第四十話 大海原の決闘・上
そうして私たちは海の入り江にある大きな貝を模したファンタジーな城と見紛うようなお屋敷の前にいた。
ダンジョン管理組合にダンジョンの権利の全てを差し出すようにと迫った
個人情報保護とか一体どうなってんだ…まぁこの世界は地球でいう所の中世のような時代背景だが、その実もっと低劣なバカの世界だ。そんな些事に拘るような生き方はしていないのかもしれない。
この屋敷の主は外国のお姫様でティーラ姫というらしい。
本当に外国のお姫様のお屋敷の情報とか教えたのか売ったのか脅したのかは分からないが、色々と心配になる。
もう過ぎたことはいいとしても問題はサンディの存在そのものである。アイツ外国のお姫様にケンカ売ったりしないだろうな?だが考えてみたらナイアルラ王国の王子様相手に調教して奴隷として売っ払おうとした特級のバカだった。正直どの辺りでサンディの暴走を止めるべきなのかを問われたら正解は今この場で砂に埋めるのが正解のように思えてきた。
そしてお屋敷から人魚のお嬢様が出てきた。この辺りは全てお姫様のプライベートビーチらしいので私達は監視されていたのかもしれない。
人魚お嬢様の顔は掘りが深い美形、そして元の世界でもお馴染みの貝を胸に当てた痴女ルックスでとても安定感があった。
そんな優美な彼女らだったが陸地なのに泳ぐようなスピードで滑らかに移動してきた。水の魔法か体表に薄く水を纏っており、水中に近い動きを陸の上でも再現出来るようだ。
結構キモイ。
そうして二十人程の人魚お嬢様を伴って出てきたのはゴスロリのようなフリフリの衣装…というかクラゲ?のドレスを纏った可愛らしい少女だった。ドレスの中には大量の水を含ませ、手にはトライデントを持っていた。
「…本当にこの世界は個人情報の保護とかどうなってるの?」
一瞬私の考えを読まれたのかと思うような言葉を彼女は呟いた。
「まぁそんな事を一々気にかけていたら生きていけないのかもしれないけれど…」
深いため息をつく悩み多きお姫様。押しかけられる方としてはたまったものではないだろう、なんだか気が合いそうなお姫様だった。まぁシンパシーを感じて同情もするが、あくまで私は
そうしてお姫様はサンディを見てとても愛らしい笑顔で語りかけてきた。
「これは美しいお嬢さん、今日は何用でこちらに?」
「話が早くて助かりますわお姫様!今日参ったのは他でもございません、クンヤンダンジョンの権利の全てを私様に譲渡して頂きたく参りましたわ!」
サンディの話はとても分かりやすいのだがどう聞いてもバカの世迷言にしか聞こえない。
「ふむぅ?」
可愛らしく小首を傾けるお姫様。
「そうだねーボクらに勝てるならダンジョンの権利の一切を渡してもいいよ」
「あーら良い心掛けです事!」
お姫様はちらりとこちらを一瞥して、
「そちらのクマのお嬢さんも手を出して構わないからね」
なんだろうこの条件?対価を要求するのではなく力を示せというこの世界特有の蛮族マインド的なモノも感じるが…むしろこれは厄介事を押し付けようとしているように思える。
「話が早くて助かりますわ!なーにメスガキをわからせるのも淑女の嗜みでしてよ!!」
「…なんかやる気っぽいけど勝てるの?」
「正直強いですわね!彼女らと私様の戦力差は上に百五〇程!ですが決して覆せない数字では御座いませんわ!」
そうやなんかサンディは変な能力を持ってるとか言ってたな…
「経験上モブ人魚を一掃すればこの程度の数字は余裕で覆せますわ!!」
「じゃあ私はアンタがやられそうになったら加勢するで構わない?」
「ええ、構いませんわ!!」
私はいつも通り彼女がボコられてよくよくわからせられた上で暫くボコられ続けたら助けに入ろうと心に決めた。
そうしてサンディ大好き自己紹介を大声で始めた。
「ナイアルラ王国の神子にして転生者!サンディですわ!!広大な海、そしてお魚さん達にも私を魂でわからせてやりますわ!!」
どうしてこのあたおか女は無駄に重要な情報を積極的に開示していくのか?
「転生者サンディ!?…へぇ…いいね!」
「でもそのアドバンテージ、自分のものだけだと思わない事だね!」
なんですと?
「ボクはラ・イラーに棲まう大いなる女王の第一王女!姓をク 名をティーラ!いざ参る!!」
ティーラ姫は空中を滑るように移動する。そして彼女の周りを護るよう水を纏った八匹のタコが回転移動する。
多分水の珠を宙に浮かせて動かしてるのだろう。その中にタコさんを入れているようだ。かわいい。彼女も同様に大きな水の珠に入って移動しているようだ。
ゴスロリちゃんはなかなかかわいい事を考える。
「数多の光よ」「刺し穿ち」「灼き尽くせ」「踊り」「狂え」
「
サンディは当然のように一般人魚お嬢様に攻撃を集中させる。流石は雑魚狩りの専門家、出来るだけ弱い者を狙い戦力を削いでいく、その行為はとても安定感があった。
だがサンディの放った弾幕は人魚お嬢様をかばうように展開されるタコさんビットが立ちはだかる。そしてスミを吐いて光の弾幕は吸収された。
やるじゃん!いけ!
人魚お嬢様は陸上だというのに驚くようなスピードでサンディに肉薄する。トライデントがサンディを穿つ…が躱される。おしい!そして二撃、三撃と人魚お嬢様の攻撃が続くが、サンディのくせにそれらを全て認識し、ギリギリのトコロでしっかりと躱していた。更には頭上から投擲された二本のトライデントまでも綺麗に躱している。くそ!?乱戦になっても一撃も入れられないじゃない!?
そしてその中心でサンディが短く唱えた。
「弾けよ!」「
「きゃああ!」
人魚お嬢様の動きが止まる、そしてこの隙をサンディは最大限に活かす。一人を羽交い締めにしてジャイアントスイングのように大きく振り回し周りの人魚お嬢様を巻き込み吹き飛ばした。ああー…
二十人いた人魚お嬢様のうち七人が倒れた。先程のサンディ算からするとこれでかなり戦闘力?を削れてしまったのではなかろうか?
乱戦での不意打ちの目眩ましではタコさんビットも彼女らを守るのは難しかっただろう。
だがタコさんビットは人魚お嬢様を守るような動きはしていなかった。不気味なほどに静かに、彼らは主であるティーラ姫の側に佇んでいた。
「さぁ転生者!時間切れだ!!この盤面を覆せるか!?」
ティーラ姫の膨大な魔力が凝縮されていくのが分かる、人魚お嬢様はこの為の時間を稼ぎたかったようだ。
「
彼女の一声で凝縮された魔力は変質する。突如として空間に巨大な海が広がり辺りは圧倒的な質量に押し流され飲み込まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます