第4章 古代文明と外敵

第1話 ムー大陸

 遺跡の中でマシンガンの銃声が、鳴り響く。

 アーマーを着込んだ人物たちが、小型のドローンに発砲を繰り返す。

 だが小型ドローンは青色のバリアで、その銃撃を防ぐ。


「一体なんなんだ!? ここは古代遺跡だぞ!?」


 銃撃を止め、1人の隊員が疑問を口にした。

 彼らの任務は古代遺跡調査の護衛だった。

 誰もが簡単な任務だと、疑わなかった。


 突如海上に浮かび上がった、古代人の遺跡。

 考古学者の護衛として、彼らは呼ばれた。

 だが遺跡を調査中、突如ドローンが彼らを襲った。


「この音は……。まさか自爆音!?」

「まずい! 総員退避!」


 その言葉が全員に届いたのと同時に。

 ドローンは青色の波動を、周囲に飛ばした。

 調査員達は波動によって、吹き飛ばされた。


──────────────────────────────


「古代遺跡。その謎は神秘に満ちている……」


 考古学の本を読みながら、美里はポエムを唱えた。

 父親の影響で考古学に興味を持った、美里だった。

 今回の古代遺跡浮上にも、ロマンを感じずにはいられない。


「大きさは大陸に匹敵する。まさに第7大陸……」

「マジでムー大陸何じゃないかって思うぜ」


 美里のポエムを、光夜は真面目に聞いていた。

 事件が起きない時、チームムーンライトの控室は穏やかだ。

 全員滅多に来ない平和を、満喫している。


「大きさもそうだけど、やっぱり突然浮上して来たって所ね」

「あんなものを、誰にも知られず海の底に沈めるのは不可能だからな」


 古代の遺跡には、偽物もある。

 だが今回の遺跡は、誰かが現代に作ったとも思えない。

 それ程までに巨大で、不思議な遺跡が浮かんできた。


「古代人は今より進んだ技術を持っていたらしいよ」

「今回の件で、それが現実味を帯びて来たな」

「なぁのに! 何よ! 皆そのテンションの低さは!」


 美里の熱弁を光夜以外は、冷めた目で見ていた。

 興味がなさそうに風船を飛ばしたり、パソコンを触っている。


「ただの石ころだろ? 何がそんなに良いんだ?」

「シャラップ! 優也、アンタは古代のロマンが、全く分かってない!」

「ならウザくなく、分り易く説明してくれよ……」


 何度も同じ話を聞かされて、優也はうんざりしていた。

 一々反応する光夜が、羨ましく思える程だ。

 遺跡発見後、美里は事あるごとに、この話題を口にしていた。


「良い? 紀元前から哲学者が既に的を得た……」

「はいはい。光夜、電話なっているぞ」


 美里の話が長くなりそうなので、優也は話題を逸らす。

 光夜は専用の通信デバイスで、電話を取った。


「はい。こちらガード異能犯罪対策課、チームライトムーン」

「どうやらやっと解放されそうだ」


 事件が起きればそちらに集中する。

 その為流石の美里も黙るだろうと、優也は思っていた。

「何だって? 俺達に調査を?」


 光夜は眉間にシワを寄せながら、美里の方を向いた。

 そのまま一方的に会話をされ、適当な返事をする。


「了解。各員に伝えておきます」


 光夜は電話を切った。

 その表情は悩みを抱えたものへ変化している。


「どうしたんだ?」

「例の遺跡の調査。俺達に一任された」

「はあ!? 俺らは異能犯罪対策課だぞ?」


 優也は立ち上がって、驚きを見せる。

 そこでハッとして、美里の方を振り向く。

 彼女は目を輝かせながら、嬉々としている。


「遺跡の調査隊が全滅だとよ」

「まさか。護衛に傭兵を雇っていたはずだろ?」

「そいつら含めて全滅だ。内部で生体反応が消えたらしい」


 調査隊が全滅したため、内部の情報は分からずじまい。

 その為より強力な調査隊を必要としていた。

 そこで彼らに相談が乗って来たのだ。


「どうやら内部に、得体の知れないなにかが居るらしい」

「でも生体反応がないんだろ? 何もいないんじゃ……」

「生物ではない何かが居るってことさ」


 光夜は装備を整えながら、優也に拳銃を投げ渡した。

 優也は溜息を吐きながら、装備を整える。


「全員、今回は調査が目的だ。派手な戦闘は、控える様にとの事だ」

「リーダーが一番不安なんだがな」

「うるせぇ。今回は控え目で行く予定だよ」


 各員は装備を整えて、車に乗った。

 傭兵を倒すほどの相手なので、秘密兵器も投入予定だった。


──────────────────────────────


 遺跡は日本海の上に、浮かんでいた。

 光夜達は車で移動した後、ヘリに乗って遺跡に侵入する。

 瑠璃だけは遠くから、ドローンを飛ばしてサポートだった。


「それにしてもでかいな……」


 空から遺跡を見ながら、光夜は大きさに感心していた。

 これ程の遺跡が古代のものなら、人類の歴史が変わる。

 光夜自身も歴史と言うものに、興味がある人種なのだ。


「遺跡到達後、2班に別れよう。俺は美里と、優也は巫女と組む」


 光夜達はヘリから、遺跡に上陸した。

 遺跡には入口が1つしかなく、他に忍び込める場所もない。

 4人は壁に体を隠しながら、中の様子を確認する。


 内部に誰か居る気配はない。何かある様子もない。

 調査隊の死体は、もっと奥の方にあると考えられた。


「作戦通りに行くぞ。俺と美里は右から探す」

「了解。巫女、俺達は左から行くぞ」


 光夜達は遺跡に入り、調査を開始した。

 入ると大きな広場が存在し、それぞれ左右に別れた道がある。

 相談通り二手に別れて、調査を開始する。


 光夜と美里は右の通路に入り、調査を開始。

 光夜が前方に出て周囲を警戒。

 美里が調査のためにデバイスを持つ係となっていた。


「凄い……。周囲についている土は、紀元前の地層だよ」

「へえ。ピラミッドより前か? 昔の人は凄いな」

「ソクラテスが生まれるより前だよ。ずっとね」


 美里は調査をしながら、タブレットを取り出した。


「道に迷わない様に、マッピングしておくね」

「流石レトロゲーマー。頼むぜ」

「といっても今の所真っ直ぐなんだけどね」


 2人が通ったのは、人が2人通れるのがやっとなほどの通路だ。

 2人は縦に並びながら、周囲を調査していた。

 光夜は神経を集中させて、周囲の様子を観察する。


 2人は広い部屋に辿り着いた。

 辺りには銃弾が当たった後があり、ここで戦闘が起きたと察しられる。

 そこで光夜はカチッと言う音が鳴ったと、気が付いた。

 

「上か! 俺を不意打ちしようなんて、100年速いぜ!」


 光夜は音が鳴った方向へ、拳銃を向けた。

 そこには青色の球体に包まれた、ドローンが光夜に狙いを定める。

 光夜はドローンに驚きながらも、引き金を引かずに観察した。


「何だあれ? ドローンに似ているけど……」

「妙ね。この場所には電波が通らないから、ドローンは飛ばせないはずだけど」

「古代文明の罠かもな。とにかく様子を見よう」


 光夜はドローンの下に、機関銃がついている事に気が付く。

 その銃口は真っ直ぐ光夜に向けられている。

 光夜も銃口を向けて、ドローンに警戒を示した。


 ドローンはゆっくりと移動すると、同時に機関銃を発砲。

 光夜は美里を掴んで、壁を盾に隠れた。

 回避しながらも発砲するが、光夜の弾はバリアに弾かれる。


「何だか知らないが、敵意だけは剝き出しだな!」

「通信が通れば、瑠璃に解析してもらえるんだけど……」

「それが出来ない以上、やる事は1つ。ぶっ壊す」


 光夜はカートリッジを取り出して、剣の鞘に装着した。


「あれ? 剣変えたの?」

「こないだの事件で壊れちゃったからな」

「そのカートリッジ。異能力者のデータが保存されている奴だよね?」


 光夜が装着したのは、スキルカートリッジ。

 ガードに記録された異能力を、保存したものだ。

 逮捕者や所属員のデータが、主に記録されている。


「ああ。これで異能力を再現出来るんだ。疑似的にだけどな」

「へえ~。どんな感じになるんだろう?」

「まあ見てな。今電気異能力を、装備したから」


 光夜はカートリッジをオンにした。

 電気異能力が再現され、光夜は光速でドローンに近づいた。

 そのまま電気を浴びた剣で、ドローンを切り裂く。


 斬撃はドローンのバリアを貫き、そのまま破壊する。

 バリアは近接武器に脆く出来ていた。

 光夜はその事を読んで、剣で攻撃したのだ。


「凄いね! これで幾つも異能力が使える訳かぁ!」

「ああ。ただし冷却に1分かかるけどな」

「クールタイムって奴ね。ゲームみたい」


 異能力の再現は、デバイスに負荷がかかる。

 その為デバイスが熱を発しやすい。

 壊れず使うには、1分間冷却して使う必要がある。


「ここで戦闘があったと言う事は……」

「調査隊はさっきの奴に襲撃されたって事だね」

「ああ。奥の方に逃げてやられちまったのかもな」


 光夜達は改めて調査の為に、奥へと進んだ。

 美里はマッピングしながら、遺跡のどの辺に居るのかを確かめる。

 ようやく中心部に近づいてきた所で、2人は再び広い部屋に来た。


 そこで2人は衝撃的なものを、目撃する事になる。

 青色に光る壁が、広い部屋を囲んでいた。


「何だこれは? 石じゃないよな?」

「光夜。これは発光ダイオード……。LEDに似たもので光っているよ」

「バカな! 紀元前の遺跡に青色に光るLEDが!?」


 光夜はあり得ないと思いながらも、古代人の謎に近づいた。

 古代人は創作物で、現代を超える技術を持っていたとされている。

 光夜は歴史の過程で、そんな存在はあり得ないと思っていた。


「よもやここまで辿り着けるものが、現代にいたとは……」

「誰だ?」


 部屋に鳴り響いた声に、光夜は反応した。

 彼の言葉に応じる様に、青い立体映像が表示される。

 そこにはローブを被った人物が、光夜達を見つめていた。


「私の名前は君達の言葉で、『エムー』。このムー大陸の主である」

「ムー大陸だと? あれは創作物のはずだ」

「ふむ。君達の祖先の遺伝子記憶が、無意識化にインスピレーションとして、この大陸を描いたようだな」


 光夜には何を言っているのかが、理解出来なかった。

 ただハッキリわかるのは、目の前の人物が日本人ではない事。

 更に日本語を流暢に話せるような、人間であると言う事だけだ。


「我々はムー人。君達よりも遥昔に栄えた、古代の人種である」

「色々聞きたい事はあるけど、まずはこの大陸飛ぶのか?」

「かつては空を飛んでいた。あの恐るべき『クイスト人』に滅ぼされるまでは」


 ムー大陸は実在していた。創作物ではなく、本当のあったものだった。

 それは記憶として遺伝子に書き込まれ、ある人物が思い出したように書き示した。

 そうして現代まで正しい意味で、子孫に伝わっていた。


「この大陸が浮上したと言う事は、奴らも目覚めたと言う事か……」

「なんだよ。そのクイスト人って言うのは?」

「クイスト人は知の始まり。現代人に知識を与えたものなり」


 エムーはクイスト人と、現代人の繋がりを話始めた。


「クイスト人は、精神寄生体。生命の無意識に入り込み、意思とは無関係の操作する」

「人間の意識は無意識が90%って言うからな。無意識を支配されれば……」

「無自覚に体を乗っ取られる。クイスト人はそうやって、人々に知識を与えた」


 それはムー人が滅びたずっと後の話だった。

 ムー人に封印されたクイスト人は、僅かに生き残りが存在した。

 その生き残りが人類を操り、復活の準備をしていた。


「ムー人も指導者が寄生され、支配下におかれていた」


 クイスト人は寄生した人物を、指導者へと導く。

 そして自分達に都合の良い様に、人々を操っていく。

 彼らは自分達が人々を導くと、本当に信じていた。


「だが奴らは腐敗した権力の象徴。支配は長続きしない」

「確かに。権力はいずれ腐敗する。人間の歴史でも繰り返されてきた」

「自分達の都合が悪く文明が育つと。奴らは文明を滅ぼしにかかる」


 ムー人はクイスト人の思い通りに、道を進まなかった。

 クイスト人と争いになり、長い年月の末に封印に成功。

 だが代わりに彼らの大陸は、海の底へと沈んだ。


「奴らは幾つもの世界を支配下に置き、滅ぼして来た」

「つまりクイスト人はこの世界の存在ではないと?」

「それは想像だがな。少なくとも異世界に居る事は事実なり」


 エムーがそこまで話した所で、大きな地響きが発生した。

 光夜達は柱を掴み、体勢を崩さない様にする。

 

「なんだ? 何が起きた?」

「ムー大陸が再び浮上する。クイスト人が遂に復活した」


 ムー大陸は徐々に空へと、浮上していた。

 その振動が内部に起きて、揺れているのだった。


「奴らの目的は支配だ。その支配を受け入れぬ者は、滅ぼされる」

「分り易く説明してくれ! これから何が起きるんだ?」

「民主主義国家、全てが攻撃される」


「分り易い! つまりこの場合最も危険な国家は……」

「大陸の直ぐ側にある国家。日本だ」

「まったく良く問題の起きる、国だな!」

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