第2話 地上と地下
「皆さん聞いてください。今ここは結界の中です。この中なら絶対に安全です。心配しないでください。妖怪は私達、陰陽師で対処します。」
呆然と立っている俺達や絶望して立てないでいる周りの避難民にある一人の高身長イケメンでいかにも陰陽師の中でも強そうな陰陽師のお兄さんが声をかけた。
(正直そんなこと言われても家族や友達のことで頭がいっぱいな人たちにはそんな声は届かない)
「母さんとりあえず陰陽師が妖怪を倒しきるまで待とう」
「うん、そうね」
母さんは落ち込みながら返事をした。母さんもおばあちゃん達やこれからのことで頭がいっぱいだ。
しばらくして陰陽師による事態の鎮圧が終わった。鎮圧後の街は見るに堪えなく、そこら中に人の◯体や血の生臭い匂い、血が飛び散っている。
「皆さん地下の安全なシェルターを用意してます。ご案内します。」
駅の近くに隠し階段があり、俺達は一人ずつ中へ入っていく。
最新部に着くととそこは広大な街が広がっていた。まるで地下の王国かのような。そこに一つの国レベルの街がある。
(国はこうなることが分かっていてこんなものを作っていたのか)
国に苛立ちを覚えた。もし本当に分かっていて準備していたのなら一発殴りたいぐらいだ。
とにかく今は大人しく従った。黒い軍服の陰陽師についていく。一組ずつ指定の家へと案内される。俺らも案内された家に入った。家の中は至って普通の家。家具も全て揃っていて、生活に何一つ不自由ない、むしろ十分すぎるぐらいだ。
家には一つのタブレットがあり、陰陽師に動画を必ず見てほしいと言われていたので、タブレットで説明の動画を見た。
「ようこそ、皆さん私はこのアンダーヘブンシティの支配人『中崎 神威』です。いきなりこんなところに来てさぞ戸惑っているでしょう安心してください。ここは絶対安全です。今地上では妖怪によって襲われています。もはや地上でもう一度生活するのは難しい。陰陽師で日本を取り戻すまでここで住んでもらいます。」
そんなクソ長い説明が二十九分も続いた、彼によるとこの街は『アンダーヘブンシティ」といい、この街では独自の『アイン』という通貨があるらしい。毎月国民には一人百アイン、日本円でいうところの5万円が支給される。
ここの街の物価は恐ろしいほど高くやはり働かないと百アインでは厳しい。
「凪、何があっても守ってあげるから安心してね」
「うん」
母さんはそう言って俺を抱きしめた。母さんも不安だろうに。母さんの手、体は震えていた。
それから一ヶ月経ち俺達もこの街に慣れてきた頃ある噂が流れた。
「今地上の愛知県が妖怪に占領されたらしい」
故郷は占領されてしまった。数少ない友達、好きな人だった人にもう一度会いたい。そんな願いはもう叶わないと思った方がいい。
地下にはテレビもラジオもないのでこういう情報を手に入れるのは難しい。
そして悪い噂はまだ続く。
「宮崎県が妖怪の王国と化しているらしい」
(このままだと日本全体がが占領されるのも時間の問題じゃないか)
妖怪に対抗する手段は陰陽師になり妖怪を扱い妖怪を倒すしかない。
そう思い俺は地上になんとかして出ようとした。地上にいる陰陽師に弟子にしてもらおう。そう考えた。
だが、地上には出れなかった。地上への出入り口には武装した軍人がいて許可なしでは出入りを禁止しているらしい。
(俺は何にも考えずに地下で生きてろってことなのか、クッソ)
悔しくて地面を強くグーで殴った。
するとそこにある貴族のような明らかにお金持ちの人が、家臣を連れて地面で這いつくばる俺の目の前で止まった。
「君、力が欲しいのか、日本を救う力を」
「俺は日本を、元あった平和な日本を取り戻したい」
強気にその人に言った。その人は冷静にこちらを見ている。よく見るとその人は女性で身長は一六〇センチぐらい、かなり美人だ。
「なら力を授ける。しかし代償はある、それを覚悟しておきなさい。」
「分かった。代償なら受け入れる。もうあれ以上の地獄は見たくない」
俺はその人にある場所に徒歩で連れてかれた。進んで行くとどんどん人の気配がなくなっていく。そしてある一つの倉庫についた。その人は家臣を倉庫の入り口に置いた。
「さあ、二人でこの倉庫の中へ行こう」
少し怪しげな倉庫だ。個室に男女二人。ラブコメのような生優しい展開はまあまず起きないだろう。そう思える理由はその人の発する声、目など全てが真剣で真面目っぽかったからだ。
倉庫へ入ると中にはもの一つ何もなかった。しかし、その人は左の壁にある四角い装置にカードをかざし、多分その後顔認証みたいなものをしていた。
すると、右端の床が開き階段が姿を現した。
(まるで重要な研究室があるみたいに厳重だな。一体何を見せられるんだ。生物兵器とか。まさかな、映画の見過ぎか)
その厳重さ、それと階段を見た時のその人の目つきが変わったような気がしたので、心配や不安がずっと俺の胸の内で膨れ上がった。
俺はその人についていきながらその階段をポツポツと降りていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます