第3話 VS巨人

 クイスト人によって、月の重力が操作された。

 月と地球は違いに引き合い、このままでは衝突する。

 クイスト人は現在、光夜と美里に向かい合っている。


「この星の生命は、我らの支配を拒絶した」

「当然だろ? 歪んだ支配が生み出すのは、破壊だけだ」

「自由とは混沌。支配とは秩序だ」


 ヘルメットを被ったクイスト人は、デバイスを天に向けた。

 空中から銃と剣が降り注ぎ、クイスト人の手に渡る。

 調査隊に乗り移った全てのクイスト人が、装備を転移する。


「我らの支配を受け入れる事で、永遠の繁栄が手に入るぞ」

「永遠の停滞がだろ? 秩序が続く時、進化は止まる」

「スナークスの時もそうだ。君は他人の言葉に耳を貸さない」


 クイスト人は光夜に、銃を突きつけた。

 リーダー格の合図と共に、一斉に銃を上げるクイスト人。

 光夜は笑いながら手を上げた。


「君みたいな奴が一番危険だ。早急に排除しなければ」

「悪いがこっちはお前らと遊んでいる暇はねえんだよ」


 光夜は視線を横に向けた。

 その視線が気になり、クイスト人も同じ方向を振り向く。

 するとその先から光夜愛用の、バイクが走ってい来た。


 光夜が遠隔操作で、待機していたバイクを動かした。

 光夜と美里はバイクに乗り、クイスト人へ体当たりをする。


「こっちは月を止めないといけないからね!」


 美里は電磁波を発生させて、クイスト人を吹き飛ばす。

 リーダー格はその衝撃で、デバイスから手を離した。

 すれ違い様に光夜は、デバイスをキャッチする。


「月を止めたら、相手にしてやるよ」


 光夜達はクイスト人を通り抜けると、背後に手榴弾を投げる。

 手榴弾が爆発し、その煙で2人は姿を隠した。

 クイスト人の視界が復活した時には、既に姿は消えていた。


「やれやれ。とんだ暴れ馬だこと」


 クイスト人のリーダーは、違うデバイスを取り出した。

 背後からバイクを召喚して、乗り込む。

 そのままバイクを走らせて、光夜達を追いかけた。


「我々から逃げる事は出来ぬ。我々は波動生命体なのだから」


──────────────────────────────


 光夜は瑠璃に状況を説明し、合流を図った。

 デバイスを動かせそうなのは、機械が得意な瑠璃だけだ。


「美里。お前は下りて、瑠璃達と合流しろ」

「私がつけられたらどうするの?」

「大丈夫。俺に考えがある。お前の異能力を最大限まで使おうぜ」


 光夜は打合せをして、美里をバイクから下した。

 そのまま光夜はわざと目立つように、エンジン音を鳴らす。

 直ぐにクイスト人が気が付き、光夜のもとへ走ってきた。


「へえ。古代にもバイクがあったのか。乗り心地良さそうだな」

「女は何処へ行った? 何処に居ても必ず見つけてやるぞ」

「聞きたければ俺とレーシング。死の道を一直線だぜ!」


 光夜はバイクを走らせて、クイスト人から離れた。

 一部のクイスト人が、光夜の後を追いかける。

 リーダーは陽動だと気が付き、周囲を捜索する。


「無駄だ。我々は目で見ている訳ではない。精神で見ている」


 クイスト人は精神生命体。波動によって生きている。

 波動を感じる事で、周囲の情報を受け取っている。

 その為姿を消しても、波動を感じれば居場所を知れる。


「何だこれは!? 周囲の波動が乱れている!?」


 リーダー格は慌ててバイクを走らせる。

 光夜を追いかけて、情報を聞き出そうとした。


「貴様一体、何をした!?」

「指示したけど、やったのは俺じゃないぜ」


 美里の異能力、波動を操る力を利用した。

 彼女の力に気が付いた光夜は、周囲の波動を操る様に指示。

 美里が反射する光の波長も操り、彼女は完全に姿を消した。


「ほら。聞き出してみろよ。出来るならな!」


 光夜はわざと減速して、クイスト人の1人と距離を詰める。

 そのまま並走したかと思うと、光夜は思いっきりバイクで体当たりをした。

 クイスト人はバランスを崩し、そのまま転倒してバイクが大破する。


「言っておくが付け焼刃の腕で、俺には追いつけないぜ」


 光夜は拳銃を取り出して、敵の車輪に発砲した。

 敵のバイクはパンクして、そのまま転倒する。

 転倒の際他のバイクも巻き込んで、爆発を上げた。


「他人の技術より、自分達の技術を磨いたらどうだ?」


 光夜は異能力によるブーストで、バイクを走らせた。

 古代文明の技術を使っても、光夜との差が広がっていく。

 クイスト人は慌ててエンジン出力を上げる。


「待て。深追いをするな。罠だ」


 リーダーの指示は一歩遅く、クイスト人はスピードを上げた。

 彼らが光夜に追いつこうとすると、光夜はダイナマイトを背後に投げる。

 光夜のエネルギーが込められたダイナマイトは、その場で大きな爆発を上げる。


 アスファルトを粉砕し、下水道にクイスト人を落とした。

 クイスト人は落下の衝撃で体勢を崩した。

 そのまま全員が転倒して、その場で爆発を上げる。


「やってくれたな、冬木光夜」

「1人逃がしたか。だがお前だけなら、俺だけでも何とかなりそうだ」


 穴の向こうで停止した、リーダーのクイスト人。

 光夜はバイクから下りて、リーダーと向かいあった。


「我だけだと? 我々は肉体が滅んでも、精神は滅びない」

「そりゃ厄介だな。ムー人が封印する訳だ」

「封印されながらも、我々はこの世界を監視していた」


 リーダーの背後に、白色の人影の様なものが出現した。

 それらは倒したクイスト人と、同じ数だけ現れる。

 影はリーダーの人物に近づき、そのまま融合を開始する。


「よもや現代人相手に、この姿を見せるとは思わなかった」

「想定を超えるのが、俺達人間さ」

「そうだな。ならば我々も想定を超えさせてもらおう」


 全てのクイスト人が1つになると、地面から巨人が出現した。

 足元は蜘蛛の様に複数の足があり、右手は巨大な剣の形をしていた。

 左手に盾を持ち人型の上半身に、赤い目を宿していた。


「ちょっとこれは想定外すぎるよ!」


──────────────────────────────


 美里は無事に優也達と合流していた。

 ヘリで移動しながら瑠璃に、デバイスを託す。

 光夜を救出するため、一同は上空から捜索していた。


「瑠璃、なんとかなりそう?」

「難しいよ。単純に重力を戻すだけじゃ、駄目だし」


 重力を元に戻しても、月と地球の位置が変わっている。

 月との衝突を回避しても、太陽の衛星軌道上から外れる恐れがあった。

 全て元に戻すには、月と地球の位置を完璧に一致させる必要がある。


「月の重力を操れば、なんとか戻るだろうけど……」

「完璧に戻すか……。もっと高性能なパソコンが必要だな」


 月と地球の座標がどれくらいズレているのか。

 それを調べるために、人工衛星にアクセスする必要がある。

 計算をするには、スーパーコンピューターが必要となる。


「ちんたらしていたら、座標は乱れて取り返しがつかなくなるぞ」

「でもスーパーコンピューターを使うには、許可が必要だよ?」

「緊急事態なんだ。勝手に使っても許されるだろ」


 優也は冗談らしく言ったが、それほど急を要する事態だ。

 美里も思考を走らせて、必死で考える。

 他にてはないのか。自分に出来る事はないのかと。


「瑠璃、月の重力は加速しているの?」

「いや。一気にふやされたみたいだよ。それがどうしたの?」

「衝突まで3時間……。その計算が正しいなら」


 美里は持っている知識を、必死で引き出そうとした。

 彼女は考古学の為、月の遺跡にも興味を持った事がある。

 その時月の重力や、地球と釣り合う条件を学んだ事があった。


「衝突する時間と重力から、ズレた位置を逆算すれば……」

「あ! その式が0になる様に操作すれば、計測は不要だね」

「私は公式を、瑠璃は計算を得意としている」


 2人が力を合わせれば、事態を解決出来そうだった。

 僅かに希望が見た所で、2人は必死で話合いを始める。


「じゃあ2人が計算している間に、俺らは……」


 優也が言いかけた所で、巨人が街に出現した。

 優也は溜息を吐きながら、ヘリのドアを開ける。


「相棒と一緒に、アレを討伐しますか」

「了解! 出来るだけ近づくけど、衝撃に備えてね!」

「ああ。2人の計算を邪魔するのもアレだし、さっさと終わらせるぞ」


 優也はヘリから飛び降りた。

 指パッチンでテレポートをし、巨人の足元へ向かう。

 巫女も援護射撃のために、巨人に向かってヘリを動かした。


「巫女。計算は終わったから、瑠璃だけ下せない」

「は、早いね……。了解。近くのビルに着陸するよ」


──────────────────────────────


「うぉ! 何でもありか、お前!? 」


 光夜はバイクに乗って、巨人の攻撃を避けていた。

 巨人は足を使って、光夜を踏みつぶそうとする。

 上手く足をすり抜けて、光夜は背後に周った。


「目はないんだっけ? 背後をとっても不意を付けねえか!」


 光夜はバイクをUターンさせた。

 巨人は上半身だけを、180°回転させる。

 そのまま赤い目から光夜に向かって、同色の光線を放った。


「危ない所にお出まし! 坂巻優也のマジックショーの始まりだ!」


 優也はテレポートと同時に、前方にワームホールを出現させた。

 赤色の光線はワームホールに吸い込まれる。

 巨人の正面に別のワームホールを作り、そこから赤い光線を吐き出す。


「よう相棒! 随分とピンチみたいじゃないか」

「演出だ。主役がピンチの方が、盛り上がるだろ」

「そこに真打登場! まさに熱い展開だね!」


 2人が軽口を叩いていると、巨人が軽く肩を掃った。

 まるで蚊が止まったかのように、攻撃が聞いていない。

 

「反撃開始……。の前に一旦撤退しよっか?」

「戦略的撤退な。バイクに乗れ」


 光夜は後ろに優也を乗せて、バイクを走らせた。

 巨人は足を器用に使って、バイクを追いかける。


「うわぁ! あいつ決行早いよ! 追いつかれるぞ!」

「分かってる! 考えがあるから、騒ぐな!」


 光夜は来た道を引き返した。

 巨人との距離は徐々に縮まっていく。


「考えってなんだよ! 踏みつぶされるとか、止めてよ!」

「奴に普通の装備は聞かない。だから装甲列車を使う」

「なるほど、納得。そう言う事なら……」


 優也は超能力を使って、装甲列車を線路に戻した。

 光夜はフェンスを突き破って、線路に乗り込む。

 そのまま列車に窓から突っ込んで、入り込んだ。


「AIが操縦する! 優也、お前も砲撃辿んだぞ!」

「了解だ! この茶番に終わりを告げようぜ!」

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