第8話解答編(7話はマギヤ視点ならではの新情報が思い付かなかったのでやめた)

 私に課せられてた、ウリッツァやヴィーシニャさんと二人きり禁止令が解除されたと、ウリッツァから知らされた。


「……ウリッツァはともかく、私、ヴィーシニャさんに何をしたんですか」

 ヴィーシニャさんとの記憶がないことになっている私なら聞いて当然の質問。

 それに対するウリッツァの、答えになってない答えを小耳に入れながら、私は考える。


 ……私がヴィーシニャさんにしたことの重大さは、この身をさいなむ呪いとなって、ふとした時に私を責め続けてる。

 例え本当にヴィーシニャさんの記憶が無くなったとしても、この体は、ヴィーシニャさんのあの感触――豊満な胸の柔らかい感触、私の邪欲を余さず搾り取らんとするあの感触――を決して忘れない気すらする。


 それにしても分からない。

 なぜヴィーシニャさんは、自分を手酷く犯した男と、また二人になろうとするのか。

 ……ウリッツァとの平和な行為じゃ不満? それともウリッツァそのものに不満が?

 逆に私への嫌がらせとか?

 ――いろいろ考えてる内にウリッツァの話が終わった。


 ウリッツァが私のあれを、トロイノイから聞いたと言ってたので、トロイノイにも、あれについて聞いてみる。

 ……そんな百面相させてごめんなさいトロイノイ。

 私、あのことを忘れてたのは、トロイノイが猫に見えてたあの期間だけなんです。

 今は……あ、目の前で起きてるかの如く、すごく鮮明に思い出せる。


 観覧車の中で、ヴィーシニャさんの肩よりの両腕をグッと掴んだら、ヴィーシニャさんの桜の波のような後ろ髪がブワッと広がって、髪より少し濃い桜色の目を潤ませ、綺麗な声も震わせながら私の名を呼んで。

 それでヴィーシニャさんの口が開いた隙に、私はそこに自分の舌を差し入れヴィーシニャさんの舌と絡ませ合い、そのまま、さらにヴィーシニャさんを快楽責めに……。


 ……あ、そうだ

「……ヴィーシニャさん本人に聞きましょうか」

「え――――――」


 トロイノイの声を置き去りに私は駆け出してた。

 向かう先は、ただ一つ。

 ヴィーシニャさんの部屋。

 今日は休日ですが、ヴィーシニャさんが、他の警護班かウリッツァと共にどこかへ出かけるという話は無く、実際、今日は朝食の時ぐらいしか、ヴィーシニャさんを見かけてない。

 以前ヴィーシニャさんに贈った監視魔法付きペンダントも、今、部屋着の緩いワンピースを着たヴィーシニャさんが、部屋で一人くつろいでいるのを見せてくれている。

 私は道中迷うことなく、ヴィーシニャさんの部屋に向かう。

 部屋の扉の前で、にやけ顔を引き締め、少し深呼吸をし、冷静なドアノック&ヴィーシニャさん本人に入室許可を得た上で、私は部屋に入る。


「――私、貴方に何をしたんですか……?!」

 ヴィーシニャさんにそう問いかけた私に対し、ヴィーシニャさんは「……質問と今の姿勢に、何も感じないの?」と尋ねてきた。


 今の姿勢……? そう尋ねられて、私の目にまず入ってきたのは自分の両手。

 一方的に指を絡ませてヴィーシニャさんと手を繋いでいる。

 そこからヴィーシニャさんの頭上を見るとソファーの肘掛けがある。

 ……なぜ? 

 さっと左右に目をやると、右にヴィーシニャさんのベッド、左にソファーの広い背もたれ部分。

 以上から察するに、私は、ヴィーシニャさんをソファーの座面に押し倒していることに……なぜ?!


 訳も分からず適当な言葉を言っていると「何やってんのコラァ!」というトロイノイの声とトロイノイの魔法によると思われる下からの暴風が。

 私はその風を受けて即座にヴィーシニャさんから手を離し、風の勢いのまま飛ぶ。

 窓近くの角部分や天蓋のポールが当たらないよう体を丸めつつ、自分の背面と腕に無重力魔法を付与し、窓とベッド間の床に、眼鏡を破壊しないよう腕から仰向けに着地する。

 仰向けのまま右を見ると、トロイノイがソファーにいるヴィーシニャさんと、ソファーそばのローテーブルを庇うように立っている。

 ……ああ、素晴らしいな……聖女に仇なさんとする者は恋人だろうと容赦ない態度。

 ああ、美しいな……たった一人でも聖女を護ろうとする態度。

 ああ、愛おしいな……私に包まれる華奢な体躯が。

「――ょ――――ょっと――ギヤ?!」

 ああ……トロイノイの匂い……好き……入れてないのに腰がガクガクする。

 んん…………



 …………あぁ?

「――マギヤ!」

「うあぁ!?」

 すぐ近くのトロイノイの大声に思わず飛びのき、一気に視界が鮮明になる。

 ここは、ヴィーシニャさんの部屋……あと、トロイノイと後ろのソファーの後ろにいるヴィーシニャさん。

 えっと、私、何をしに、ここへ?

 というか、なんで私、窓側に?

 トロイノイを吸ってたら頭が真っ白になって……いや、もっと前。

 暴風で吹っ飛ばされて……もっと前! ウリッツァやヴィーシニャさんとの二人きり禁止令が解除されて……思い出した!

「私、ヴィーシニャさんと何があって二人きり禁止になったんですか?」

「その前に今ヴィーシニャがこうなってる理由、分かってんのマギヤ?!」

 うっ……! ひぇっ……

「わーーーーーん! ごーめーんーなーさぁーいー!!」

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