第24話 「普通」の幸せは俺の手には届かない!

 断酒生活4日目に突入した今日、俺は酒を飲んでしまった。酒が無いとめちゃくちゃ退屈で耐えられなかった。3日坊主だ。


 今日の飯はコンビニで買った「ミニ冷やし中華」だ。278キロカロリー。今日の食事はこれだけにしておく。缶チューハイも何本か飲むから。


 俺は毎日アパートの中でほとんど動かないから、適正カロリーは1000くらいだと思う。普通に3食食ってたら馬鹿みたいに太ってしまう。


 俺は内面が気持ち悪くて終わってるから、せめて外見は美しく在りたい。(別に美しくないけど……)


 あーあ毎日つまんねえや。何も楽しくない。


 何もかも飽きてしまった。


 目的のない人生を送るのは退屈だ。だが、やりたいことがない。昨日は単発バイトで疲れた。


 今は、椅子に座ってタバコを吸って音楽を聴いてる。


 こないだNetflixで見たアメリカの番組がめっちゃ面白かったので紹介する。「バーベキュー最強決戦!」ってリアリティー番組。全米から集まったバーベキューの達人がチャンピオン目指して戦う番組だ。毎回違ったお題の中で戦っていく。


 最近は創作としての映画やドラマより、リアリティー番組やドキュメンタリー映画を見てる方が楽しい。


 ユーチューブに、酔いどれガード下なんちゃら、みたいなタイトルの引きこもりアル中のドキュメンタリーがあって、すごいおもしろかった。年老いた母親と同居してる引きこもり男の話だ。


 俺はアパートに暮らしてるけど、出来ればこの生活をずっと保っていきたい。また実家に戻ることのないように頑張る。


 ◆


 俺の今の生活は地獄からは程遠い。辛いことから逃げながら生きてるからだ。学校や会社に通ってる時は地獄だった。またあの地獄に戻るのが嫌だから、俺は定職に就く気は無い。こうして精神障害年金をもらいつつ、バイトをしながら適当に生きていきたい。


 俺が子供の頃は、「将来大人になったら結婚して子供を2人くらい作ってマイホームを建てて平凡に幸せに暮らすんだろうな」なんて漠然と思っていたが、こうしてリアルな大人になった今、そんな未来は俺の場合、絶対あり得ないと分かる。俺も身の丈は弁えている。


 そもそも、俺はそういう「世間一般的な普通」の生活を望んでない。


「クズ」でいい。


 俺は多くを望まないし、望む資格も無い。


 俺の人生の目標は、「犯罪をしないこと」だ。


 正直、自分の無能さや社会に絶望して狂って通り魔になる奴の気持ちが分かってしまう。だからこそ俺はそうならないように、最低限の優しさは持った男になりたいと思う。


 5chというネット掲示板に「秋葉原通り魔事件」の犯人に関するスレッドが立っていた。2008年に起きた大事件だ。この事件が起きた時、俺は小学生だったが俺の記憶にもはっきり残っている。


 本名は伏せるが、俺はこの事件を起こしたKという犯人に同情すると同時に、その思想に共感したことがある。ネットを見ればいくらでもKの残した言葉は出てくる。Kはいわゆる「社会的弱者」だった。


 ちなみにKの死刑は去年、コロナ禍の騒々しさの中で、ひっそりと執行された。


 俺はKのようには成らない。


 狂うとしたら、自分1人だけで狂う。おととい薬をODしたみたいに。


 ◆


 昨日、Amazonから「魔神の一皿」という料理本が届いた。おっさん配信者の本だ。


 俺は妹にこの料理本をプレゼントする予定だ。俺の妹はアパートで彼氏と同棲していて、よく料理を作る。だから料理本が良いかなと思った。俺は簡単な料理しか作らないし、妹にあげた方が有効活用してくれる。


 個人的に妹には世話になってるし、LINEのやり取りもよくしてるから、妹に「形に残るもの」をプレゼントしたい。「プレゼントあげる」と言ったら、妹は「大人になってプレゼントもらうこと超減ったから嬉しい」と言ってくれた。


 ぶっちゃけ今の時代、料理なんてユーチューブを見た方が手っ取り早くて分かりやすいけど、まあ俺なりの感謝の気持ちだな。これを読んで彼氏に美味しいメシを作ってあげてねっていう。


 俺の妹、俺とは違って、すごく良い奴なんだよ。





 続く

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