る?」
私は
「出来ますよ。手帳の真ん中にある金具は面白いですね。こうやって挟んだ紙を入れ替えることが出来るんですね。穴を等間隔に開ければこの手帳に使えますね。ボールペンはどうやって作られているのでしょう?分解してしまったら怖いですね。作り方とか書面に起こして貰えますか?」
「分かった。調味料を届けた時に手帳とボールペンの作り方を書面に書いて提出するよ。一つはサンプルとして特許申請に必要だと思うから提出しておいて欲しい。もう一つはエイベルさんにあげるよ。売れると思ったら声を掛けて欲しい。ある程度の数は用意出来るからね。ボールペンは芯を入れ替えると繰り返し使えるからね。」
これも商売と売り込みをしておいた。
エイベルは
「ありがとうございます!その時は是非商業ギルドに卸して下さい!」
「ボールペンが銀貨3枚、手帳は紙なしで銀貨8枚、ボールペンの芯が銅貨7枚でどうですか?デザインも変わってくると値段も変わりますけど応相談ということで。」
「思ったよりも安いですね。特許の割合はどうします?」
「そうだね、2割で良いよ。」
私の言葉にエイベルが
「それは少なくありませんか?特許は相場は5割ですよ。」
相場を教えてくれるが
「あまり暴利だと他の人が作れないからね。それに私と同じレベルの物が作れるとは思わないし。」
同レベルの品物を用意するのは困難であると言えば納得した。
地球産の物は技術力が凄いからね。こっちの手帳は羊皮紙を糸で括っているメモ帳のようなものだ。落差が凄いのだ。
「ヒヨリ殿、この手帳に挟まっている紙も一緒に卸して貰えるのだろうか?」
「卸すことは出来ますが、高級紙なので金貨1枚しますよ。」
「それでも安いぐらいですよ。紙の特許を取るのはどうですか?」
「紙の特許は取る予定はないかな。その紙は特殊な作成方法だから他人に知られるわけにはいかないんだよね。これと同じ紙を作られたなら別にそれでも構わないし。」
ケチって手帳の専用紙を買わずに羊皮紙に穴を開けて使っても別に文句はない。穴開けが大変そうではあるが私の関与するところではないと思う。その辺は売り手が好きにすれば良いと思うのだ。
一週間後に調味料と手帳100個、ボールペン100個を卸す事を約束して私は商業ギルドを後にした。
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