第四十八話 ダンジョンコアの栄養
私は空間に「不可視の腕」を差し込み、空中で軌道を変え小型四つ足ロボの追撃の弾を避けて着地する。小型とはいっても五メートルはあるロボットである。実際に地面で見上げ相対すると圧を感じる。そしてロボットは獣のように駆けてきた。
だがこんな雑魚など敵ではない。人も乗っていないようだしさっさと潰して片付けていく。圧縮した「不可視の腕」を叩き付け一振るいで破壊する。
二機三機四機…目の前のロボだけなら余裕だったが、形勢不利と見たのか遠距離からの狙撃が加わった。小型ミサイルの亜音速狙撃による爆発は小型無人機を巻き込む勢いで大きく、しかも麻痺成分を含んでいるようだった。私は問題ないがこちらはデュオをコアラよろしく抱えている。そうして爆破の大きさと着弾地点から私を何らかの罠に追い詰める意図を感じた。
ダンジョンに踏み入って分かる事がある。私が「不可視の腕」と呼んでいる力はこのダンジョンの各所にみられるという事だ。「ティンダー」と呼ばれるこの異界の研究者はこの力を科学的に利用する事でこのダンジョンを顕現させているのだろう。だが彼らは使用は出来てもどうやら視認は出来ない、もしくは難しいようだ。私を追い込もうとする場所にはこの不可視の力と同じ力が渦巻いており、視えているならば容易にそこに罠があると看破出来てしまう雑なものだった。
「ふみゃああああ!」
そしてあえてその罠を踏み抜く。罠が発動し膨大なエネルギーが次元に迸るその刹那、私はそのエネルギーを食い散らかした。
「!?」
罠を踏んだ瞬間デュオが腰に回した腕の強張らせた。彼もこの罠を認識していたようだ。これが視えるのは私とティーラ姫の転移か転生組くらいかと思っていただけに少し驚く。何か変な物でも食べたのだろうか?だが罠にかかった私に追撃を加えんと射出された亜音速のミサイルが間髪入れず降りかかり、悠長な考えを止める。
ミサイルは「不可視の力」を一瞬空間に差し込むことで速度を一切落とす事無く私を中心にして垂直に、V字ターンで、全方位から同時に突入してきた。
私は爆発の衝撃は防げても先ほどのように麻痺性の煙や他の毒性を懸念し、突っ込んでくるミサイルを足場にして避ける。背後では「やったか!?」とかフラグを立てていそうな爆発が起こったが、その衝撃が伝わるよりも疾く発射施設へと向かい跳んだ。
刹那の間、よくよく周りを見渡すとこの「不可視の腕」「不可視の力」があらゆる所で使われている事がわかる。先ほどのミサイルの不自然の曲がり方、このダンジョンの異界の固定にも使われているしロボットの中心やシャーロットのガンダムのエンジン?もこの力を使って動作させている。
便利な力のようだが森のトレント?もこれを使っていた事を考えると元々こちらの世界のモノなのかもしれない。
「ティンダー」という異界の研究者はこの空間や次元、魂に影響を与える便利エネルギーを使いこなしているようだ。科学の力ってすごい。
まぁ私はトレント?の肉も食べるし「ティンダー」のご本尊…ダンジョンコア?も食べる。という事は私が食物連鎖と科学の頂点と言っても過言ではないのではなかろうか?
そんな事を考えながら一息に二十キロ程の距離を縮め、私はミサイルの発射口を即時粉砕した。
「そこまでだ熊女!!」
突如背後に三十メートル程のロボットが出現した。巨大な質量にも関わらず空間から突然湧いて出た。空間や次元にも干渉できるとは聞いてはいたがそれを目の前で行われると驚くほかない。
「誰?」
熊女とはまた妙な愛称を…見た感じ巨大ロボットは犬のようで、四つ足にかぎ爪状の不可視の力を纏って空間に存在を固定している。犬といってもポメラニアンや柴犬のような可愛いものではなく、ドーベルマンのような猟犬タイプだ。そして四つ足だからこれはガンダムじゃないゾイドだ。
そのゾイドからティンダーの人?と思しき怒りに満ちてはいるが、こちらの要望に応えて丁寧に自己紹介をしてくれた。
「こちらはティンダー所属ルルハリル藍位軍事政務官だ。鼻が利くな…司令塔を直接狙ってきたか熊女」
エネルギーが集まってるから中心部だとは思ったけどここって司令塔なんだ…多分ここに
「…こんにちはエリカです。一応、敵対するつもりは無いんだけど?」
「こちらの偵察機を七機も落としておいて良く言う!」
あの
「その力…間違いない。お前が報告に上がっていた数多の同胞の研究を嬉々としてぶっ壊し片っ端から灰燼と化した熊皮のクソ蛮族だな!!」
熊の皮を被ってはいるけどこっちは立派に常識人で文明人だ…いや最近こくごとさんすうが弱点である事が露呈したので気持ちが揺らいではいるが、クソ蛮族などと言われるのはやはりショックである。
「…ショックを受けてるようだから一応確認するが、ぶっ壊しまくってたよな?」
もちろん私は彼らの
「何故ダンジョンコアを壊し我々の研究の邪魔をした?」
「…誤解がある」
「一応弁明を聞こう」
勢いでカッコつけて言っちゃたけど多分誤解はない。でも「ナワバリ広げる為に面白半分でぶっ壊して吸収して食べちゃいました、ごめんね」と正直に謝ってもダメそうな雰囲気は感じた。
「…ダンジョンのコアからでしか得られない栄養が……ある」
なんかそれっぽい事を言わないと…と考え、咄嗟に出てきた言い訳だった。少し苦しいかな…?
相手も反応に困ったのだろう、コクピットの向こうで言葉に詰まったのが分かった。
「そんなものを食べるんじゃあない!
返ってきた言葉は確かに…と思える程度には常識的なものだった。だが妖精さんが珍しく役に立つ事を教えてくれた。
(エリカチャン!この世界には他人の食べ物にケチをつける奴は殴っても良いって法律があるわヨ?)
人を殴っても良い法律とかさすが蛮族世界…でも今、私はその法律に救われた!
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