3話 If you are in town, confidentiality is paramount.

「今日は町中で出現した『N』の捕獲をするわ」

「生物?」

「私達管理局では超常、Supernaturalのことをそう言うの」

「Sじゃないんですか?」

「いいの」

 ワンボックスカーの車内で、煙草を吸いながら話した。タバコに対して何も言わないハルにはとても好感が持てる。助手を交換してもいいかもしれない。

「ちょっと、今、『助手を交換しようかな』とか思ったでしょう、博士!」

 後部座席から助手が声をかけてきた。

 それを無視して数分間車を走らせると、町に到着した。

 そのまま街を少し歩いていると、Nがいるという民家にたどり着いた。至って普通の洋風建築の民家だった。

 ハルが勝手にインターフォンを押してしまった。

「はい、鍵は開いてるので……どうぞ」

 インターフォンから少しハスキーな女性の声が聞こえてきた。

「ちょっと、何してくれてんの?」

「なんでですか?あと助手さんは?」

「もしもあの人がNに洗脳とかされてたらどうするの?あと助手は遠くに行ったわ」

「遠く?」

 教えておきたいが、万一のためにも教えられない。

 私達は家の中に入った。中はいたって普通の民家といった感じだ。少し立つと、玄関に女性がやってきた。顔が少しやつれた、不健康そうな女性だった。

「この先に出たんです」

 そう言ってリビングの方へと案内された。ハルはさっき行ったことが効いているのか、真顔でついてくる。角を曲がってリビングに入った時、女性はいなかった。

 不審に思い、後ろを振り返ると、ハルの後ろに女性が立っていた。

 手にはナイフが握られている。そのナイフが、私が銃を構えるより早く、ハルに突き刺した。

「え?」


 ハルは腰から薙刀を抜くと、背後に向かって振った。女性は、地面に向かって溶けるようにして消えた。その直後、私に向かって椅子が飛んできた。

 横に飛ぶことで避けることができた。

「きっとこの『家』こそがNなのよ。でも家を破壊することはできない。私達には守秘義務があるから。でもハル、耐えて。耐えたら勝ちよ」

「博士、どういうことですか?耐えたら勝ちって……」

「すぐに分かるわ」

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