第5話 スライム討伐


 冒険者ギルドに登録した日の翌日、私はスライム討伐のクエストを受注した。勿論、この体を戦闘に慣れさせるためである。いきなり高ランクの魔物と戦って死にたくないからだ。空間魔法アイテムボックスにポーションがあるかを確認して私はスライムが出現する草原に来ている。

 「見晴らしが良いね。」

 索敵をすれば南2キロ先にスライムが点在していた。私は技術アーツの一つである俊歩しゅんぽを発動させスライムのいる場所へ移動する。

 初めて発動した俊歩しゅんぽの威力は凄く、一瞬でスライムの元に辿り着いた。

 「さて、スライムを10匹討伐すれば依頼完了だったな。」

 私は集中して村正に手をかける。

 技術アーツである抜刀術を発動した。体が覚えているのかスムーズに動く。10体のスライムが一瞬で切り捨てられていた。

 この抜刀術は武器出し攻撃後一定時間、会心率40%が上がる技だ。習得は巻物・秘伝・口伝・きわめの四種類ある。巻物は金貨を出せば購入し習得が出来る。秘伝はクエスト完了で習得可能。口伝はレイド、きわめはレギオンレイドで稀に習得が出来るのだ。因みに抜刀術は秘伝で習得した。

 「動きは特に問題が無さそうね。」

 他の技術アーツを試したいので暫くスライム狩りをすることにした。

 因みに狩ったモンスターは自動的にギルドカードに記録されるとのこと。随分便利になったものだ。



 色々な技術アーツを試し、スライム以外のモンスターも問題なく倒せることが証明出来た。

 成果はロックベア2体、ゴブリン9体、猪型のモンスターであるヴァラーハ2体と初日にしては良い結果だと思う。解析鑑定ではロックベアとヴァラーハの肉は食肉となっていたので調理して食べてみようと思う。

 冒険者ギルドに戻り依頼達成の報告をする。

 「依頼達成しました。買取はどこでしている?」

 受付嬢にギルドカードを渡す。

 「ギルドカードをお預かりします。」

 彼女はギルドカードを読み取り依頼達成を確認した。

 「ヒヨリさん、ロックベアとゴブリン、ヴァラーハまで狩っているんですね。ちょっと待って下さいね。」

 カタカタと何か作業をしている。

 「あぁ、ありました。丁度ゴブリンとヴァラーハの討伐依頼が出てたんですよ。これも依頼達成になるので報奨金が出ますよ。スライムが銀貨1枚、ゴブリンはCランクで銀貨5枚、ヴァラーハはBランクで金貨120枚ですよ。レベル99は凄いですね!素材の買い取りはあちらでしてます。」

 お金を渡してくれた彼女に礼を言って私は買取所へ向かった。



 「解体と買取お願いしたい。」

 「おう、品物はどこだい?」

 作業員の男の言葉に私は疑問符が浮かんだ。普通は空間魔法アイテムボックスに入れているだろうに。

 「あぁ、ここだ。」

 空間魔法アイテムボックスからゴブリン、ヴァラーハ、ロックベアを出していく。

 「あんた空間魔法アイテムボックス持ちか!珍しいな。」

 興奮気味の男に空間魔法アイテムボックス持ちが珍しいとは思わなかった。ゲームの時はプレイヤー全員が空間魔法アイテムボックスを持っているからだ。

 「解体はどれぐらいかかる?」

 「明日の昼には解体が出来ている。あんた期待の新人なんだろ?」

 「さあ、どうだろうね。単にレベルがランクと見合ってないと言われただけだよ。」

 出来ればダンジョンに潜れるEランクにはなっておきたい。ゲームでは自由にダンジョン探索が出来たが、実際はEランク以降の冒険者に限定されている。一般に開放されているダンジョンは少ないらしい。

 「ゴブリンは素材として使えないがたまに魔石が出る。ゴブリンの魔石にあまり値打ちが無いが、あんたはヴァラーハを狩ってるからな。あの肉は高級食材なんだ。是非とも卸して欲しいものだ。」

 「ヴァラーハの肉はそんなに美味いのか?ロックベアはどうだ?」

 正直この世界の食事は不味いのだ。それでも美味い肉というなら期待は出来る。

 「ロックベアは普通だな。肉が少々固いのが難点だがな。」

 「そうなのか、まぁ食うのは私一人だから肉の半分は卸しても良い。」

 「そりゃ有難いね!じゃあ、明日の昼頃にでも取りに来てくれ。」

 男の言葉に頷き、私は冒険者ギルドを後にした。

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