第6話 フラれないすれ違う

 ねぇ、言ってないから誰も気づいていないと思うんだけど。


 今日、夕ちゃんのところに通い出して7日目なのね。

 言ってる意味わかる?


 会社休みでも行ったの。

 あと、スムージー飽きた。いや、美味しいけどずっとはないわ。


「固形物、固形物、ぶつぶつ・・・」


 と、サンドイッチを頼もうか悩む。いや別に頼んでも良いんだけど、あんまりやりすぎると金銭的にストレスになりそうだから、、。


「カフェラテとか飲みたいよなぁ、、」


 ん?ないのか?あるんじゃね?聞いてみよう!


 いつも通り、自動ドアを通り抜け、真っ先にレジに夕ちゃんがいるかチェックする。ついに玄関に居る私に気づいた夕ちゃんが「あ!」という顔をして小さく手を振ってくれた!


「さ、さ、き、さん。」


 読唇術ができない私でもわかる。愛があるから。今、ささきさんって言ったよね、声に出さないで口パクで。時給いくらか聞いて私もたまに雇いたい。目の前でかわいくしてくれているだけで良いバイト。あ、夕ちゃんは社員だっけ。


「給与、、きゅうよ・・・」


「9よ?」(不吉な数字?)


 またそのきょとん顔!好きっ!1万点!


「あ、ううん。払えないからいいの。なんでもない。」


「祓えないんですか!!?」(え、こわい)


「うん。。さすがに払えない。。え?なんの話?」


「え? 佐々木さん、仕事忙しいですか?(疲れてるんですか?むしろ憑かれてるんですか?)


「いや?そんなことないよ?」(どこからその話になった?困惑。)

「それより、コーヒーってあるかしら。」


「ありますよ。(まだ心配)」


「じゃあ、えーと、これね?うん。今日はカフェラテで。」


「わかりました。(心配)」

「佐々木さん、、ちゃんと休んで寝てくださいね?(寝てね)」


 なぜか体の心配をされる私。え、なにかにじみ出てた?どっちかっていうと貴方のおかげで私は人生前より楽しいですけど?ただ今日はスムージーが飲みたくないってのはあるけど。


 そうすれ違いまくっていると、夕は佐々木がカウンターに無造作に置いている手の上にそっと自分の手を重ねた。


「ね?」と体をかがめて、顔を近づけて私の顔をのぞき込む夕ちゃん。


 いつもなら、「ああっ!(歓喜)」とか叫んじゃうんだけど、あまりのことに声が出なかった。目の前にある夕ちゃんの顔に、生まれたてで最初に見た人をママだと認識する鳥のように私は、、夕ちゃんのことを、、ママだと、、いやちがう。ちがう!


 釘付けになったってことね。

 うーわ。まつげなが。色しろ。顔ちっさ。ほっぺやわからそ。すき。すきぃ!(絶好調)


「あ、ありがとう。夕ちゃんって優しいね。」


「佐々木さんも優しいですよ?(だからなんか憑いちゃうんじゃ?)」



 今日はフラれなかったけど、大いにすれ違った。  


  


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