第10話解答編

「え……?! な、なんで忘れたふりをしてたの?」

 トロイノイにあの時から今までずっと、記憶を無くしてなかったことを正直に話した私。

 トロイノイからの当然の問いに私は答える。


「……諸々を忘れたていでなら、ヴィーシニャさんへの素直な思いが分かるかと思って」

「素直な思い……? 好き、とか……?」


 好き……ね……。ヴィーシニャさんの身体が好きかと問われたなら、トロイノイの前と言えど、あまり迷わずに好きと答えるのですが、ヴィーシニャさんの身体も含めた何もかもが好きかと問われると……。


「……ヴィーシニャさんへの好きの種類に、どうも確信が持てなくて。

ヴィーシニャさんは清く美しく……蠱惑的もとい魅惑的、いや、魅力的な人ですし……貴方というものがいながらとも思いますが……」


「……で、その素直な思いって分かった?」

 トロイノイが、私に少し近付いてそう尋ねてくる。

 目の前のトロイノイ及び自分の想い等を整理しようとして浮かぶヴィーシニャさんによる二重の風で、情欲の火花が弾けるのが目に映るが、グッとこらえて質問に答える。


「……今思うのは、謝りたい……、許されるなら抱きしめたい……。

……抱擁は許されないとは思いますが、五体満足で、何者にも命を奪われることなく、お互い温かい身体でいる尊さを感じて欲しい……」

 温かい、身体……。観覧車の中で、ヴィーシニャさんの穴という穴に侵入したときの、あの温もりと締め付けられる感じを思い出して、息が吐きづらくなる。

 ……今トロイノイに、もたれこんだら、私はトロイノイのズボンのボタンやチャックを外して、下着も軽く脱がせて、自らスライム化してトロイノイの子宮で窒息死しかねない……!

 息を吐こうにも吐けず息を吸うばかり。

 特に頭が動いたり自分で動かしたりしてるわけでもないのに、目の前のトロイノイあるいは視界が上下左右にブレる。


 そのせいでトロイノイの顔がよく見えないが、トロイノイの声は聞こえる。

「マギヤ……来るなら来て」


 ――その福音あるいは玉音に導かれるまま、こちらに伸びているトロイノイの御御おみあしに触れる。息が吐け、視界のブレが減る。

 服どころか下着も着けていないトロイノイの太ももの奥の、私の還る場所を見る。息が吐け、視界のブレが失せる。

 トロイノイの御居処から伸びる、なだらかな腰と、小ぶりな胸の膨らみが見える。息が、吐ける。

 トロイノイの皮膚等ごしにトロイノイの膣と私の反り立つ陽根が重なり合う。息が、吐ける。

 己の四肢を、トロイノイの腰や肩周りに絡ませる。息が、吐ける。


 ああ……トロイノイに触れる度に息が吐ける……。

 トロイノイという偉大なる女神が背負う大いなる威光の前に、私は目を開けていられず、意識を保つ気力も失せた。

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