第十三話 ロクデ村
この世界に来て二年くらい経った。当初は水の確保に苦悩し、火起こしに苦心し、食に困窮し、魔物に怯え、生死の境を彷徨い…そして私は強くなった。
前の世界にはなかったこの世界独自のルールに驚き、感激し…そして私なりにこの世界に希望を見出し、この二年でこの世界にも愛着みたいなものが湧いていた。
それがまさかたったの数日、まだ数えるほどの人としか交流をしていないのにこの世界への評価の下限が随時更新されていくとなると気が遠くなろうというものだ。
「ヒャッハー!オスだぁぁぁぁ!」「犯せ!!」「アタシの次にな!!」
目の前にはおなじみとなった盗賊が湧いた。彼女らは一切の学習した様子もなく懲りずに日に何度も湧いて出てくる。
今回はイノシシのような獣に騎乗する蛮性を示しているがとにかく顔だけは良い。アイドルのような容姿の彼女らはその代わりに頭が空っぽ…空っぽならまだしも口に出す言葉を聞くに空っぽどころかウンコか何かを詰めているであろう低劣な生態である。
そんな盗賊共をちぎっては投げたりしながら私たちはなんとかロクデ村に到着した。
村を迂回してスルーして町に向かっても良かったのだが一応順当に村の門をくぐろうとする。ロクな事にはならないと思いつつも心の奥には人との交流に飢えているのと、この世界の文化水準にも興味があった。
村の門番は切れ長の目と眉が美しい綺麗系なおねーさんだった。この世界の人はどうしてこんなに見た目の偏差値が高いのだろうか…そして彼女は私を見て眉を顰める。
「バーバリアン…とその
デュオに視線を向けると頬を染めてこくこくと頷いている。それを見て私もとりあえず頷いておいた。
「何処から来たの?」
「えーと…デュオ、里の名前は?」
「ないよ?」
「え?」
「住めそうな所に住んでるだけで周辺の森の獲物が減ったら移動してるんだ」
まさかのあの集落名前なかった…
私が異国情緒に衝撃を受けていると門番の綺麗系おねーさんがデュオの匂いを嗅いでいる。
くんくんくん
なにやってるのかしら…?
「いい匂いがするわね、貴男童貞かしら?」
ニッコリと爽やかな笑顔で鼻の下を伸ばす綺麗系門番おねーさん。しね。顔が整っているクセにナチュラルにクッソ最低なセクハラしてくるな…ああでもこのセクハラ原始人が私を見下していると思うと絶望しかない。
この門番の首にチョップとかして気絶させてその隙に村に入ってやろうかと思ったが、多分私の今の力でやるとクビをトバしかねないので自重する事にした。
(エリカチャンも処女だからオアイコネ!!)
うるせーわよ精霊さん?妖精さんに向かって心中で乙女中指を解放する。
「貴方達、街道を通ってきたの?」
そして門番おねーさんが良く分からない事を言い出す。街道通って来なきゃ村に来れないじゃない。
「もちろんよ?」
「番連れでよくここまで来れたわね…」
なんだか呆れられている。
「街道を通るとここに来れないの?」
「バーバリアンの姫には分からないかもしれないけれど賢い者は盗賊を威圧出来る程度の大所帯のキャラバンにして街道を通るのよ?少人数での旅なら街道近くの森を通るのが常識だわ」
あれだけ湧く盗賊の対処を考えたら納得できる…けど控えめにいって頭おかしいでしょ…この世界では街道は盗賊との交流の場なのかな?
さっき脳の代わりにうんこ詰まってそうな奴等と対峙して頭痛かったけど、この世界の常識は常に私の考えの斜め下で留まっていて頭痛い。
「でも街道を逸れると人さらいや物取りが出るからそれにも注意が必要ね」
そうしてサラッと街道を使わないという条件も破壊してきた。どうやって移動したらいいのかなこの世界?
「まぁ番連れならいいわ、決して村の男に手を出すんじゃないわよ?」
そういって私達は村に入る事を許された。
出すかこのスカポンタン…
私は内心そう毒づいたが、何故かデュオが私の手を握る力が強くなった。
(イイノヨ?エリカチャン 森から出た貴女は自由なのヨ?)
森で二人?の時は犯罪も何もなかったがこの妖精さんは今、私を何処に導こうとしているのか不安になってくる。
ちなみにロクデ村は農耕をやっているだけで店などは何も無く、そのまま通り過ぎた。
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