第12話 ゲームと寿司ざんまい
今後、伏見については警戒した方がいいな。
そういう意味でも、改めて綾花に注意を促した。
「綾花、その伏見は今朝から付きまとってきている男のことだよ」
「え……あの人のこと!?」
驚く綾花は、若干――いや、かなり引いていた。
「アイツ、俺の目の前に何度か現れたから、今思えば目の敵にしていたんだろうな」
「そうだったんだ。気をつけるね」
「危険を感じたら、すぐに俺を頼ってくれ」
「うん、お兄ちゃんの側を離れないよっ」
そう言いながらも、綾花は俺に密着してきた。
そ、そんな身を委ねられると心臓が……!
こんなに幸せを貰っているんだ。
俺も綾花を幸せにしてやらないと。
そう思いながらも、まったりとした時間を過ごした。
気づけば空は暗闇に染まり、夜景が広がっていた。……いかん、綾花とソファでべったりしているだけで時間があっと言う間に過ぎ去った。
「そ、そろそろお腹空いたな」
「そうだった。ごめん! 今から作ると遅くなっちゃうから、ウーハーイーツで注文しよっか」
ウーハーイーツだと……!?
コンビニ、飲食店、ドラッグストアなど多くの店舗に対応し、注文した品を配達してくれるフードデリバリーのことか。俺には無縁と思っていた存在だったが、綾花は違うらしい。さすが金持ちは違う。
「いいのか。高いんじゃ」
「お金のことは気にしない。全部、わたしが払ってあげるからね」
任せなさいとドヤ顔する綾花。いつか別の形で恩返ししないとなぁ。
「いつもありがとう」
「いいのいいの。じゃあ注文しちゃうね。なにがいい?」
料理メニューを選択していく。
中華料理や牛丼、ピザや寿司など好きなものを選べるようだ。凄いな、これを配達してくれるとか、便利すぎ。
「それじゃあ……寿司とか」
「いいよ~。
寿司狼と言えば、大手チェーン店だ。
種類も豊富。なにより美味い。
綾花は器用にメニューを選択。俺も選ばせてもらい――注文が完了した。
三十分後には届くようなのでそれまで待つことに。
「到着するまでゲームする?」
「そうしよっ。もちろん、ダンジョン&マスターズで」
「俺がまた無双しちゃうぜ」
「今度は負けないもん」
「がんばれ」
寿司が届くまでダンジョン&マスターズで遊んだ。今度も俺が圧倒的な力で領土拡大。またも一位を独走した。
そうして遊んでいるとチャイムが鳴った。
「届いたみたい」
「俺が取ってくる」
「ありがと」
玄関に向かい、優し気なお兄さんから対面で寿司を受け取った。
リビングへ向かいテーブルに並べていく。
まぐろ、かつお、はまち、さば、えび天、いか、いか天、たまご、あなご、サーモンと焼きサーモン、中とろ、サーモンチーズ、うなぎ、軍艦まぐろ、カニ風サラダとコーン……デザートはチョコパフェっと。
こうして並べると豪華に思える。
綾花は冷蔵庫から冷たいお茶を出してくれた。
「さっそく食べるか」
「食べよ、食べよっ。はい、お兄ちゃん、お箸」
「助かる」
バキっと割箸を割り、さっそく、中とろを摘まむ。
口の中へ放り込むと……当然のごとく美味いッ。とろとろに溶けて脳までとろけそうだ。中トロうめぇ~。
「お兄ちゃん、幸せそう」
「中とろは最高だな。綾花も、ほら」
「うん、いただきま~す」
上品な仕草で中とろを頬張る綾花。頬をほんのり赤くして笑みを浮かべた。
「どうだ?」
「生きてて良かったぁ……」
綾花は大袈裟に涙を流す。
けど、その気持ち凄くよく分かる。
寿司って人を幸せにする食べ物だよ。
それから俺も綾花も勢いを落とすことなく、次々に寿司を味わった。気づけばもうほとんど無くなってしまった。
美味い、美味すぎるッ!
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