第三十二話 レアドロップ
「流星のシャーロット」とかいう
ヒトの命をすすんで奪おうとは思わないが、捕らえてこの町の警備兵に付き出そうとも思わない。よって放置する。
もしかしたら山賊共を捕らえる事で地域の安定に貢献できたり、警備兵に突き出す事で報奨金みたいなものが貰えるのかもしれないが、ここは想像の下をいく
何故なら捕らえるにしてもスポーンする数が多すぎる、少なく見積もって一日に平均二回程襲撃があると仮定して日に十人は捕まえられる。すると街道を五日歩くだけで五十人の山賊を引き連れる事になる。バカの大名行列だ、縄が何百メートル必要になるかわからない。
というか私はこの
そういうわけで私達はこの無限に湧いて出る
「ここは通さねぇですわ!」→「ショタじゃありませんこと!!」→「ヒャッハー!女は奴隷よ!男は犯ってから奴隷よ!」
こいつらの脳は性欲しかないのか、とにかくワンパターンが過ぎる。
「そういえばサンディはなんであの赤いのを執拗にぼてくりまわしてたの?」
私は今日四度目の野盗お嬢様共を撃退をしてサンディに尋ねた。一日平均二回の襲撃といったな、あれは嘘だ。
サンディはアレ以降は魔法を中心に立ち回っていた。朝はなんだか元気なかったので体を動かしたかっただけなのかもしれないが、一体どういう風の吹き回しだったのだろうか?
「まぁ目立っておりましたし、赤薔薇騎士団のビキニアーマーを着ているならナイアルラ王国からの刺客かもしれませんし…」
珍しくあたおかなサンディの歯切れが悪い、何か誤魔化しているのが伝わってくる。アレは親の仇とまではいかないが、浮気した彼氏を問い詰めるくらいの気迫を感じた。
私は納得がいかずハテナマークを飛ばしているとサンディは溜息をついて言った。
「信じて頂けるかは分かりませんが……あの流星のシャーロット『ネームド』なんですわ」
ネームド?
「彼女は『ニグラート国物語』に出てくる名のある雑魚ですわ。本来ならこんな所に出てくるハズは無いのですが…」
どうやらここが彼女の知るゲームの世界である事が前提の上でそのストーリーに出てくるキャラらしいが、サンディも良く分かっていないようだ。
「え?重要人物なら捕らえておいた方が良かったんじゃないの?」
「いいえ、全く重要ではございません、路傍の石ころに陰毛が生えた程度ですわ」
コイツ端正な顔して下ネタを当たり前のようにぶち込んでくるな…中学生男子か?
路傍の石ころはまぁ気にしないけど陰毛が生えてたら…まぁそれもどうでもいいな…
頭の中がどうでもいい意識に占拠されてしまい、ネームドという単語についての疑問が霧散してしまう。
「今考えれば赤薔薇騎士団のビキニアーマーはネームドのレアドロップといえない事もないですわね」
「いらないので捨てましたけれど」
レアドロップ?
「え?あのヒモ売ったら高かったりするの?」
「一応あれで防御刻印を阻害しないスパイダーシルクで織られた赤薔薇騎士団謹製の一級の防具ですわ、中古の中古でも下取りに出したら金貨十二枚から十六枚程度にはなるかもしれませんわね」
金貨十六枚というのは銀貨でいうと二百五十六枚で銅貨に換算すると………
(1000よ!エリカチャン!)
この妖精さん何言ってんだ………まぁざっくりいうと銅貨一枚の果物がたくさん買えるという事だ。
(エリカチャン!果物換算は文明外での野蛮な考え方よ!!)
クソッ!…妖精さんの言葉を無視をしないと心が砕けてしまう!
ともかくこのビキニアーマーというものはそもそも銅貨一枚の果物たくさん分の価値あるものらしいのだ、ちょっと捨てるには惜しくない!?私は長い森の中での生活で少しモラルと価値感覚がバグっていた。
「でもあんなアタマからっぽのドスケベ女が使い込んだお古のビキニアーマーなんて着たくないでしょう?」
他人の股に食い込んだ使用済み
(落ち着いてエリカチャン!あの三倍お嬢様の着たビキニアーマーよ!胸の所とか伸びてエリカチャンには全く合わないわ!!)
キレそう。
でもノーマネーな私はどうにも後ろ髪を引かれてしまうのだが取りに行くには少し距離があり、街道でデュオを一人っきりにして置いていくのは危ない。そしてここにはサンディがいる、なお危ない。
私は諦めた。
そういうわけで汚物を容赦なく捨てたサンディの行動は理解したのだが、私の元いた世界ならあの流星のシャーロットとかいうブロンド美女が着た痴女水着にはなんらかの付加価値がついて高値で取引されるように思えた。
…考えたらそれはそれでちょっと元の世界も大概頭がおかしい気がする。
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