クライマックス 電子男をぶっ飛ばせ!

 光夜達は空中で、或鷹と向かい合っていた。 

 優也の負担を下げる為、光夜達は一度ビルの屋上へ降り立つ。

 2人に合わせて、或鷹もゆっくりと下降し始めた。


「やってくれたな。貴様ら」

「それはこっちの台詞。随分と街を破壊してくれたな」


 光夜達は屋上で向かい合いながら、違いを睨み合った。

 大きな風がビルの隙間を、通り抜ける。


「俺の要求が呑めないと、どうなるか言ったよな?」

「この辺りは停電中。もうお前に逃げ場はない」

「ふっ……。お前らを倒して別の場所に移動すれば良いだけだ」


 或鷹は両手から電気を放出した。

 光夜と優也は左右に別れて、攻撃を回避する。

 或鷹は両手を広げて、2人を追いかける様に電気を放つ。


「分り易くて助かるぜ。こっちも本気モードだ」


 光夜はブルーヒートを発動させた。

 背中に収めていた剣を取り出し、電気を避けるため上空へ飛ぶ。

 空中に逃げた光夜を追うように、或鷹は電気の軌道を変えた。


 光夜は飛んで来た電気を、剣で防いだ。

 光夜の剣はプラスチック製で、殺傷能力を下げている。

 彼が思いっきり振っても壊れないくらい、頑丈に作られていた。


「セイヤー!」


 光夜は上空から飛び蹴りを、或鷹目掛けて行った。

 或鷹は攻撃を防ごうと電気を放つが、全て足に弾き飛ばされる。

 光夜の蹴りがあと少しで或鷹に当たると言う瞬間


 或鷹の姿は一瞬で消失した。

 彼の姿は光夜の背後から現れ、油断していた光夜に電気玉をくらわせる。

 光夜は電気玉に直撃し、地面に叩きつけられる。


「無駄だ。俺は電気と同じ速度で移動出来る」

「秒速30万キロ? 内臓が破裂しそう」

「俺の体は装甲列車より頑丈だぞ」


 或鷹は再び高速移動で、光夜の眼前に現れる。

 光夜に気づかれない様に、電気玉を飛ばす。

 光夜は背後に吹き飛ばされ、フェンスに激突する。


「終わりだ」


 光夜にトドメを刺す為、或鷹は高電圧放射をしようとした。

 だが横から優也が或鷹を蹴り飛ばし、未然に防ぐ。

 或鷹は空に浮かびながら、体勢を立て直した。


「おい電池野郎! 俺が居る事も忘れるな」

「1人ずつ確実に倒す。理にかなった戦術だろ?」

「数が多けりゃ、全体攻撃基本よ。もっと増えちゃうもんね!」


 優也は指を鳴らした。すると彼の体から、3つの分身が出現する。

 優也はテレポートを駆使しながら、分身と共に移動した。

 4人の優也が或鷹の周囲を移動し、彼を翻弄する。


「確かに全体攻撃の方が、効率が良さそうだ」


 或鷹は周囲に強力な電磁波を、放出した。

 その衝撃で優也は吹き飛ばされる。

 優也は体が痺れて、地面に向かって落下した。


「光夜、これはピンチなんじゃ……」

「そうでもねえよ。援軍が来た」


 光夜はの背後から、ヘリが飛び立った。

 ヘリの扉が開き、美里が姿を見せる。


「下らん援軍だな。直ぐに撃ち落としてやる」


 或鷹は電気放射をヘリに向けて行った。

 だが電気はヘリに当たらず上空へと、飛び去って行く。

 

「なるほど。磁場を操った訳か……」

「形勢逆転だな」

「そうでもない。この手の異能力者がいる事は、想定済みだ」


 或鷹は上空に向けて、飛び始めた。

 その速度は光速故、光夜達に捉える事は出来ない。

 

「あいつ……。何をするつもりなの?」

「プラネットワークに侵入するつもりだ」


 光夜が語るプラネットワークとは、惑星間を繋ぐネットワークの事だ。

 人工衛星をネットで管理するため、大国が力を上げて作り上げた代物。

 瑠璃の力をもってしても、プラネットワークを切る事は出来ない。


「サテライトレーザーでも、乗っ取るつもりなんだろ」

「あれ? それって結構ヤバいんじゃ……」

「結構じゃなく、かなりヤバい」


 光夜達の遥上空。宇宙空間に漂う1つの軍事衛星。

 その1つが開かれ、照準を地球の東京へと向けていた。

 尖端にエネルギーが集まり、ゆっくりと角度を調整していく。


「巫女! ヘリを下して、こっちに来てくれ!」


 光夜の指示通りヘリを着地させ、青い髪色の少女が下りた。

 髪の毛をロングして巫女服を着ており、青い瞳をしている。

 コードネームKMの正体である、工藤巫女くどう みこである。


「ありったけのエネルギーを、俺に集めてくれ!」

「ええ!? まさか撃ち返す気!?」

「それしかねぇ! 頼む!」


 巫女の異能力。それはエネルギーを分け与える能力だ。

 傷を塞ぐ効果もあり、主に治療用に使われる異能力。

 光夜はその力を自分のエネルギーを上げる為に、使うつもりだった。


「分かったわよ! まったくアンタは無茶ばっかりなんだから!」


 巫女は光夜の肩に手を置き、力を込め始めた。

 彼女の体が白い光を放ち、光夜にエネルギーを集めていく。

 光夜は集まったエネルギーを、全て剣に込めた。


 その間にレーザー衛星は、チャージを終えていた。

 水色の光線を尖端から放ち、日本に向けて一直線に飛ばす。

 狙いは光夜達が居るビルだ。或鷹の計算で間違いなく、東京を直撃する。


「行くぞぉ! ブルーバースト!」


 光夜は剣先から、青色の光線を空に向けて放った。

 光夜と衛星の光線は宇宙で衝突し合う。

 周囲の宇宙ゴミを粉砕しながら、強い衝撃が走る。


「負けるかぁ! パネェの行っちゃうぜ!」


 光夜は剣に込めるエネルギーを、増幅させた。

 彼の放つ光線が太くなり、衛星の光線を押し返していく。

 

「セイヤー!」


 光夜は最後の気合を入れて、更にエネルギーを増幅した。

 光線は完全に押し返され、衛星に直撃する。

 衛星は宇宙で大破し、その衝撃で或鷹は地球に吹き飛ばされる。


「トドメだ!」


 大気圏を突破して落下する或鷹を見て、光夜は空高く飛んだ。

 光夜は落下してきた或鷹と高度を同じにする。

 すると連続で彼の事を、殴り続けた。


 最後に背中を思いっきり、両手で叩きつける。

 或鷹は地面に向かって落下し、そのままクレーターを作る。

 或鷹はその衝撃で気絶し、その場で動かなくなった。


「名前は知らないが、アルタの現ボス。貴様を逮捕する!」


 光夜は異能力を封じる手錠を、或鷹にかけた。

 こうして犯罪組織の復活は、未然に防がれた。

 ガードは異能犯罪に屈することなく、勝利したのである。


「任務完了。これより報告する。始末書と一緒にね」


 異能犯罪の規模は、常軌を逸脱している。

 その為いつも甚大な被害を、引き起こす。

 被害を少しでも抑える為、今日も彼らは戦い続ける。


 彼らのガードの捜査員、チーム『ムーンライト』。

 これからも彼らは、凶悪異能犯罪と戦い続ける。

 これはほんの1ページに過ぎないのだ。

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