9話 Hal's behaviour. Confronting gravity.

――ミズノ博士が変身ボールを破壊した頃、ハルは管理局を駆けていた。


 さっきの発砲音は博士?そっちに向かおう。助手さんともはぐれてしまったし……。

 そんな時、後ろを見ると柱の陰から男が一人、こちらを見つめていた。

「誰?」

「これはこれはお嬢さん。私の気配をよく察知できましたね。褒めてあげましょうか?」

「あなたみたいな覗き見に褒められたくはないわ」

「そうですか。突然ですが、あなたには死んでもらわなくてはならないんです。わたしたちの目的のために」

 男がそういった時、体が後方に引っ張られた。能力を持っている。Nのようだ。私は腰から薙刀を取り出した。

 男はこちらに腕を伸ばすと、上に向かって指を指した。その時、私の体は上に押し付けられた。

「あんた、もしかして『重力』を操ってるの?」

「おや、鋭いですね」

 私は打ちつけられた天井に足をつけて立ち上がった。私にとっては天井が床となった。

「適応が早いですね。どのみち死にますが」

 男は私の後ろの方に向かって指を指した。どうやら物をこっちに飛ばすようだ。

 私はダッシュで男に近づいた。そして薙刀を首元に持っていく。刃が首をかすった瞬間、後方から飛んできた何かが私を吹き飛ばした。

 後ろを振り向くと、そこにはドラム缶があった。

「私は管理局の外からガラスを伝ってドラム缶を引き寄せました。どんなに重くても、重力には逆らうことができない!」

 その時、私は垂直に落ちた。重力の能力が解除されたのだ。なんとか空中で体の向きを変えて事なきを得た。

「どうやらあなた自身の重力の向きを変えても無駄らしい。ならば、障害物の多い部屋に突っ込みましょう」

 男がそういった時、天井が崩れると同時に、私の体が上に飛ばされた。男も続いてくる。

 そして、数々の物体がこちらに飛んでくると同時に、体が浮き始めた。飛んできたものを捌くことならもうすでにやったことがある。

 飛んできたものは薙刀で切り落とすか叩き落とす。徐々に男に近づいていく。

「これは驚いた。経験者ですかあなたは?」

「経験者ですが何か?」

 その時、男が顔面を殴ってきた。

「私を馬鹿にでもしたのか?」

 男は怒りの目をしていた。

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