3話 Hal's new capacity. Pinch and relief.

 ――視点はハルに。


 少し数が多い。2,3人ならなんとかなるが、8,9人はいる。どうやて切り抜けるか……。

 薙刀は複数相手が決して得意ではない。確かに相手を殺してもいいならやりやすいが、この人たちは無害だった受付嬢。殺す訳にはいかない。

 その時、ポケットの中で何かが動いた。

 私が中の物を取り出してみると、そこには重力を操るNカアもらったクッキーがはいっていた。

 日本においてきたはず。

 そういえば、「待ってください。これをいつか、助けが必要になった時に食べてください」と言っていたな。今がそれかもしれない。

 私はそれを、少し躊躇しながらも豪快にかじった。

 その時、周りの人々が一斉に吹きとんだ。

 あのNの力だ……。


 重力を使えば、少し気絶させるくらいは簡単だろう。

 ただ単に壁に衝突させればいい。

 私は受付嬢たちに対して、重力方向を横にするよう念じた。すると、ものすごいスピードで壁に叩きつけられた。

 これでよし。

 その時、一昔前のゲームの電子音のようなものが聞こえてきた。

 その音の先には、何もなかった。だが、嫌な予感はした。腕をクロスさせて防御態勢を取る。あんのうじょう、パンチのような攻撃が来た。

 透明な敵……。

 まずは位置を知らなくてはいけない。近くに粉末でもあればかけれるが、あいにく何もない。

 ならあのNを真似よう。いい参考だ。

 天井を、落とす。そうすれば潰せる。潰れなくても破片が多く落ちることで、こちらが戦闘しやすい地形を作ることができる。

 天井に向かって下向きに強烈な重力をかける。そのあいだ、電子音が近づいてきたので、周囲へ外側に向けた重力をかけた。これがあればちょっとした無敵かもしれない。もしかしたら博士より強いかも。

 走行していると、天井がミシミシという音を立て始めた。

「あ、……」

 私は思わず声を上げた。

 落ちてくる天井を避ける算段を考えていなかったからだ。


 天井が崩落してくる。このままじゃ潰される。

 その時、コツ、コツ、と靴音が大きく響いた。

「あれ?ハルさん、またピンチかな〜?」

 振り向いた先に立っていたのは、研修時代の同期、ユウだった。うざったい喋り方で、同期の間では避けられていた。

 なぜ彼がアメリカに?

 それより、天井をどうにかしないと。

 まてよ、ユウが得たNの能力なら……。

 彼が持っている能力。それは誰も知らない。だが、その一端ならみたことがある。

 物を消したのだ。自身に飛んできたものを。

 その時、ユウが手を振り上げた。天井の方向を指差す。そして……私の真上の天井だけ消えた。

 ユウは満足げな表情をしていた。

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