第十九話 閑話・神子サンディ(上)

私様は「ニグラート国物語」の全貌を知る全能者、神子サンディですわ!

というのもこの物語は私様が元いた世界で有名なゲームなのです!

その全貌を知る私様こそ正しく世界の中心!主人公と言っても過言ではないですわ!


ところが二年前に完全無欠の絶世の美少女、世の全貌を知るこの世界の中心人物としてこのヨグに降臨し、記憶を目覚めさせたその時の私様を取り巻く環境は決してラクなものではございませんでした。

なにしろ何の因果かニグラート王国の隣の蛮族国家「ナイアルラ王国」に生れ落ちてしまいましてよ!

この国はなんと男に首輪もつけない破廉恥で野蛮な蛮族国家、なるほど言い換えればなんとも自由でカオティック…私様それはもう当初は股を濡らすのを堪えるのに難儀致しましたわ。

ですがその自由を謳歌する、それもまた天命と考えこの下等民族共を私様の痴性によって啓蒙する…そう、片っ端から食らってやりますわ!据え膳食わぬは女の恥でしてよ!!


そうして溢れる神々しい神気を纏い王立学院カダスに入学した私様は自由を謳歌し王子以下五人の美男子を調教わからせましたところ、どうやらこの蛮族国の女王に目を付けられましたようで、そしてあろうことか世界の中心である私様を捕らえようとする動きまでも察知しましたのですわ。

嗚呼なんという愚かな世界と私様への裏切り…決して許される事ないその罪を永遠に後悔するがいいですわ!その足で五人を奴隷娼館に売りとばしに…行こうとしたところ木っ端の兵に包囲されましてよ!

ですが完全無欠絶世の美少女の神子の私様はもちろんそんな木っ端の十や二十でうろたえる程小物ではございませんわ!

私様には世界の中心となるべく特殊な力「心眼」がございまして私様と相手との力量差が読めましてよ!相手はたった四人、こちらとの力量差は四人でも下に二百~二百四十の間。

クッッッッッッソ雑魚ですわ!!!!!

ですが木っ端兵士をボコり倒しても倒しても増援が駆け付けて来て…クソ雑魚の分際で仲間が増えるわ増えるわ…

木っ端兵と指揮する騎士を含め五十人を越えた辺りで私様の心眼で力量差ゼロを越え…ついには下限でも上振りに十程度になった所でこれはもう手に負えませんと判断しまして当初予定していた通りニグラート王国に亡命を決めましてよ!

そうして仕方なく私様最終手段として学院内にあるダンジョンに入り、深層であらかじめ丹念に用意しておいた爆破の魔法陣でダンジョンを爆破し魔物災害を起こしてやりましたわ!そうして賢い私様はその混乱の中を王都から逃げ延びましてよ!


覚えてやがれですわ!このクソ蛮族国!!いつか私様の威光を再び輝かせてみせますわ!!その時は女王以下重鎮共は全員しっかりと調教の後に奴隷落ちにして差し上げましてよ!!そのでかい尻にありとあらゆる世界の混沌を詰め込んでやりますわ!!

アデュー!こちらでのお父様パパンお母様ママン!!短い間でしたがこれから平民のお二人にはきっと過酷な運命が待ち受けているかと存じ上げます、ですが私様必ずお二人の仇はとりましてよ!

まぁ言うて世界の興亡の前には些事ですわ!


そうして長くも厳しい逃亡者生活が始まりましてよ。襲い来る雑魚共をちぎっては投げを繰り返し国境の辺境伯の領地で神子として歓待を受けて旅の疲れを癒やしていたところ押し寄せたのは王軍一万!

裏切りやがりましたわね!幸薄そうな寡婦みたいな同情を引く貌してからに、いつか目にもの見せて奴隷落ちさせてやりますわあの年増女!!

私様は彼女の無駄にでかい胸にそう固く誓って幽閉された塔から決死の脱出を果たし、そうした数多の艱難辛苦の末、遂に憧れのニグラート王国に入りましてよ。


私様本編のシナリオにないアドリブの部分で二年もの間、本ッッッッッッ当に苦労いたしましたわ!!

しっかし王子共を奴隷娼館に売り飛ばすのも未遂だったのにしつこいったらありゃしないですわね。


そうしてやってきました憧れのニグラート王国、その辺境の町エフワード。

この町は「ニグラート国物語」の本編にはその名前すら出てこない木っ端の町。オークに襲われようが煮ようが焼こうが住民全員が一晩でUFOに連れ去られ内臓全摘出されようが蛮族軍に蹂躙されようが特に問題の無い町…のハズでしたが、ここで私様は本編にはない運命の出会いを果たす事になりますわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る