第2話 クイスト人

「これは……。何が起きているの?」


 外からドローンで遺跡を調査していた瑠璃。

 突如遺跡が浮上したため、驚きを隠せなかった。

 海に隠れいた部分から、無数の砲台が姿を現す。


 浮上した遺跡は砲台を日本の本土に向けた。

 そのまま砲口が黄色く光ったかと思うと。

 次の瞬間光線が街に向かって放たれた。


「これはマズい! ガード職員聞こえますか?」


 瑠璃は通信を用いて、ガードに今起きた出来事を説明する。

 とても一言では言い表せない、危険な状況だった。

 内部の事情を知らない瑠璃は、他の4人の安否が気になっている。


「この遺跡……。ゆっくりこちらに移動している」


 瑠璃はパソコンを操作して、遺跡の進行を確かめた。

 このまま遺跡が進行を続ければどうなるのか、必死で調べる。

 すると遺跡はこのまま日本の真ん中に向かう事が分かった。


「まさか日本全土を攻撃するつもりなの?」


──────────────────────────────


 ムー大陸の内部。光夜はエムー達と会話を続けている。

 クイスト人が蘇った以上、現代人だけの問題ではない。

 エムーも協力して戦ってくれると、宣言した。


「元々アンタらの大陸だろ? なんでクイスト人に支配されているんだ?」

「先程も言った通り、奴らは指導者に寄生した」

「ちっ……。知らない間に大陸まで乗っ取ったって事か……」


 光夜は精神に寄生する、クイスト人の恐ろしさを思い知った。

 知らずの間に支配され、都合の良い世界を作られる。

 それは現代人にも適応されるような、状況ではないかと考えられる。


「やむを得ない。ムー大陸の破壊を許可しよう」

「許可されなくてもやるつもりだ。俺達の未来を守る為にな」


 光夜は大急ぎで来た道を引き返した。

 美里も慌てて光夜の後を追う。


「何処へ行く? 動力部は反対だぞ?」

「動力をぶっ壊すって手は使わない。俺に考えがある」


 光夜はある作戦を思い付いていた。

 その為にはまず外に出て、通信をする必要があった。

 動力部を破壊したら、中に居た者の安全が確認できないからだ。


「ぶっ壊して良いって言ったよな? ちょっと失礼!」


 光夜は狭い通路まで戻ると、拳銃を壁に向けた。

 そのままエネルギーを込めて、壁に向かって発砲する。

 壁は僅かにヒビが入り始めていた。


 光夜はダイナマイトを壁に設置した。

 全員距離を取って爆発させ、壁に大きな穴をあける。


「これで電波が通るぜ」


 光夜は通信をして、用意していた秘密兵器の使用許可を取った。

 許可がとれたので、優也達と合流して脱出を目指す。


『光夜。どうやら同じことを考えていたみたいだな』

「優也。今反対側か?」

『ああ。このまま外壁を通って、合流するぞ』


 光夜は『了解』と告げて、そのまま外壁を通って合流した。

 優也達はついて来たエムーに驚いたが、直ぐに状況を理解する。

 彼らも別方面で違う者を見て来たのだった。


「光夜、反対側にも凄いものがあったぜ」

「へえ。これ以上の驚きを教えてくれるんだろうな?」

「調査隊や古代人と思われる存在が、コールドスリープで発見」


 優也の一言に一番驚いたのは、エムーだった。

 何故ならムー人はコールドスリープなどしていないからだ。

 ムー大陸の管理人として長くを過ごしても、その部屋を発見できなかった。


「俺には透視能力がある。隠し部屋でそれを見つけた」

「なるほど。我ですら知らない部屋があったとはな」

「さっきの話と統合すると、多分眠っていたのはクイスト人だな」


 クイスト人は古代人の体を、現代に生かす為。

 冷凍保存をして眠っていた。

 全てはムー人の力を現代に残す為だった。


「調査隊が眠っていたのは、彼らの肉体を乗っ取るためだろう」

「なるほどな。遺跡を浮上させて調査させ、やって来た人間に寄生する。ん?」


 光夜はここである事実に気が付いた。


「と言う事は……。俺達も?」

「寄生されている?」


 光夜と優也が可能性に気づいた時。

 外壁が壊れて内部から、機械人形が飛び出して来た。

 機械人形は手にレーザー銃を持っており、光夜達に銃口を向けている。


「古代ムーの防御装置が、暴走したようだ」

「流石当事者。状況を一瞬で説明してくれる!」


 光夜達は左右に分かれて、発射されたレーザーを回避。

 機械人形は内部から更に3体が、飛び出して来た。

 光夜は拳銃を発砲するが、ドローンと同じバリアに阻まれる。


「ふぅ~。古代人の技術って凄い」


 光夜は即座に装備を剣に切り替えて、機械人形を切り裂いた。

 1機を壊す事に成功したが、もう3機は連携で近づけない。

 苦戦している間に、更に増援が内部から近づいてきた。


「冗談じゃない。一々相手してられねえな」


 光夜は背後をチラリと、見つめた。

 美里や優也達の姿は既に消えている。

 光夜も反対方向へ走り、そのままムー大陸からダイブする。


 乗って来たヘリにつかまり、そのまま内部に戻る。

 瑠璃が遠隔操作でへりを操縦したのだ。

 巫女が操作をマニュアルに切り替えて、光夜達は状況を確認する。


「さっきの話の続き。俺達は大丈夫なのか?」

「心配するな。クイスト人は目覚めたばかり。まだ寄生は出来ん」

「そう言えば立体映像だったな。エムーさん」


 エムーはムー大陸周辺なら、何処にでも姿を現わせる。

 光夜達はムー大陸の上を飛びながら、地上を攻撃する砲台へ対抗する。

 光夜は美里がマッピングしたデータを、見つめていた。


「この地図から、動力部は恐らくこの辺りだ」


 美里の内部地図と外部図を比べながら、光夜は説明した。

 動力部を破壊できれば、ムー大陸は機能を停止する。

 その為まずは動力部に繋がる外壁を、破壊する必要があった。


「まずはロケットランチャーを打ち込んで、外壁を破壊な」


 光夜は言いながらロケットランチャーを取り出した。

 そのまま動力部がある場所へ、ロケットを打ち込む。

 ロケットは外壁にぶつかると、大きな爆発を上げた。


 しかし動力を守っている大事な外壁。

 ロケットランチャーでも、僅かにヒビを入らせただけだった。

 頑丈に出来た外壁を、光夜達は崩せずにいた。


「やはり厳しいか……。アレを使うぞ!」


 光夜はそう言って切札である、黒い筒を取り出した。

 ガードが開発した新兵器である『ネオχ』。

 戦車の装甲をも貫く、光線を発射する兵器である。


 光夜はネオχの引き金を引いて、虹色の光線を発射した。

 光線はヒビの入った外壁に当たり、大きな穴をあけた。

 その先から動力と思われる、緑色の光が現れた。


「さてと問題はここからだ」


 動力部を破壊すれば、ムー大陸は落ちて来る。

 そうなれば地上への衝撃も避けられないだろう。

 その為ムー大陸落下の被害を少しでも抑える必要があった。


「優也と巫女はこの場で待機。合図したら動力を破壊しろ」

「了解。お前らはどうするつもりだ?」

「内部に大量の火薬をぶち込む」


 光夜と美里はヘリからダイブした。

 パラシュートを使って地上に着地する。

 彼らが降り立ったのは、とある廃棄された路線だった。


「まさか以前回収したコイツが、役にたつとはね」


 光夜達は以前の事件で回収した、装甲列車に乗り込んだ。

 ガードが改造した後、正式な兵器として採用されたのだ。

 背後には火薬を積んだ貨物車を連結させて、ムー大陸に向かって走る。


「一発でも被弾したらドカンだ。美里、弾は全部撃ち落とせよ!」

「了解! 私の力、見せてあげるんだから!」


 美里は電気を飛ばして、飛んでくる光線を相殺。

 光夜も装甲はAIに任せて、機関銃で砲口を攻撃していく。

 砲口が次々と壊れて良き、光線も全て相殺されていく。


「今だ! アレに向けて磁力発生!」


 十分ムー大陸に近づいた所で、光夜は指示を飛ばした。

 美里は磁界を操って、ムー大陸に列車が向かうようにした。

 飛んでくる光線を光夜が、剣でかき消していく。


「衝撃に備えろ!」


 2人は外壁に当たるギリギリの所で、列車の内部に避難した。

 大量の火薬を積んだ装甲列車は、ムー大陸の外壁を貫通。

 そのまま線路無しで走り続ける。光夜は貨物車を切り離していく。


 それぞれが誘爆するように貨物車を置いていく。

 列車はスピードに乗ったまま。反対側まで貫通した。

 光夜は最後の貨物車を切り離し、落下の衝撃に備えた。


「優也! 動力部を破壊しろ!」

『了解! 俺のカードで、全部ぶっ壊す!』


 優也は光るカードを、光夜は拳銃の弾をそれぞれムー大陸に向けた。

 優也が動力部を破壊すると同時に、光夜は貨物車に発砲。

 ムー大陸の機能停止と共に、内部の貨物車が大きな爆発を上げていく。


 その爆発にムー大陸は内部から崩されていく。

 巨大だった遺跡は、爆発によって粉々に砕け散った。

 地上に破片が降り注いでしまったが、被害を最小限に抑える事が出来た。


「ふぅ……。なんとか任務完了……」

「古代文明の貴重な遺産がぁ……。仕方ないんだけど……」


 美里はがっかりしながら、爆発するムー大陸を眺めていた。

 今回の任務はこれで終わったと誰もが思っていた。

 だがそんな彼らを嘲笑うかのように、背後から光夜の足共に発砲される。


「これで勝ったつもりか? 我々はこの程度では滅びぬぞ」

「アンタら確か……。遺跡調査の護衛」


 光夜に発砲したのは、遺跡調査の護衛だった。

 彼らはピストルを光夜に向けながら、ニヤニヤと我っていた。


「お前らがクイスト人か」

「情けない。我らが死体にしか寄生出来ないとは」


 意思のない者に寄生したため、100%クイスト人の意識が表に出る。

 彼らは復活したばかりなので、生きている者に寄生できない。


「君達のおかげで、我々も計画を変更せざるを得ないようだ」

「お礼なら受け取ってやるよ。面白いものならね」

「中々の余興だったよ。だが本番はここからだ」


 リーダー格と思われる人物が、光夜の知らないデバイスを弄った。

 赤い光がデバイスから空に向けられる。


「我々が支配していた古代人は、ムー人だけではない」

「なんだと? まあ不思議じゃないけど」

「かつて月に住みし民もまた、我らの支配下なり」


 赤い光は幾つもの機械を通って、月へ向かった。

 現代人が造った人工衛星も、回線として利用されていた。


「ちょっと月の重力を操らせてもらった」

「ちょっとってレベルじゃないぞ! お土産にしても高級品だな!」

「後3時間ほどで、互いの引力に引かれ合い、地球と衝突する」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る