4話 New n. Dangers for doctors and assistants.

――視点は博士に戻る


「さあ、ハルのところに戻りましょう」

「でも博士、不自然ですよね」

「わかってるわ。もう一体Nがいるのかもね」

 事務室を出て、もと来た場所へと廊下を歩いていると、天井から音がした。

「助手、構えて。Nよ」

 相棒はまだ助手が持っている。私が一心同体で引き金を引かなくてはならない。

 その時、天井のタイルを外して、なにかが降りてきた――だが、その瞬間、私は後方に5メートルほど飛ばされていた。腹部に強い痛みがある。

 この能力は……?

「博士!」

 そう叫んだ助手は、数歩離れた先にいる人影に向けって相棒を構えていた。私が引き金を……。

 だが、発砲しても手応えはなかった。何が起きている。

「博士、銃弾が空中で止まっています。こいつの能力は、物を固定する能力とかじゃないですか」

 それは違う。なら私が気づくまもなく攻撃されることはありえない。

 考えられる能力はいくつかある。だが一番可能性があるのは――時間を止めることだろうか。

 だがそれにも不可解な点がある。時間止めているのに、なぜ助手も攻撃していなかったのか。そして、なぜ銃弾だけ止まっているのか。

 そう思考を巡らせていると、助手のもとに人影が迫っていた。

 刀を振って斬撃を当てようとする。

 だが、斬撃はそこに出現しなかった。

 その時、人影は助手からこちらに向き帰った。助手は攻撃されていないが、固まっている。

 仕方ない、助手が手に持っている相棒でもう一度攻撃をしよう。引き金を引こうとして気づいた。一心同体が切れている。

 一度離れよう。後退りをする。すると、元来た方向とは逆に来てしまったが、武器庫と書いてある部屋を見つけた。

 一度ここからなにか取ろう。

 部屋の中に入ると、一番にナイフが目についた。これで攻撃すれば、能力の謎が解けるかもしれない。

 部屋から出ると、助手に攻撃をしようとしている瞬間だった。助手は固まっている。

「こっちよ!」

 私はナイフに一心同体をかけつつ、10本ほど投げた。

 ナイフは人影に近づくと、約2メートル離れたところで止まった。そして、一心同体が切れた。

 これで、能力の謎が解けた。

 やつの能力は、自身の周囲の時を止める能力だ。

 だが、助手には大きく振りかぶった拳が当たった。致命傷にはなってなさそうだ。

 その時、人影が私に向かって猛ダッシュしてきた。逃げられない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る