第四十六話 ダンジョン入り口にて

私達は調査を目的にクンヤンダンジョンに入る事になった。

とありあえずはサンディとティーラ姫、そして私はこの街でほぼ最高戦力らしい。


「これだけ探索者がいるのですからお仕事として依頼しません事?」


周りはダンジョンに入ろうとするお嬢様で列が出来ていた。

入り口には衛兵に守られたゲートがあり、ダンジョン管理組合の許可証を持たない不審者の出入りを制限しているようだ。話に聞いていたよりしっかり管理されている。


「調査依頼はねぇ…一応出していたんだけどそもそも人気がないんだよ」


私の後ろにいるデュオはおしり…とかを撫でられる度に私と繋いだ手がびくりと反応する。私はその都度尻撫でお嬢様を吹き飛ばしていたが、十六人から先は数えるのをやめた。決して数えられないからではない。

前の世界でも満員電車で痴漢をする不届き者はいたが、明らかに人口密度と頻度が違う。

ダンジョンの出入り口の管理は不審者の存在が制限されていない事を除けば完璧だった。


「彼女達は英雄譚と一攫千金に憧れてダンジョンにに潜るのさ。管理組合のちまちました調査依頼なんて魅力を感じないんだ」


その日暮らし過ぎないだろうか?ダンジョンに潜ろうが日々の生活があって食えないと困るものなのではないだろうか?


「探索者は命を懸けてダンジョンに潜って稼げなかった日には安酒を煽り、高額な品を手に入れられた日には男娼館に通ってその日のうちにお金を使い切る。それがダンジョンの探索者精神なんだよ」


気が遠くなるバカの精神だ…


「そして上手くいけば子を孕んで探索者からドロップアウトする。それが彼女らのいう「女々しい」生き方らしいよ」


頭の痛くなるバカの生き方だ……


「吟遊詩人にも謳われた裸一貫成功お嬢様も男娼館に通って息子を授かって今は宿を経営しているらしい」


裸一貫お嬢様お子様まで生まれてた…

一瞬良い話と勘違いしそうだったけど、私は頭を振ってその勘違いを正した。


「…私はその生き方全然理解出来ないんだけど」


ティーラ姫は苦笑いをして応えた。


「彼女らを理解する必要はないよ。でもボクは彼女らが自分に見合った幸せを掴んでくれれば良いと思ってる」


なんだか大人っぽい事を言ってはぐらかされた気がする。


「そもそも普通の探索者はエリカさんみたいに男連れでダンジョンに潜ろうとは思わないよ?」


苦笑するティーラ姫。


「え…でもデュオを外に一人でおいておいたら危ないじゃない?」


今更ながらデュオと一緒にダンジョンに入るのも外で留守番をしてもらうのもどちらも危険である事に気が付く。


「でもエリカさんは彼を守れる実力を示してるんだし良いんじゃないかな?」

「この世界、多分みんな自由に生きて良いんだよ」


気が付けば十六人からは数えていなかったが、私の周りにはざっと三桁もの尻撫でお嬢様共が私を中心に倒れていた。


◇ ◇ ◇


「あーらごめんあそばせ」


美しいソプラノ声が辺りに響く。

ノースリーブの赤いシャツを着てその胸に三倍の質量を宿した一目見て分かるドスケベボディお嬢様が尻撫でお嬢様の山を踏み越えその姿態を現した。

流星のシャーロットである。


デュオに粘着するつもりなのかサンディに粘着しているのかは分からないが、わざわざこちらに絡んできたようだ。

問題はサングラスをかけただけなのに誰も「流星のシャーロット」と認識していない事だ。サングラスを外させればコイツはお尋ね者として扱われると思うのだが、空気をどう読んだらいいのか私は判断がつかないでいた。すると意外なところから反応があった。


「クワッドさん!」


反応したのはティーラ姫だった。

なんだ?世を忍ぶ仮の偽名か?しかも厄介な事に彼女の声はとても友好的な声色で三倍お嬢様に喜色満面で抱きついた。


「まぁティーラ姫、このような場所でお会いする事が出来ますとは光栄ですわ~」


対するクワッドさんと呼ばれた三倍お嬢様もティーラ姫に対して友好的であった。

ティーラ姫も巨大な胸に挟まれてご満悦である。だが今でこそ水棲系ロリ美少女の風体だが中身は男だ。騙されるな。

ティーラ姫は私の微妙な視線に気が付いたのかそっと気まずげに三倍お嬢様の胸の下から離れた。


「こちらクワッド・バナージさんです!」


ティーラ姫はニコニコと彼女を紹介してくれた。

だが名前など些細な問題だ、私はあのサイズの胸なんて生まれて二度しかお目にかかった事が無いと断言出来る。一度目は街道で、二度目はダンジョン管理組合だ。

ナイスバディなお嬢様だらけのこの世界でも立派であるサイズのサンディが不機嫌そうにフンスと鼻を鳴らした。


下品ミサイルな胸をしておりますわね」


見覚えないのかサンディ?おまえは脳に欠陥があるのでは…あったな。


「あら、これはナイアルラ王国の神子様ではなくって~?」


サンディの胸の上に胸を置いて圧をかけるシャーロット…クワッド?どっちが正しい名前だ?

キングサイズ…いやこの世界だとクイーンサイズとでもいうのだろうか、質量による圧倒的圧をかけている。ちなみに私とは比べる余地はない。キレそう。


「…姫、この人は?」


考えてみると私、そして多分サンディもこの「流星のシャーロット」が何者なのかを知らない。サンディは彼女を「ネームド」と言っていたが結局の所サンディも彼女が何者なのかを知らないようだった。


「ダンジョン探索において頼りになるクンヤン最強のおねーさんです!」


なんだかティーラ姫からはとても高い評価を得ているようだ。これにはサンディも半分胸圧に潰されて見えないが驚いた顔をしているようだ。


「クワッドさん!是非ボクらと一緒にダンジョンの調査を手伝って頂けませんか!?もちろん報酬ははずみますので!」


「ええ、ティーラ姫様のご要望とありましたら喜んでお手伝いいたしましてよ~」


ダンジョンの持ち主でありダンジョン管理組合の理事長であるティーラ姫からの強い要望によって流星のシャーロットもダンジョンに同行する事になった。


でもコイツサンディにボコられて剥かれた三下なんだよなぁ…私には不安しかなかった。

ちなみにサンディは乳圧に潰された。

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